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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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リリアさんの完全勝利で幕を閉じた

 広い大広間の上座にある一段高くなった場所。そこに国王であるライズさんと、今回のパーティーの主役であるアマリエさんが登場する。
 それはまもなくパーティーが始まる事を示していて、それを肯定するように囁くような声が聞こえてくる。

「始まりますね~」
「……アリス? どこにいるんだ?」
「すぐ近くですよ。流石に騒ぎになるので姿は消してますけどね」

 聞こえてくるアリスの声……だが、姿は見えない。
 しかし、俺はシナリオの詳細を知らないからかもしれないが、今なんだかんだで結構不安を感じているので、アリスが近くに居てくれるというのは本当に安心する。

「まぁ、安心して下さい……『参列者の2割ほど』は私の配下です。不測の事態にも十分対応できますよ」
「……そっか、心強いよ」
「では、用があれば一言呼んで下さいなっと」

 そう言ってアリスの声は聞こえなくなる。恐らくパーティーが始まるので一旦黙ったのだろう。
 それにしても……この会場にいる人の2割が配下? 本当に改めて考えてもアリスってとんでもないよな。こんな国の中枢にも根を張ってるなんて……

 そして、幻王という存在が畏怖されている理由もよく分かる。たぶんアリス……幻王ノーフェイスは、この世界において絶対に敵に回しては行けない存在なんだと思う。
 それは六王として天地を揺るがす力を持っているから……ではなく、最も脅威となるのはその配下だろう。

 なぜなら、アリスに敵対するという事は……世界中に存在する配下を敵に回すのと同意。
 それはつまり、次の瞬間腹心だった部下、或いは最愛の家族が己の首を切り落とすかもしれないという恐怖に晒される訳だ。
 流石というかなんというか、やっぱり、アリスが一番恐ろしい六王かもしれない。

 っと、そんな事を考えていると壇上のライズさんが会場内を見渡し、ゆっくりと口を開く。

「皆、今日は我が娘、アマリエの誕生日を祝いに集まってくれた事、感謝する。こうして多くの者達の顔を見る事ができ、シンフォニア王国の結束の強さを改めて実感でき、余も嬉しい限りだ」

 威厳ある堂々とした口調に、一人称もプライベートで使う「私」ではなく「余」になっていて、改めてライズさんは王様なんだと実感した。
 そのままライズさんはしばし国について語った後、軽く微笑みを浮かべて言葉を締めくくる。

「……では、皆にとって今日という日が良き思い出になる事を願い、余の話は締めくくらせてもらう」

 そう言ってライズさんが一歩下がると、今度は主役であるアマリエさんが前に出る。
 アマリエさんはゆっくりと会場内に集まった貴族達を見渡した後、一度瞬きをしてから凛とした表情で口を開く。

「皆様、本日はお忙しい所、本当にありがとうございます。まだまだ私は20になったばかりの若輩ではありますが、国を想う気持ちは皆様にも劣らぬつもりです。いずれは国を担う者として。お集まりの皆様と手を取り合い、シンフォニア王国の発展に貢献できればと思っております」

 コレはまた堂々とした立派な挨拶……俺より年下だとはとても思えない。流石王族と言うべきか、壇上で語る姿が絵になっていてカッコいい。

 そしてアマリエさんもライズさんと同じく、しばし国について語った後、言葉を締めくくり、パーティーの開催を宣言しようとしたタイミングで、スッとリリアさんが手をあげる。

「なにか? アルベルト公爵?」
「……国王陛下、王女殿下……祝いの席での無礼、まずは謝罪いたします。この場を借りて申し上げたい事が、ありますので、発言の許可を頂きたく思います」
「それは、この場で語る必要がある内容と……そう考えてよろしいのですね?」
「はい」
「分かりました。アルベルト公爵……発言を許可します」

 手をあげた後、片膝をついて発言の許可を願うリリアさんに、アマリエさんは少し冷たい声で言葉を返した。
 二人は仲の良いが、この公式の場においては、あくまで第一王女と公爵という立場で会話する必要があるみたいで、互いに固い口調で言葉を交わす。
 そしてアマリエさんが発言を許可すると告げると、リリアさんは一度深く頭を下げてから立ち上がる。

「……国を担う多くの方々が集まるこの場で、私が明らかにしたいのは一点……この中に、愛しき我が国に弓を引く者達が居るという事です」

 静かに、それでいて力強いリリアさんの言葉を聞き、周囲が水を打ったかのように静まり返る。
 それも、その筈だろう……リリアさんは今、こう告げた。この中に国家に反逆している者が居ると……

