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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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男らしいところを見せられたかな?

本日【七話目】の更新です。読まれる際はご注意を……

私頑張ったよ……感想返信は明日にします。
 初日のハプニングから一夜明け、風の月10日目。
 俺の作った簡単な朝食を食べ終えた後、俺とリリアさんはある目的でコテージから程近い湖にやってきた。

「ここら辺が良いかもしれませんね」
「……はい。私、釣りをするのは初めてです」
「俺も、子供の頃に数回しかやった事はないですね」

 そう、俺とリリアさんが湖にやってきたのは釣りをする為……実はこのコテージには釣り竿が常備してあり、餌だけ観光街で買えば、誰でも釣りが楽しめるサービスが用意されていた。
 折角の機会だし、リリアさんとの思い出作りも兼ねて二人でのんびり釣りをしようという事になった。

「あれ? 以前ルナマリアさんと来た時にはやらなかったんですか?」
「……ええ、ルナが強く拒否しまして……私はやりたかったんですが……」

 はて? なんでルナマリアさんは釣りを拒否したんだろう? 水が苦手……ってわけでもないよな?
 ふむ、待てよ……釣り……断固拒否……餌……そういえば、観光街で売っていた餌は、イメージしていたミミズとかそういうのではなく、小さい虫みたいな餌で……

「あの、リリアさん……もしかして、ルナマリアさんって」
「ええ、『虫が凄く苦手』です」
「……そうなんですか、なんだか、意外ですね」
「『虫などという下品で愚かな存在はこの世から死滅すればいい』って言っていました」
「そんなに!?」

 へぇ、しかし、あのルナマリアさんが虫嫌いとはねぇ……大変有益な情報を手に入れた気がする。
 今度何かあった時は、この情報を有効活用させてもらう事にしよう……

「あっ、ちなみにリリアさんは平気なんですか?」
「ええ、私は全く問題なしです。ジークも森育ちなので平気ですね」
「ふむ……ちなみに、リリアさんにも何か苦手な物とかあったりします? あっ、無理には聞きませんが……」

 単の興味本位で尋ねた質問であり、答えたくないというなら無理に聞かないつもりだったが、リリアさんはモジモジと恥ずかしそうに体を動かしながら、小さな言葉で返事をしてくれた。

「……すと……です」
「え?」
「……ゴーストとかアンデット族……人間と変わらない姿のは大丈夫なんですか……こ、怖いのは……」
「……」

 え? なに? 怖いものが苦手? ……なんでこの人こんなに可愛いの? 天使? 天使なの?
 眩しさすら感じるリリアさんの可愛いさに圧倒され、数秒言葉を失った。










 お互い慣れていない為か、餌をつけるのに少々戸惑いながらも準備は完了し、隣同士に並んで釣り糸を垂らす。

「……リリアさん、なんか、いいですね。こういうの」
「はい。のんびりしてて……心休まります」
「確かに、お互い最近慌ただしかったですしね」
「ええ……あっ、そう言えばカイトさん、最近あまり寝て無かったんじゃないんですか?」

 のんびりと静かに時間が流れていく……そんな感覚を味わいながら、穏やかに会話をしていると……物凄く確信を突く話題を振られ、ビクッと体が跳ねる。
 さ、流石に眠そうにしていたのはばれてるか、いや、そもそもリリアさんにはオルゴールを渡した訳だし、なにやってたのかは既にばれてるだろうけど……

「……あまり、心配させないで下さいね。カイトさんが頑張ってくれたのは、凄く、本当に凄く嬉しいです……でも、心配ですからね」
「はい……ただ、それに関しては俺の方も……」
「……え?」
「リリアさんも、いつもいつも、遅くまで仕事しすぎじゃないですか?」
「うっ、そ、そうきましたか……」

 確かに今回は俺も無茶をしたと思うし、クロにも叱られてしまった。
 ただ無茶に関してはリリアさんも人の事は言えないと思う、だっていつもリリアさんは誰よりも遅く寝ているというか……少なくとも俺が知る限り、夜に執務室の前を通るといつも灯りが付いていた。
 その事を指摘すると、リリアさんは痛い所を突かれたと言いたげに苦笑する。

「家主であるリリアさんが忙しいのは分かりますし、俺になにが言える訳でもないですが……やっぱり心配ですよ」
「うっ、はい……気をつけます」
「はい。そして、俺も気をつけます」
「……ふふふ」
「あはは」

