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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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クリスマス番外編~貴方へのプレゼント~

クリスマス番外編、6話目。ラストです。

 天の月24日目。今日はクリスマス……日本のクリスマスはどちらかと言えばイブの方が賑やかなイメージがあるが、この世界のクリスマスは25日が本番であり、この日は世界中の街が明日への準備で華やかに彩られる。
 そしてそれはここ、森林都市・ユグフレシスも例外ではない。

 リリウッドさんが治めるこの土地には、大小様々の木が……世界樹を中心として多く存在しており、クリスマスにはその沢山の木々が美しく飾り付けられる。
 このユグフレシスに住む人達にとって、世界樹とリリウッドさんは信仰の対象であり、この日も聖樹に感謝をという名目で、都市をあげての大規模な祭りが開催される訳だ。

 活気あふれる街並みを眺めつつ、手に持っていた飾りを近くの枝に付けていると、穏やかな声が聞こえてくる。

『……申し訳ありません。カイトさん、手伝わせてしまって……』
「いえいえ、このぐらいお安いご用ですよ。けど、木を飾りつけるって、木の精霊であるリリウッドさん的にはどう思うんですか?」
『こうした機会でもなければ、木々が美しく飾られるという事もありませんし、こういった趣向も良いものだと思いますよ』
「成程」

 言ってみれば一種のお洒落みたいなもので、クリスマスの日にだけ着飾る感じかな……木だけに……駄洒落は止めておこう、考えてて情けなくなってきた。
 現在俺は今晩と明日のクリスマスの為の準備を行っている。実は少しリリウッドさんに用事があってここを訪れたんだけど、リリウッドさんが色々忙しくしているみたいだったので声をかけ、小さな事ではあるが手伝いをしている。

『少し羨ましくもありますね。ほら、私……世界樹は、飾り付け出来ませんし……』
「ああ、確かにそれは難しそうですよね」

 流石に世界樹はあまりに大きすぎて、とても飾り付けなど出来ない……なんせ四車線ぐらい広い枝とかもあるし……
 リリウッドさんの服装はいつも通り民族衣装風……ポンチョとかそれっぽい感じの服だけど、俺はこの服はリリウッドさんらしくて好きだ。

「リリウッドさんは、そのままでも十分すぎるほど綺麗ですよ」
『……あまり嬉しい事を言わないで下さい。恥ずかしくなってしまうじゃないですか……』
「あはは、でも、こうしてリリウッドさんと過ごしてると、俺は楽しいですよ」
『……もぅ、貴方は本当に変わった方ですね……貴方なら今日も明日も、引く手数多でしょう……なのに、私とクリスマスを過ごしたい等と……』

 リリウッドさんが微かに頬を染めながら顔を動かし、それに合わせて新緑の葉のような……というか、葉っぱそのものが折り重なって出来ている髪が揺れる。
 リリウッドさんは木の精霊だからなのかもしれないが、一緒に居るとなんだかリラックスできる気がする。
 森林浴とは少し違うと思うし、リリウッドさん自身の優しい性格もあってこそだと思うけど……一緒に居て落ち着く。

「いいじゃないですか、俺が好きでそうしてるんですから」
『……あまり、お相手出来ませんよ?』
「構いません。リリウッドさんはこの都市での祭りの主役なんですから、それは十分承知してますよ。こうやってリリウッドさんが折りを見て会いに来てくれるだけで、十分楽しいですよ」
『……本当に……困った方ですね……』

 そんな言葉を告げながらも、リリウッドさんの声はとても優しく、こちらに向けられる翡翠色の瞳は、とても暖かかった。










 飾り付けの手伝いも終わり、太陽が沈むと夜の闇を明るい光が照らし、パーティーが始まった。
 今日はリリウッドさんの所に泊めてもらう予定の俺は、窓から明るい街の光を見ながら紅茶を口に運んでいた。
 祭りに参加するという手もあったが……俺が参加しては、ただでさえ忙しいリリウッドさんに色々気を使わせてしまうと思うし、今回はここでのんびりリリウッドさんが帰ってくるのを待つ事にする。

