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もうすぐそこまで迫っている

 土の月21日目。現在俺は鏡の前で身支度をしていた。

 鏡に映る俺は、黒色をベースとした煌びやかな礼装に身を包んでおり、髪もばっちりセットしているので、パッと見では貴族とかに見える……かもしれない。

 この礼装は先日リリアさんに貰ったもので、今回向かう場に合わせて用意してくれたみたいだ。


 今日俺はシンフォニア王国の王宮で開催される第一王女であるアマリエさんの、誕生日パーティーに出席する事になっている。

 アマリエさんは第一位王位継承権を持つ存在であり、このパーティーはかなり格式の高いものらしく、俺も相応の格好をして出席しなければならない。


 何度か鏡の前で確認をしていると、ノックの音が聞こえ、迎えに来てくれたジークさんと一緒に表に用意してある馬車へ向かう事になった。

 そのまま並んで廊下を進んでいると、ジークさんが真剣な表情でこちらを見て話しかけてきた。


「……いよいよ、ですね」

「はい」


 ジークさんも今回のパーティーがなにを意味するかは当然知っている。いや、当事者なのだから知っていて当り前だ。

 今回のパーティーには、アマリエさんの誕生日を祝うという目的のほかにも大きな意味がある。


 リリアさん、ジークさん、ルナマリアさんの三人にとっては、過去の因縁に決着をつける日……今日、リリアさんはアリスが集めてくれた証拠を手に、かつて騎士団第二師団を罠に嵌めた貴族の罪を暴く。

 シナリオはアリスが組み立ててくれたみたいで、既にリリアさんをはじめ、ライズさんやアマリエさんにも伝えられているらしい。


 俺は詳細を知らない……正直俺は演技なんてものは上手くないので、下手に失言をしないようにと聞いていない。

 ただ、一つ残念なのは……今回のパーティーが非常に格式高いものである為、会場内に入れる存在はかなり絞られてしまうという事。


「……私とルナは、会場には入れません。カイトさん、リリの事……よろしくお願いします」

「はい……と言っても、特別な事は出来ませんが……」


 今回のパーティーに参加できるのは、シンフォニア王国内で爵位を持つ家の当主とその結婚相手、そして後継者となる第一子まで、後は他国の来賓と制限されていて、リリアさんは当主なので参加資格はあるが、本来は俺は参加できない。

 ライズさんが俺を勇者役である光永君の代理という名目で手配してくれたおかげで、俺も会場に入る事が出来るようになっていた。


 いや、まぁ、それを抜きにしても、クロとかが手配してくれたらいけるんだろうけど……あくまで、今回の主役はリリアさんなので、俺が悪目立ちする訳にもいかない。


「カイトさんが同行しているという事実だけで、リリの貴族としての発言力は強くなりますし、それだけでも十分すぎるほどの援護です」

「そうですか……まぁ、リリアさんの力になれるなら、出来る限り頑張ります」

「ええ、吉報を待っています」












 馬車で移動する事十数分……王城に辿り着いた俺の目に映ったのは、煌びやかな馬車がズラリと並ぶ圧巻の光景だった。

 多くの重鎮達が集まるという事は、それだけ警備も厳重になる訳で……城の門の周囲には多くの騎士が整列していた。


 門番に招待状を提示して城の中に入る。会場となる大広間に入れるのは招待状を持つ者のみだが、会場前までは一人につき3名までの護衛を同行させる事が出来る。

 アリスに関しては姿を現わせば騒ぎになるのでカウントしない事にして、俺はアニマとイータとシータに護衛としてついて来てもらった。


 三人共事前にジークさんやルナマリアさんから指導を受けており、並んで歩く俺とリリアさんから少し距離を取った後方をついて来ていた。


「やっぱり、場が場だけあって、前来た時とは雰囲気が違いますね」

「ええ、第一王女というのは、それだけこの国にとっても重要な存在なんですよ」

「……大丈夫ですかね? その折角の会場を使わせてもらって……」


 いつも着ているシンプルなものではなく、美しい装飾で高級感のあふれるドレスに身を包んだリリアさんに小声で話しかける。

 貴族の大多数が集まる場で、過去の罪を追及する……これは非常に効果的ではあり、上手くいけば世論もリリアさんの味方になってくれるだろう。

 ちなみにタイミングとしては、パーティーが始まる直前が最も有効という事で、そこで行う事になっている。


「大丈夫ですよ。あの子は私よりずっと強かです。まず、間違いなく、上手く己の地盤を固める方向に活用するでしょうね」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、次期国王最有力候補の呼び声は、伊達ではありませんからね」