「……穏やかでは無いな、アルベルト公爵。それが事実なら、誠に残念である……これだけの者の前で宣言したのだ。勘違いであった……では、通らぬぞ?」
「覚悟の上です。名を、申し上げても?」
「……申してみよ」

 アマリエさんと同様にライズさんも非常に重々しい口調で告げ、リリアさんはその言葉に真剣な表情で答えた後……二人の貴族の名を告げる。アリスが調べ上げた存在……辺境伯一人と子爵一人……
 その瞬間、静まり返っていた会場が急に騒がしくなる。それもその筈だろう、ここまで聞いていた情報では、その二人はかなりの力を持った貴族であり、交流をもっている者も多い筈だ。

 そしてその名を告げられた二人の内、より豪華な衣装を身に纏った男……恐らく辺境伯が口を開く。

「これはこれは、なんとも驚きですな……私は長くこの国の為に身を奉げ尽くしてきたつもりです。その私が、国家に反逆していると? 是非、聞いてみたいものですな……その根拠を」
「うむ……皆、静粛に。アルベルト公爵よ。この者達が一体何をしたのか、それを語ってみよ」
「……はい」

 現状、まだ辺境伯と子爵の表情には余裕がある。どちらもそうそう尻尾を掴ませないという自信があるのだろう。
 張り詰めるような空気が会場を支配する中、リリアさんは揺らぐことなく言葉を続ける。

「国王陛下、4年前に騎士団第二師団を襲った事故を覚えておいででしょうか?」
「うむ、情報の手違いにより、師団が壊滅の危機に瀕し、死者こそないものの多くの怪我人が出た痛ましい出来事、しかと記憶しておる……確か当時はそなたが師団長であったな?」
「はい。あの事故が原因で剣を置いたもの、騎士団を去った者も多くいました。恐れながら申し上げます。国王陛下……もし、あの事故が、仕組まれたものであったとしたら?」
「……なに?」

 その言葉と共に、再び周囲が騒がしくなり、ライズさんが「静まれ」と告げる。
 そして再び静寂が訪れたのを見計らって、リリアさんは口を開く。

「騎士団とは国を守り民を守る。国の剣であり盾でもあります……その騎士団に偽りの情報を流し、窮地に陥らせる事……それは許されざる大罪であると考えます」
「……で、あるな。そのような事を行う者が居たとすれば、それは国への反逆へ他ならまい」
「成程……つまり、アルベルト公爵はこう仰りたいわけですな。我等が、その大罪人であると……いやはや、これは恐ろしい。それで? もちろん、聡明なアルベルト公爵の事だ……証拠の一つも用意せず、そのような事を告げられている訳では無いのでしょう?」

 リリアさんとライズさんの会話を聞いて、辺境伯と子爵は大袈裟な動きで頭を押さえ、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべながら告げる。
 その様子は証拠などある筈もないとタカをくくっているみたいで、なんというか見ていて腹が立った。
 しかしその腹立たしい表情も、リリアさんが次の言葉を告げるまでだった。

「ええ、勿論ございます」
「……なに?」
「国王陛下、こちらをご確認ください。すり替えられた報告書、作成に使用された道具、書き損じ筆跡の残った用紙、彼等の数日間の行動報告……そして、実行に関わった人物も、当家にて確保しております」
「「なっ!?」」

 まさかこれ程の証拠が飛び出してくるとは思わなかったのだろう、辺境伯も子爵も先程までの余裕の表情が一変し、顔を青くして驚愕する。
 ライズさんはリリアさんより、その証拠の数々を受け取り、一つ一つに目を通した後で顔をあげる。

「……成程、確かにこれは十分な証拠になりえるであろう……両名、申し開きはあるか?」
「あっ……いや、それは……」
「こ、これは……その……」

 ライズさんに鋭く睨まれ、辺境伯と子爵は顔を真っ青にして滝のような汗を流す。
 こうなってしまえば、もはや彼等に取れる手段は二つだろう……一つは、潔く罪を認める事……もう一つは……断固として罪を認めず、言い逃れようとするか……

「そ、それは捏造です! わ、我等はそのような事はしておりません!!」
「その通りです! 我等を貶めようとする陰謀です!」

 そして彼等は後者を選択したらしい……彼等にとってみれば、ここで、国中の貴族が集まるこの場で罪を認める事は、すなわち破滅。意地でも罪を認めない腹積もりらしい。
 こうなってしまうと、見苦しい泥かけ論。罪のなすりつけ合いが始まってしまいそうに感じたが……そうはならなかった。

