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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした  作者: 灯台


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茶会の話~胃痛なる者①~



 アルクレシア帝国ハミルトン侯爵家嫡子であるエリス・ディア・ハミルトン。ハミルトン侯爵家の才女と呼ばれ、社交界などでも完璧な淑女として注目を集める彼女は、現在首都アレキサンドリアの道を歩いていた。

 普段の上品なドレスではなく、動きやすいパンツスタイルのズボンに上品なシャツとジャケット、頭には気キャスケットを被って、護衛として私服姿のメイドをひとりだけ連れて馬車ではなく徒歩で街を歩いていた。


「街歩きはお嬢様の趣味と言っていいかもしれませんね。貴族令嬢の趣味としてはどうかとも思いますが……」

「かの伝説のアルクレシア帝国初代皇帝陛下も、まるで村娘にしか見えない格好で市井に足を運んでいたという話がありますし、現皇帝のクリス陛下も視察など直接現地に足を運ぶ機会は多い。真に高潔な貴族だからこそ書面の情報だけではなく、実際に市井に足を運んで見識を広める必要があるのですよ」

「なるほど……それで、本音は?」

「……いいですか、ストレスというのは自覚してからでは遅いのです。自覚した時には既に様々な影響が出ているのですよ。胃痛とか、胃痛とか、胃の痛みとか胃の激痛とか……しかとコントロールするためには、気分転換が大切なのです」

「ふむ、つまり?」

「……私はとても疲れているんです。息抜きがしたいんですよ」


 エリスは元々自らの足で街に赴くことを好んでおり、思い返してみれば快人と初めに知り合ったのも建国記念祭を見に行った時である。

 侯爵令嬢としてではなく、ただのエリスという個人としての散策は彼女にとっては楽しい趣味の時間である。特に最近は、ハミルトン侯爵派閥が非常に慌ただしく息抜きがしたかったため、こうして街に足を運んでいた。

 もちろん必要な仕事などは完璧にこなした上で時間の余裕を作っており、それもまたエリスの優秀さの証明でもあった。


「まぁ、お嬢様の街歩きはいつものことですし……町娘として見るには、少々上品すぎる気もしますが……」

「別に町娘に扮しているわけでは無いですよ? 本気で演技したりとかであればともかく、服装だけ変えたところで振る舞いなどから私が貴族ないし、裕福な家庭の家の娘というのはバレるでしょうから、最初からお忍びで遊びに来た貴族令嬢ぐらいの気持ちで服は選んでいますよ。王家の色も別に隠してないですし……」

「王家の色、ディープブルーの髪のことですね」

「……まぁ、七代前の皇位継承で揉めた際に当時の皇帝陛下が言い出しただけで、初代皇帝陛下や二代目皇帝陛下などはこの髪色では無かったらしいですけどね」


 メイドの言葉に苦笑しつつ答えた後で、エリスは近くの出店でスティッツを二本購入して、ひとつをメイドに渡してから食べ始めて笑顔を浮かべる。


「手間暇かかった菓子も美味しいですが、こういったシンプルなものも新鮮でいいですね。歩きながら食するというのには、慣れるのに少々時間がかかりましたが……」

「お嬢様が楽しめているのであればなによりです。最近はかなり忙しくされていましたからね」

「今後も忙しいですけどね……あまりにもハミルトン侯爵派閥の躍進が凄すぎるんですよ。どうにも降って湧いた恩恵という印象が強すぎるのが問題ですね。もちろんしっかり情報を収集している高位貴族などは、我々がどうこうというよりは、カイト様の影響力が凄まじいと理解しているでしょう。ですが、地方の下級貴族などは特にリッチ男爵家を羨むでしょうね。派閥の端に引っかかっていただけで夢くじ……宝くじでしたっけ? ともかく単なる運で大儲けしたかのように見えるでしょう。当事者たちの大変さなんてのは伝わりにくいものですからね」

「ハミルトン侯爵家派閥に鞍替えすれば、自分たちも……と考えても不思議では無いですね」

「下級貴族にしてみれば、派閥なんて己たちの利になるならどこでもいいので変えられるなら変えてしまいたいでしょうが、高位貴族たちは面白くないでしょうし派閥間のパワーバランスが崩れると、色々なところが乱れますからね。シンフォニア王国のアルベルト公爵家派閥のように、他が追いすがるのを諦めるほど圧倒的な一強状態であれば話は変わるのでしょうが……うちはそこまでではありませんからね」


 現在ハミルトン侯爵家派閥では、ハミルトン侯爵家、シャロン伯爵家、リッチ男爵家が凄まじい勢いで利益や有益な繋がりを得ており、貴族たちの注目を集めすぎている。

 もちろん、ハミルトン侯爵やエリスも上手く対処しているし、皇帝であるクリスも協力して連携しているため、悪い方向に影響は出ないようにコントロールはできている……ただ、非常に忙しくて疲れるだけで、恩恵は本当にすさまじいのが頭と胃の痛いところである。


「まぁ、そういう胃の痛い話はいまは忘れて、しっかり気分転換を……」


 エリスがそんな風に呟いて視線を道の先に向けると、先の角を曲がって来た相手と不意に目が合い硬直した。


「……あれ? エリスさん?」

「……こ、ここ、これは奇遇ですね……カイト様」


 そう、偶然目の前に現れたのは快人であり、エリスはなんとか笑顔で言葉を返しつつ、心の中で悲鳴を上げた。




シリアス先輩「……①って付いた……人の心とか、無いんか?」




~おまけ・エリスの専属メイド~

護衛を兼ねてよくエリスに同行しているメイドであり、元は暗部に所属していた凄腕の諜報員であり、メイドとしての能力も優秀でメイド力は96000をほこり、次期スーパーメイド候補ともいえる実力者ではあるが、メイドオリンピア等に参加したことはない。


これはイルネスのようにメイド界に興味がないというわけではなく、彼女が目指す理想のメイドが「影のようにさりげなく完璧なサポートを行う存在」であるため、注目を集めるメイドオリンピアなどには参加していない(観客として見には行っている)

エリスが快人と話している際などもスッと距離を取って待機していたりするのも、本人の思い描く理想のメイド像に従った結果である。


目標としているスタイルは、いわゆる快人の護衛であるアリスのようなポジションであり、アリスが陰ながらに快人をサポートしたりしているのを見て、「これこそ目指すべき理想の姿」と内心で感動していたりする。


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― 新着の感想 ―
わかる範囲で8番目のメイド力の持ち主か・・ またメイドオリンピアみたいなぁ
タイトルがどストレートw
油断したらいけない。胃痛はすぐ隣にいる・・・・
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