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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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良い父親なのに

 ジークさんの告白を受けて、晴れて恋人同士となった。
 だからと言って、接し方が急変する訳でもなく、紅茶を飲みながら雑談を続けた後で、森の散策を再開しようと立ち上がる。

 先程まではジークさんが前を歩き、俺が後ろからついて行く形だったが、今度は隣同士で歩き始める。
 距離が近くなったからか、微かにジークさんから柑橘系の良い香りが漂ってきた。
 香水だろうか? ジークさんらしい、爽やかで優しい匂いで……ジークさんの事を女性として意識し始めた事もあって、何だが凄くドキドキしてしまう。

 そのまましばらく歩いていると、不意にジークさんの手が触れ、そしてゆっくりと俺の手が握られた。

「……え?」
「こ、これぐらいは……こ、恋人同士なんですし……」
「は、はい!」

 驚くほど柔らかな手……俺の方が少しだけ体温が高いのかジークさんの手は少しひんやりとしていた。
 俺の手にすっぽりと収まる小さな手は可愛らしく、ジークさんが女性なのだと実感できた。

「……なんだか、良いですね。こういうの……」
「……手を繋ぐ事が、ですか?」
「それもありますが……こうして、カイトさんの『隣』を歩いている事がです……近くに居るんだって実感できます」
「……ジークさん」

 頬を染め幸せそうに呟くジークさんの言葉を聞き、俺はジークさんの手を握る力を少し強くする。
 想いはしっかり通じ合っているみたいで、ジークさんも俺と同じように握り返してきた。
 熱く燃え上がるような緊張では無く、ゆっくりと少しずつ体温が上がっていくような緊張と同時に、こうしてジークさんと一緒にいられる幸せも一歩進むたびに強くなっていった。










 俺が途中で寝ていたり、告白があったりで、想定していた以上に散策を再開した時間は遅く、空が赤みを帯びてきた時には、もうそんな時間なのかと驚いた。
 名残惜しさもあり、出来ればもう少しジークさんとの散策を楽しみたかったところだが……夜の森は視界も悪くなり、俺が転んだりする危険があるので帰ろうと提案され、それに頷いた。

 ジークさんと共にリグフォレシアの街に戻ったところで恥ずかしさから繋いでいた手を離し、レイさんとフィアさんの家に辿り着くと、丁度夕食の準備をしているみたいだった。
 レイさんとフィアさんは帰ってきた俺達を見て、お帰りと笑顔で告げてくれる。なんだか、凄く楽しそうに見えるのは気のせいだろうか?

 夕食の支度にはもう少しかかるという事なので、先に汚れを落とす為にお風呂に入らせてもらう事になった。
 ジークさんとの混浴を強く勧めてくるレイさんを、例によって例の如くジークさんが殴り飛ばし、客である俺が先に入るべきだというジークさんの厚意に甘えて、先にお風呂に入らせてもらった。

 レイさんとフィアさんの家のお風呂は、日本でいう所の檜風呂みたいなイメージで、木の香りが心地良く疲れた体を癒してくれる。
 リリアさんの屋敷の豪華で大きいお風呂も良いが、こういう馴染みある大きさのも良いものだ。

 俺が入った後で、ジークさんもお風呂に入り、その後食堂に集合して夕食を食べる事になった。
 フィアさんが用意してくれたのは、大きな花のように飾り付けられた綺麗な料理で、よくよく見ると野菜や薄く切った肉で作られていて、カルパッチョみたいな雰囲気だ。
 しかしサイズが非常に大きく、野菜や肉も様々な種類のものが使われているみたいで、なんというか物凄く豪華な感じがする。

「……凄い綺麗な料理ですね」
「これはね。リグフォレシアの花って呼ばれる……この地方特製の料理なのよ」
「……なっ……なっ……」
「ジークさん?」

 リグフォレシアの花という名前の料理だとフィアさんが教えてくれ、俺がその見た目の美しさに感心していると……何故かジークさんが、顔を赤くして信じられないものでも見たような表情を浮かべる。
 その妙な様子に首を傾げながら名前を呼ぶが、どうやら驚きのあまり聞こえていないみたいで、ジークさんは視線をフィアさんの方に動かしながら呟く。

「……なっ、なんで……い、いつ?」
「え? いつって……ねぇ、レイ」
「ああ、私達が何年ジークの親をやってると思ってるんだい? 帰ってきて顔見た瞬間に分かったよ」
「~~!?!?」

 茫然と呟くジークさんの言葉に、レイさんとフィアさんはキョトンとした表情で答える。

「……えっと、どういう事ですか?」
「あっ、そっか! ミヤマくんは知らないのね。このリグフォレシアの花って料理は、この街ではあるお祝い事の時に食べる料理なのよ」
「お、お祝い?」
「ああ、ジークとミヤマくんのお祝いって事だね」
「なぁっ!?」