 辺境伯と子爵が騒ぎ立てる空気を切り裂くように、勢いよく会場の扉が開かれ、圧倒的な存在感と魔力を纏って、とある存在が現れた。

「……邪魔をするぞ」
「こ、これは、と、時の女神様!?」

 扉を開けて現れたのは時を司る女神……クロノアさん。
 最高神の登場という予想外の事態に、会場が一気に驚愕の声に埋め尽くされる。
 その騒がしい空間の中を、クロノアさんは悠然と進み、ライズさんの前まで移動する。

「シンフォニア国王よ。突然の来訪、すまぬな……少々この場を借りても構わんか?」
「も、勿論でございます」
「うむ、礼を言う」

 威厳ある口調でこの場を借りると宣言し、それをライズさんが了承したのを見て頷いた後、クロノアさんはゆっくりとリリアさんの前まで移動して口を開く。

「リリア・アルベルトよ……これより、『本祝福』を行う」
「はい……身に余る光栄です」

 クロノアさんが宣言した言葉に、会場が今日一番の驚愕に包まれる。
 最高神による本祝福……それは、正に異例中の異例……驚愕の事態という事だろう。
 ざわつく周囲に対し、クロノアさんは静かに手振る。すると、騒いでいた者達は一斉に口を閉じ、再び会場が静寂に包まれる。

「我が名――クロノアの名において――悠久なる時に告げる」

 静寂の空間に、圧倒的な存在感を持ってクロノアさんの声が響く。

「かの者――リリア・アルベルトを――我が祝福を受けるに値するものと認める」

 響く声は荘厳で、一言一言が確かな力を持って耳に届いてくる。

「故に――我が名――クロノアの名において――時に命ずる」

 両膝をついて頭を垂れるリリアさんの周囲に眩い光が舞い、それがリリアさんの体へ収束していく。

「悠久なる時よ――かの者を守護し眩き未来へと誘え――我が名――クロノアの名において――かの名――リリア・アルベルトの名を――我が加護の及ぶものとして――我が名と連ね――時に記す事を許す」

 目を開けていられない程の光がリリアさんに集まり、そして最後の一言を持ってそれが完了する。

「汝に――時の祝福を」

 その言葉と共に全ての光がリリアさんの体に吸い込まれ、本祝福が完了する。
 そしてリリアさんがゆっくりと顔を上げるのを見計らって、クロノアさんは静かに告げる。

「リリア・アルベルトよ」
「はい」
「今よりお前は、我の加護の及ぶ者となった……よって、今、この時より、我が名を用いて発言をする事を、許可する」
「はっ! 謹んで頂戴いたします!」

 ここまで来れば、俺にもアリスの書いたシナリオが分かった。
 今、リリアさんには最高神であるクロノアさんから、絶対の切り札が与えられた。
 そしてリリアさんはゆっくりと立ち上がり、顔を真っ青に染めて硬直している辺境伯と子爵に、与えられた切り札を行使する。

「……時空神、クロノア様の名において尋ねます。私が申告した貴方達の罪は、事実ですね?」

 こうなればもう逃れる術はない。
 リリアさんはクロノアさんの名を持って尋ねた。この問いに偽りで答える事は、すなわち最高神であるクロノアさんに刃を向けるに等しい行為となる。
 辺境伯と子爵は青を通し越して白くなった顔で、リリアさんの前で両膝をつき頭を下げる。

「……はい」
「……事実です」

 震える体で頭を垂れ、彼等は己の罪を認めた。
 それはここに集まる貴族、そして最高神であるクロノアさんに認識され、覆す事は出来ない罪として曝される事になる。
 それを見て、リリアさんは肩から重荷を降ろすように深く息を吐き、俺の方を向いて笑顔を浮かべた。

 拝啓、母さん、父さん――リリアさんと二人の貴族の因縁の戦い。その結果は――リリアさんの完全勝利で幕を閉じた。



最初から勝ち確だった。
ちなみに辺境伯、子爵に名前が無いのは、ネームドキャラは皆良い人という、作中の隠れたお約束があるからです。

なお、次回より前線の湿った砂糖により、所々でザラメの振る甘い天気になる予想です。

シリアス先輩「……てるてる坊主作ろう」
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