 なんだろうこれは、どっちもどっち……似た者同士なのかもしれないが、互いに無理するなって心配しあっている状況がなんだかおかしくて、思わずリリアさんと一緒になって笑う。
 ああ、本当に、なんだろうこれは……別に特別な会話じゃない筈なのに、凄く楽しくて新鮮で……やっぱり、なんか、こういうのって良いなぁ。









 しばらくそのまま、のんびりと釣りを楽しんでいたなんだけど……困った事態が発生した。やはりたびにトラブルはつきもののようだ……

「……あっ、また」
「……うぅ」

 俺が手に持つ竿が揺れ、また魚を釣り上げる……なんでこうなったんだろう?

 釣りを始めて数時間、現在の俺とリリアさんの釣果に明白な差が出来てしまっていた。
 俺はもう用意した水桶に魚が入り切らなくなってしまい、現在はつったらそのままリリースしているような状況。
 かたやリリアさんの水桶は、どこまでも澄んだ水が入っているだけ……どうしてこうなった。

「な、なんで、私は一匹も……」
「い、いや、こういうのは運だと思いますし……」
「さ、魚まで引き寄せるなんて……やっぱり、カイトさんは凄いんですね」
「いや、変な感動するのは止めてください」

 どうも今日の俺はやたらついているみたいで、本当に困る程に魚が釣れる。もしかして漁師になったら大成するんじゃないかと、そんな誤解まで抱いてしまうレベルだ。
 心配だったのは、俺が釣れているのに全く釣れていないリリアさんだが……どうやら反応を見る限り、リリアさんはリリアさんで、楽しんでくれているみたいだ。

 そんな風に考えながら、再び餌をつけて釣り糸を垂らそうとした時、ピクっとリリアさんの竿が動いた。

「え? あっ!? き、きました! え? え? これ、どうすれば……」
「だ、大丈夫です! 落ち着いて……ここの魚は釣りやすいみたいですから、タイミングを見て『思いっきり』引き上げてください」
「わ、分かりました……思いっきり、ですね……」

 あれ? なんだろう今、背中に悪寒が走ったような……あ、駄目だこれ、ヤバいやつだ。
 そう判断した瞬間、リリアさんは竿の動きが目で追えない程のスピードで引き……瞬間湖の水が、爆発でも起こったかのように吹き上がる。

「ッ!? リリアさん!!」
「え? きゃっ!」

 それは殆ど反射に近い行動だったが、俺は咄嗟にリリアさんを庇うように身をかぶせ、水飛沫を全身に受ける。
 夏とはいえ、水を被ると結構冷たいものだ……と、そんな事を考えていると、リリアさんの声が聞こえてくる。

「ッ!? か、カイトさん! ご、ごめんなさい、私……加減が分からなくて」
「いえ、今のは俺の言い方も悪かったです……水は大丈夫でしたか?」
「え、ええ、カイトさんが守ってくれたので……少ししかかかってません」
「それは良かった」

 なんとかリリアさんを水飛沫から守る事が出来たみたいで、ホッと息を吐く。
 これでリリアさんが濡れてしまったっりしたら……きっと白いワンピース風のリリアさんの服は、思いっきり透けてしまい、リリアさんは凄く恥ずかしい思いをしただろう……良かった。いや、別に、ちょっと残念だったなぁとか思ってはいない。

 濡れた体をゆっくり起こし、リリアさんにかからないように少し離れてから髪の水をはらう。

「じゃあ、ちょっと、俺は着替えてきますので……」
「あ、はい。ごめんなさい」
「いえいえ、気にしないで下さい……それじゃあ、すぐ戻ってきますので」
「はい……あっ、カイトさん!」
「……え?」

 着替える為に一度コテージに戻ろうとした俺をリリアさんが呼び止める。
 俺が振り返ると、リリアさんは赤い顔で俯きながら、もじもじと体を動かした後……静かにその言葉を告げる。

「……守ってくれて……ありがとうございます。カイトさん、凄く、素敵でした」
「あ、ありがとうございます」

 拝啓、母さん、父さん――旅行二日目はリリアさんと一緒にのんびり釣りを楽しんだよ。ちょっとしたハプニングはあったけど、なんとか、ほんの少しぐらいは――男らしいところを見せられたかな?



快人「なんだか今日は運が良いみたいだ」

今日は× いつも○
+注意+
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