 状況が分からず尋ねた俺に、フィアさんとレイさんが微笑みを浮かべて答えてくれたが……え? ちょっと待って……それってつまり、もう、俺とジークさんが恋人になった事がバレてる!?
 は、早すぎる……だ、だって、ほんの数時間前の出来事だし、街に入る前に繋いでいた手は離した筈なのに……さ、さすが両親というべきか、ジークさんの変化はすぐ分かったらしい。

 全部お見通しだと告げる二人の言葉に、顔が赤くなっていくのを感じていると……ジークさんの肩がプルプルと震え、耳まで真っ赤になっていく。

「……だからって……この料理は……『結婚の祝い』で食べる料理じゃないですか!!」
「えぇぇぇぇ!?」

 真っ赤な顔で叫ぶジークさんの言葉を聞いて、俺も思わず叫び声をあげる。
 えぇ、とある祝いって……結婚式の事!? いやいや、いくらんでも気が早すぎるし、物凄い恥ずかしいんだけど……

「うん? 別に構わないじゃないか、いずれ結婚するんだろう?」
「なっ!? あっ、そ、それは……」
「それとも、ジークちゃんはミヤマくんと別れる可能性があるって思ってるのかしら?」
「それは、その……あ、あり得ない……ですけど……」
「「じゃあ、問題無いね!」」
「……う、うぅ」

 満面の笑顔で告げる二人に言いくるめられ、ジークさんは湯気が出そうな程顔を赤くして、両手で顔を覆って座りこんでしまう。
 うん、その、俺もジークさんと別れたりする気なんて全く無いけど……それでも、ジークさんの恥ずかしさはよく分かる。
 実の両親にこんな手放しで喜ばれたら、そりゃ恥ずかしいに決まってる……うん、だから、自重しろ俺……真っ赤になってるジークさんが可愛いとか思ってるんじゃないぞ……

 そしてレイさんが、座りこんでしまったジークさんを見た後、俺の方を向いて真剣な表情を浮かべる。

「……ミヤマくん」
「え? あ、はい!」
「……ジークは私達にとって、本当に大切な娘だ。君なら大丈夫とは思うけど……幸せにしてあげてほしい」
「……はい。その、俺は、まだまだ未熟で頼り無いですけど……頑張って、ジークさんに助けられるだけじゃなく、ジークさんの事を支えられるようになってみせます」
「~~!?!?」

 父親としての強い想いの籠った視線に晒されながら、それでも俺はしっかりとレイさんの目を見つめて言葉を返す。
 俺だって男なんだ……こういう時ぐらい、ビシッと頼りがいのある事も言えるようにならないと……これから先、ジークさんに相応しい存在に、レイさんとフィアさんが安心出来る存在になるように……頑張ろう。

「……うん。やっぱり、君がジークの相手で良かったよ」
「さっ、男同士の話はそこまでにして……食べましょ! 今日のは特に自信作よ」

 俺の言葉を聞いたレイさんは、ふっと表情を崩して穏やかに微笑む。
 それを見て話が終わった事を察したのか、フィアさんが明るい声で着席を勧めてくれ、それに従って席につく。
 ジークさんも顔は赤いままだったが立ち上がり、俺の隣の席に座った。

「……それはそうと、ミヤマくん!」
「え? はい?」
「……繰り返すようだが、部屋は完全防音。それと『代えのシーツ』はベッド横の引き出しだ。後、浴槽はちゃんと深夜でも使えるように、魔法具を調整しておくから、思う存分――ぶへっ!?」
「……一回……死んでください」

 さっきまでの父親らしい表情はどこに消えたのか、完全にエロ親父の顔でとんでもない事を言い出したレイさんを、ジークさんが物凄い勢いで殴り飛ばした。
 額には青筋が浮かんでおり、目は完全に据わってる……かつてないほど、お怒りらしい。

「ま、待つんだジーク……なんで、剣を抜いて……ちょっ!? ちょっとっ!? まっ――ぎゃあぁぁぁぁ!?」

 そして深夜のリグフォレシアに、レイさんの大きな悲鳴が木霊した。

 拝啓、母さん、父さん――ジークさんと恋人になった事は、レイさんとフィアさんに一瞬でバレてしまった。しかしレイさんも、なんで余計な事を……下世話ともいえる行動を取るのか……アレさえなければ――良い父親なのに。



シリアス先輩、アイシスに続き、妹がクロも描いてくれました。
メインヒロイン可愛い! 例によって活動報告に掲載しています。

あと、後ほど笑顔バージョンのラフもくれるそうです。
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