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閑話・六王~六王祭準備中~


 風の月17日目。魔界の中心にある禁忌の地では、最近回数が多くなった六王同士の会議が行われていた。

 会議の議題は以前開催する事が決定した六王祭の細かな打ち合わせについて、そもそも初めての祭りであり、基礎的な部分からすり合わせを行っていく必要がある。

 尤も、例によって会議に参加しているのは5体だけで、戦王メギドはいつも通り「クロムエイナの決定に従う」として酒を飲んでいた。


「……っと、言う訳でボク達それぞれがプロデュースするお祭りが合計で6日、最後に全員纏めての大宴会みたいな感じで7日目を用意して、合計7日間のお祭りにしようと思うんだ」

「成程、私は異論ないですね……ただ、この議題が出た時から心配に思ってた事があるんすけど……場所はどうするんすか? 私達はともかく、マグナウェルさんも参加するって事は、かなり開けた場所じゃないと駄目でしょう?」

『ふむ、確かにのぅ……ワシの配下共も皆それなりに大きな体躯じゃし』

「……ここじゃ……駄目?」

『難しいでしょう。この場所は魔界の民にとって禁忌の地として恐れられていますし、ここは私達の戦闘に使われる場所。残留魔力が濃過ぎて、魔力に敏感な種が恐れてしまいます』


 現在六王達が話し合っているのは、六王祭を開催する場所について。

 マグナウェルも参加する以上並大抵の広さの場所では無理であり、そして開催目標としている光の月の末まであまり時間もない。

 できれば、即座に祭りが行える条件であり、転送ゲートから近く、そしてマグナウェルも含んだ大型竜種が参加することが可能な広さの場所……流石に魔界に詳しい六王達でも、そんな条件を満たす場所はすぐには思い浮かばなかった。


 しかし、シャルティア、マグナウェル、アイシス、リリウッドが困った表情で話し合っていると、今回の件の発起人でもあるクロムエイナが、自信に満ちた表情で口を開く。


「場所に関しては大丈夫。ボクが手を打っておいたから……」

「……クロムエイナが?」

「うん。まぁ、その場所を用意する為の条件として『7日目』を追加したんだけどね」

『そういえば、当初は6日間と言っていましたね……』


 アイシス達が考えても思い浮かばなかった場所に関して、クロムエイナにはアテがあるらしく、その場所を確保するための条件として本来6日の予定だった六王祭を7日に変更したらしい。


「まぁ、説明するより見てもらった方が早いね。移動しよう」


 そう言ってクロムエイナはマグナウェルを包み込むほど巨大な転移魔法陣を浮かべ、六王達を目的の場所へ転移させた。










「……クロさん……一つ聞いて良いっすか?」

「うん? なに?」

「……なんすかここ? こんな滅茶苦茶広くて景観もよく、しかもゲートまである『島』なんて魔界にありましたっけ!?」

『むぅ、確かにここなら全ての条件を満たしておるが……ワシにもここが何処か分からん』


 クロムエイナの転移魔法で辿り着いた場所は、非常に大きな島であり、一面に障害物などもなく草原が広がっており、しかも何故か他の六王達が見た事が無いゲートまで複数存在していた。

 ハッキリ言って完璧の場所ではあるが、これ程広く立地条件も良い筈なのに手付かずの島が存在している事が信じられなかった。


「ここは、魔界東部の端からさらに東に来た所にある島だよ」

『……私の記憶が確かであれば、そこは海で、このような島は無かったと思いますが……』

「うん『昨日までは無かった』よ」

「……どういう……こと?」

「『スポンサー』が付いたから」

「……おおっと、気のせいでしょうか? 私今、凄く嫌な予感しましたよ。具体的にはこんな事に関わる筈の無い、どこかのトップが関わってるような……」


 クロムエイナの言葉……昨日まで存在しなかった島が、今日になって現れ、それが六王達にとって最高の条件の場所で、いつの間にかゲートまで複数建てられている。

 そして、スポンサーという一言……六王達には、そんな常識を無視したふざけた事が可能な存在に心当たりがあった。


『……スポンサーって、もしかして……』

「うん……『シロ』だね!」

「……なにやってんすか……神界のトップ」


 予想通り、この島を一夜にして造り出したのは創造神シャローヴァナルらしく、クロムエイナとメギドを除いた六王は唖然とした表情を浮かべる。

 確かにシャローヴァナルであれば島を作りだすくらい造作もない。しかし本来六王祭……魔界の行事に手を貸すような性格では無い筈だが……


『しかし、よく、創造神が協力してくれたのぅ。この手の事には一切関わらんと思っておったが……』

「あ、うん……7日開催して、7日目を『カイトくんと一緒に回る』事を条件に手伝ってくれる事になったよ」

「……流石……カイト……凄い」

『いえ、アイシス……貴方がカイトさんの事を好きなのは知っていますが、納得するのが早すぎます』


 実際に快人がなにかをした訳ではないのだが、既にアイシスの頭の中では『快人のお陰でシャローヴァナルが協力してくれた』というある意味間違ってはいない方程式が組み上がっており、快人の事を思い出しているのか幸せそうに微笑みながら頷いていた。


「まぁ、そういう訳で、六王祭に関して困った事があればシロが手伝ってくれるから!」

「……もうそれ、シャローヴァナル様だけで良いのでは?」

「あくまで困った時だけね。基本的にはボク達で」

「……了解です」


 クロムエイナの説明を受け、シャルティアも驚きは隠せないままではあったが納得し、メギドを除いた六王は再び会議を始める。


「それで『招待状』なんだけど……皆どのぐらい送る予定か決めた?」

「……カイトに……送る」

『ある程度は……』

『ワシもじゃ』

「私もっすね……メギドさんは?」

「あ゛? あぁ、バッカスに任せた」

「……正しい判断っすね」


 六王祭の第一回目は、初めての開催という事もあり六王による招待制で行う事が決定した。

 それぞれ送る予定の相手はある程度決め終えたらしく、そういった細かい事を考えるのが苦手なメギドは配下に一任し、ちゃくちゃくと準備は整っている様子だった。


「じゃあ、予定通り光の月1日目に届くように送るとして……作るのはシャルティアに任せちゃって大丈夫?」

「ええ、問題無いっすよ」

「よろしく、それで、リリウッドは施設とかの建設をお願いね」

『お任せください』

「マグナウェルは、交通手段の整備……ゲートまで遠い地域に住む招待客を送る準備をしておいて」

『うむ、心得た』

「メギドには開催期間中の警備員の選定を任せるから、強くて真面目な子を選んでおいて」

「おう!」


 順々に指示を出していくクロムエイナだったが、最後に残った六王……アイシスを見て少々困った表情を浮かべる。

 作る事より壊す事が得意であり、死の魔力がある為交渉等も無理、かと言ってなにもしてもらわないと落ち込んでしまう。

 しばらく考えた後、クロムエイナはチラリとリリウッドを見た後、申し訳なさそうな表情で告げる。


「アイシスは……えと、アイシスは……『リリウッドを手伝ってあげて』」

『ちょっ、クロムエイナ!?』

「……うん……分かった……手伝う」

『……』


 クロムエイナの言わんとする事を察したリリウッドは絶望的な表情を浮かべたが、小さく拳を握ってやる気になっているアイシスになにも言う事は出来ず、諦めたような顔で項垂れた。

 史上初、六王全員によって開催される祭……開催日のまで、後36日……





久しぶりの閑話、六王祭の準備は着々と進んでいます。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういやメギドもあの描写があったような…
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