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クリスマス番外編~二人のクリスマス大作戦~

クリスマス番外編、五話目。

 天の月24日目の夜。クリスマスイブの夜に、俺は魔界のある場所にやってきていた。

 俺の前には現在、普段の黒色の服では無く、赤と白のフワフワしたコートと、サンタ帽を被ったクロが居て、大変可愛らしい。

 赤いズボンも非常にポイントが高く、個人的にかなり好みの格好だ。


 あくまで個人的な意見ではあるが、サンタクロースのコスプレをするならスカートよりズボンの方が好みと言える。

 その点クロの格好は、上がちょっと大きめのコートで、下が赤のハーフパンツ……コートにズボンが隠れ、微かに覗く綺麗な足が彼女の活発さを表しているようで、見ているだけで幸せになれる。


 まぁそれはそれとして、なんで俺はこんな所に呼び出されているんだろう?


「……それじゃあカイトくん。これからクリスマスシークレットミッションを開始するよ!」

「……うん?」


 おっと、わりと久々だけど、クロが訳の分からない事言い始めたぞ……クリスマスシークレットミッション? 長いし言いにくいけど、何かをするつもりというのは分かった。


「ふふふ、今回のミッションはね……」

「あっ、その前にクロ……その格好凄く似合ってて、可愛いよ」

「え? そう? えへへ、ありがとう」


 もうクロに振り回される事はほぼ確定したので、それについては速攻で諦める。そして何が起こるか分からないので、今の内にちゃんと褒めておこうと思って感想を告げた。

 クロは俺の言葉を聞いて、嬉しそうにはにかんで笑った後、気を取り直すように咳払いをする。


「……こほん。それじゃあ、今回のミッションだけど……内容は簡単。一緒にボクの家に入って、誰にも気づかれないように食堂へ移動……対象を確保して、誰にも気付かれないように戻ってくる事だよ!」

「……なんでそんな面倒な事を……」

「ふふふ、知ってるよ。クリスマス大作戦ってこっそり忍び込む遊びがあるんだよね! それをやろう!!」

「……」


 予想していた事ではあるが、またどこか変な所から変な知識を仕入れてきたらしい。

 クリスマス大作戦って……なんかの映画かな? 忍び込むって、それサンタクロースの話とかじゃなくて? 

 まぁ、この程度はいつもの事だし、誤解は後で解く事にして、今はクロの遊びに付き合う事にしよう。










 まぁ、そもそも自分の家に忍び込むという時点でおかしい気はするが、クロにとっては関係ないみたいで、ノリノリで広い廊下の壁際を歩く。楽しそうでなによりである。


「……でも、こんなのすぐにバレるんじゃない?」

「大丈夫、認識阻害と気配遮断、それに防音の魔法を使ってるから……かなり近付かれないと分からないよ」

「……でもこの通路……前から人がきたら隠れる場所が無いんじゃ……」

「……あっ」


 やはり思い付きが先行していたらしく、そういう一発ゲームオーバーに関しては考えていなかったみたいだ。

 まぁ、そもそもただの遊びなので、そこまで深く考える必要もないか……


「だ、大丈夫だよ。確かにこの辺は皆の部屋がある区画だけど……今日は皆クリスマスパーティーの準備してるし……」

「……」


 今確信した。これがフラグが建つというやつだ……コレ絶対誰か来る。

 そんな俺の予想を肯定するように静かな廊下に微かな足音と、誰かの声が聞こえてくる。


「あわわわ、どど、どうしよう!? 誰か来ちゃう!?」

「……予想通りというか、なんというか……って、クロ? 一体何を?」

「き、緊急事態だからね……ごめんね!」


 そう告げたクロは近くにあった扉……誰かの部屋のドアに手をかざす。

 するとカチャっという音とともに鍵が開き、クロは俺の手を引いてその部屋の中に飛び込む。


「……なぁ、クロ?」

「……なに? カイトくん?」

「この手のお約束としてさ、こういうのって……この部屋に人が来るパターンなんじゃないの?」

「……ま、まっさか~」


 そんな不安な予感はまたしても的中する事となり、足音は俺達の居る部屋の前で止まり、鍵穴に鍵を入れるような音が聞こえてくる。


「ッ!? カイトくん!」

「え? うわっ!?」


 その音を聞いたクロは瞬時に動きだし、素早い動きで俺を抱えて、近くにあったクローゼットの中に飛び込む……なんで次々状況を悪くしていくのか……コレ出るに出られなくなるパターンじゃないのか?

 そんな事を考えつつ、クロと一緒にクローゼットの隙間から部屋の様子をうかがうと、扉が開き……アハトとエヴァが入ってくる。どうやらここは二人の部屋らしい。

 クローゼットに入る前にかなり大きな声を出した筈だが、そこはしっかり防音の魔法が効いているのか、二人は俺達には気付いていないらしい。


「……しっかし、クロム様は一体どこに行っちまったんだろうな?」

「カイトの所じゃないのかい? クロム様がパーティーから『逃げ出す』なんて他に理由が思い付かないし」


 おっと、なんかまた妙な言葉が聞こえてきたぞ? なんでも、この城の当主がクリスマスのパーティーから逃げ出したらしい……


「……お~い。クロ?」

「……えへっ」

「いやいや、えへっじゃなくて……なにしてんのお前!?」

「だって、ボクはクリスマスはカイトくんと過ごすって決めてたし……それなのに、大規模なパーティー開くとか言ってさ……準備もいつの間にか進めちゃってるし……」


 ……なんで皆に気付かれないように忍び込むのかと思っていたら、そもそもこの冥王様はパーティーから脱走して来たらしい。

 しかし、それならそれで、なんで一度脱走した場所に戻ってきたりしたんだ?