 以前会った時のイメージでは、明るく上品な王女様って感じだったけど、あくまでアレは家族と接する時の姿で、公式の場ではまた違った振舞いらしい。流石王族というべきか……


 そうこうしていると会場の入り口に辿り着いて、一端ここで護衛の皆とは別れる形になる。


「では、ご主人様。自分達は会場の周辺に待機しておきます。何かあればすぐに駆けつけますので、ご安心を」

「うん。よろしく、アニマ」

「はっ!」

「イータとシータも、よろしくね」

「「はい!」」


 しっかりとした返事をしてくれる三人の声に後押しされながら、隣で同様にジークさんとルナマリアさんに激励されているリリアさんを一度見てから、一緒に会場の中に入った。


 会場の中は、それはもうアニメやゲームでしか見た事が無かったような、豪華な空間だった。

 大広間の中全体が輝いているのではないかと錯覚するほど、眩しく圧巻の光景。何処を見渡しても裕福そうな……いかにも貴族といった人達が目に映る。


 あ、やばい……なんか、今になって緊張してきた。俺が直接何かするという訳でもないのに、これだけの人達が集まっている場というのは、元ぼっちには中々ハードルが高い。

 そんな風に考えていると、服の裾が軽く摘まれるような感覚がして振り返ると、リリアさんが少し不安げな表情でこちらを見つめていた。


「……駄目ですね。私……社交界から遠のいていた事もあって、変に緊張してしまいます」

「たしかに、凄い光景ですよね……俺も変に緊張してきちゃいました」

「カイトさんでも、緊張するんですね?」

「ちょっと、リリアさん? 一体俺をなんだと思ってるんですか?」

「す、すみません!?」


 リリアさんの中で、俺は一体どんな鋼の精神を持つ存在にされているのやら……買い被りも良いところだと思うが、それだけ信頼されているって事でもあると思うと、少し……いや、かなり嬉しい。


 なんだかんだで、この世界に来てからずっとリリアさんにはお世話になってきた。

 この世界に来て初めに出会ったのが、リリアさんじゃなかったら……きっと、今の俺は無かったと思う。

 だからこそ、リリアさんには心から感謝しているし、力になりたいって思ってる。


「……リリアさん、俺に出来る事は少ないと思いますが……応援しています。頑張ってください」

「……カイトさん。ありがとうございます。その言葉が、本当に心強いです」


 俺の言葉を聞いたリリアさんは嬉しそうに微笑んだ後、強い光の籠った瞳で、会場の中を見渡し……ある一点を静かに見つめる。


 拝啓、母さん、父さん――アマリエさんの誕生日パーティーに参加する為に、王城へとやってきた。リリアさんにとっての悲願……かつて、リリアさん達を苦しめた相手との対決は……もうすぐそこまで迫っている。











 時を同じくして、シンフォニア王国にある神殿の裏手、神界へ繋がるゲートがある建物の中に光が満ちる。


「……さて、幻王の手紙によれば、そろそろか……」


 深く青い髪をなびかせ、左右で色の違う瞳で前を見つめながら、女神は悠然と歩を進め始める。

 幻王ノーフェイスの書いたシナリオ……その中で重要な役割を担う。リリアにとっての切り札とも言える存在。


「では、我も王城へ向かうとするか……」


 そう呟いた後、時を司る最高神……クロノアは、守るべき友の元へと向かった。





リリア編開始。


シリアス先輩「だ、騙されない……私は、こんな飴で、騙されない……どうせ、あれでしょ? あのパターンでしょ? いかにも~な感じで始めておいて、次回速攻解決するあれでしょ!?」


【YES】


シリアス先輩「ちくしょうめぇぇぇぇ!!」


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― 新着の感想 ―
[一言] いやぁ~コミック最新刊を読んでるとはやくこのシーンまで行ったら良いなぁ~なんて思ってしまいますねぇ~。
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