 リリウッドさんはこの祭りの主役であり、毎年この時期は非常に忙しい為、何度も「今日は帰れないと思うので先に寝ていてください」とか言っていた覚えがある。
 現在の時刻は夜9時……戻ってくるとしたら、三時間ぐらいかな? 偶にはこうやってのんびりと誰かを待つのも悪くない気がすると、そう考えながら、暇つぶしにマジックボックスから本を取り出して読み始める。

 そしてしばらく経ち、日付が変わるか変わらないかぐらいの時間になると、祭りは一段落したみたいでリリウッドさんが戻ってきた。
 リリウッドさんは椅子に座って本を読んでいる俺を見て、呆れたように溜息を吐く。

『……はぁ、もしかしたらと思っていましたが……なんで起きてるんですかね。貴方は……』
「おかえりなさい、リリウッドさん。お疲れ様です」
『……はい。ただ今戻りました。お待たせしてしまって申し訳ありません』
「いえいえ、用事があって待ってただけですから……」
『用事……ですか?』

 俺の言葉を聞いて首を傾げるリリウッドさんに、俺はマジックボックスから取り出した花を模したコサージュを手渡す。

「リリウッドさん、メリークリスマス」
『……え?』
「なににするか迷いましたけど、やっぱりリリウッドさんには花が似合うと思ってこれにしました」
『え? あ、えっと……ありがとう、ございます……』

 クリスマスプレゼントのコサージュを受け取ったリリウッドさんは、驚いたような表情でそれを見つめながら、お礼の言葉を返してくる。

『こ、これを渡す為に……待っていてくれたんですか?』
「はい」
『……本当に……貴方には……敵いませんね』

 どこか諦めたような、それでいてとても幸せそうな笑顔を浮かべたリリウッドさんは、木の幹に埋まっている姿から人間と同じ姿に変わり、俺の首に手を回して抱きしめてくれた。
 大変大きなリリウッドさんの胸は、俺の頭をクッションのように受け止めてくれ、柔らかく幸せな感触と優しい木の香りを感じた。

『……困りました。まさか今日、貴方が会いに来てくれるとは思っていなかったので……申し訳ありません。私の方はなにも用意できていないんです』
「いえ、気にしないで下さい。俺が、リリウッドさんにプレゼントしたかっただけですから……」
『……はい。ですが、その……代わりという訳ではありませんが……』
「……え?」

 そこで少し言い淀むような言葉が聞こえ、先程までより強く抱きしめられた。
 リリウッドさんはそのまま少し俺を抱きしめたままで沈黙した後、ゆっくりと恥ずかしそうな声で告げる。

『……明日は、少し時間に余裕を作りました……それで、その……』
「はい?」
『カイトさんへのプレゼントは……『私』……という事では……駄目でしょうか?』
「え、そ、それって……」
『……これ以上、言わせないで下さい』
「~~!? は、はい」

 俺だって、流石にその言葉の意味が分からない程馬鹿では無い。
 甘く蕩けるような声に誘われ、そっとリリウッドさんを抱き返す。

『ただ、このプレゼントの場合……少し、問題がありまして』
「問題、ですか?」
『はい。これでは、私も幸せなので……あまりお返しにはなりませんね』
「……ふふ、いや、そんな事はないです。俺にとっては、本当にこれ以上ないほど嬉しいプレゼントですよ」
『……そうですか……でもせめて、今日だけは……私にリードさせて下さいね』
「はい」

 愛しい相手と過ごすクリスマス……それは本当に暖かいもので……少なくとも今夜は、リリウッドさんとずっと一緒に居られると思うと、自然と顔が笑顔になり胸いっぱいに幸せが広がってきた。



おっと、残念、ここまでです。

シリアス先輩「おい、こら、糖度詐欺やめろ作者……終始いちゃいちゃじゃねぇか……」
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