「なぁ、クロ? 詳しく聞いてなかったけど、なにを取りに行こうとしてる訳?」

「……新作のベビーカステラ、持ってくるの忘れた……」

「……いや、それはもう、別にいいんじゃないかな?」

「えぇ、だって今日の為に作った『フライドチキン味』なんだよ?」

「うん、取りに行くのは止めよう」

「……え?」


 どう考えてもゲテモノ系……しかもクロの事だから無駄に拘って、中に本物のフライドチキンの肉とか入ってるんでしょ? うん、絶対喰わない。


 取り合えずこれからの方針としては、アハトとエヴァが居なくなった後で脱出すれば……


「んっ、もう、なんだいアハト、急に……」

「いや、ほら、最近忙しくて、ご無沙汰だったからな……

「「ッ!?!?」」


 おいこら、どこまでお約束が発生すれば気が済むんだ? もういい加減テンプレすぎるぞ……

 聞こえてきた艶かしい声を聞き、反射的にクローゼットの隙間から外を見ると……アハトとエヴァが互いを抱きしめ、キスをしている姿がバッチリ見えた。


「あわわ、どど、どうしよう!?」

「……これ、不味くない? 明らかにこの雰囲気、これ以上は……」

「か、カイトくん、見ちゃ駄目!」

「ッ!? ちょっ、クロ!? こんな狭い所で動いたら、うわっ!?」


 キスを交わしてムードを高めている感じのアハトとエヴァ……このまま見るのは不味いと思った瞬間、クロが慌てた様子で俺の目を押さえようと動く。

 しかしここは狭いクローゼットの中であり、先程までも結構体勢的にはきつかったんだが……そこでクロが動いてしまったので、まるでスルリと隙間に滑り込むような形で俺達の体が密着し……俺の手に柔らかな感触が触れた。


「ひゃぅっ!? かか、カイトくん!?」

「あっ、えっと、これはその……」


 ……現在俺の目の前には、サンタのコスプレをした可愛らしい彼女が居て、俺の手はその彼女の胸に触れている。

 薄暗くてハッキリとは見えないが、クロは頬を赤く染めていて、どうしようもないほど可愛らしい。

 ……これは、あれだ。据え膳というやつなんではなかろうか? い、いや、ほら、どうせアハト達が居なくなるまで出れない訳だし……


「ぁっん……か、かか、カイトくん……んっ……ふぁぅ……」

「……クロ」

「だ、駄目だよ……ぁっ……ぅっ……こ、こんな所じゃ……」

「ごめん、我慢出来ないかも……」

「えぇぇ!? あぅ……」


 胸に触れた手が微かに動くたび、クロは色っぽい声を出し、この状況も相まって頭が痺れるような熱に冒されていく。

 これは本当にヤバいかも……止まれなくなる。なんとか押さえて……


「……や、優しくして……ね?」

「ッ!?」


 なんでそこで追いうちしてくるのかな!? もう無理だ……コレ止まれな……


「アハトく~ん! エヴァさ~ん! どこですか~!! ちょっと手伝ってほしいですよ~!!」

「「「「!?!?」」」」


 っと丁度そのタイミングで、ラズさんの声が聞こえてきて、俺とクロは勿論、アハトとエヴァもビクッと体を動かす。

 どうやらパーティーの準備で手伝ってほしい事があるらしく、アハトとエヴァを呼びに来たらしい。


 アハトとエヴァは慌てた様子で身だしなみを整え、ラズさんに返事をしながら部屋を出て行き、そのタイミングで俺とクロも素早く部屋から脱出して城の外へ逃げる。










「あぅ、なんか凄い事になっちゃったよ……」

「元はと言えば、クロのせいな気もするけど……」

「う~ん、否定できないや」


 城からなんとか抜け出した俺とクロは、クリスマスムードに染まる街を歩きながら、互いに苦笑しつつ言葉を交わす。

 もう一度ベビーカステラを取りに城に戻るという気分でも無かったし、クロはパーティーに参加するより、俺と一緒に居たいらしいので、このまま二人で街を散策する事にする。


「……それじゃあ、デートでもしようか?」

「うん!」


 そう言って俺が差し出した手を嬉しそうに握り、クロは俺にピッタリと寄り添いながら歩く。

 いや、本当にクロと一緒に居ると慌ただしいというか、いつも色々新鮮で退屈しない。けど、これもまた凄く幸せで楽しい。


「……あっ、そうだ! カイトくん」

「うん?」


 クロと一緒に居る幸せを感じていると、ふとクロが何かを思い付いたように声を上げ、その後で少し頬を染めながら背伸びをして俺に耳打ちをしてくる。


「……その……さっきの続きは……デートの後で……ね」

「……あっ、うん」

「じゃ、じゃあ、行こう!!」

「え? ちょ、クロ、あんまり引っ張るなって……」


 照れ隠しをするように、俺の手を引きながら、太陽のように明るい笑顔を浮かべて歩く愛しい恋人。

 こうして共にクリスマスを過ごせる幸せを実感しながら、また同時に、これから先の未来に期待を感じながら、ゆっくりとクリスマスの街をクロと共に歩き続けた。







「……ところで、クロ。さっきの状況さ……転移魔法使えば簡単に抜け出せたんじゃない?」

「……あっ」







本編含めて初めて胸揉んだ……快人もちゃんと男の子だったんだ……だが爆ぜろ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 性の6時間が確定。しれっと初めて?
[一言] 続き…( ´・ω・`)
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