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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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死亡フラグはちゃんとありました

 混乱で気付かなかったが、いつの間にかルナさんが入れてくれていた紅茶が目の前にあり、それを一口飲む。
 正直紅茶の味の良し悪しなど分からないが、非日常の事態に遭遇してかなり喉が渇いており非常に美味しく感じた。

「……美味しいハーブティですね」
「お褒めにあずかり光栄です。クスノキ様」

 どうやら紅茶では無くハーブティだったらしい。分からんよそんなお洒落なのは……

「では、説明を再開しましょう。先程申し上げた通り、10年に1度我々はお三方の世界から勇者様を招いております。なので、異世界とこちらの世界の差異に付いてもある程度は把握しておりますので、順を追って説明させて頂きますね」

 成程、確かに1000年前から10年に1度異世界人を招いているのなら、単純計算で100人の異世界人がこの世界へ来た事があると言う事。つまり何を説明するべきかと言うのも、リリアさん達は把握してくれてるって訳か……今回俺達はイレギュラーみたいなもので、勇者への説明とはちょっと違うのかもしれないけど大筋は同じって事かな?

「先ずは1年と言う期間についてですが、この世界の暦は火の月、水の月、木の月、土の月、風の月、光の月と進み、光の月の次は再び火の月から風の月、そして最後に光の月の代わりに天の月があります。日数は一律で30日、1年で360日ですね。ちなみに今日は天の月30日、新年へ切り替わる日です」

 つまり火の月、水の月、木の月、土の月、風の月、光の月、火の月、水の月、木の月、土の月、風の月、天の月って順番で切り替わっていって1年360日。元居た世界と殆ど同じ様な感覚って事で良さそうだ。

「なので皆さんが元の世界に戻れるのは、次の天の月30日ということになります。次に時間ですが、これに関しては全く同じと聞いています。1日は24時間ですね。ここまでで何か質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では次に金銭について。この世界の通貨は1R硬貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨の6種類で、単位はRリラと呼称します。1R硬貨はそのまま1R、鉄貨が10R、銅貨が100R、銀貨が1000R、金貨が10000R、白金貨が100000Rとなります。国民の一般的な一月の収入は2000から4000Rと言ったところですね」

 て事は前の世界と比べてみると、1Rは100円ぐらいで、それ以下の単位は存在しないって感じかな? 月に銀貨2~3枚、年で金貨4枚位あれば十分生活出来るって感じかな? うん、大丈夫。まだ頭はついていってる。

「一先ず皆さんには、銀貨50枚――50000Rをお一人ずつに配りますので、観光等で自由にご利用ください。金貨や白金貨は屋台等の単価の安い店では使用できないので、銀貨にしております」
「ぶっ!?」
「「えっ!?」」

 微笑みながら告げるリリアさんの言葉と共に、ルナさんが俺達の前に硬貨の入った綺麗な袋を並べていく。
 50000R、日本円に換算して一人頭500万円ぽんっとくれたぜ、流石公爵様半端ねぇな……

「あ、えと……流石にこれは……」
「少ないと思う気持ちは分かります。突然異世界に召喚された事等を考えても、これでは十分なお詫びにはならないでしょう事も理解しております」
「あ、いや……」

 逆です。多すぎるんです。確かに1年不自由なく生活できる金額ではあるんだろうけど、流石に一介の学生ごときがいきなりこんな大金? 渡されても戸惑いしか……
 いや待て待て、生活費含めてであれば……この世界の生活水準が分からない以上、俺達が元居た世界と同じ様な生活を送るには妥当な金額と言う事なのかもしれない。
 そうだよな、流石に衣食住の保障って言っても、公爵家に住まわせてくれるわけじゃなくて宿を手配してくれるとか、そう言う話なんだよね。

「勿論、衣食住はそれとは別にご用意いたしますし、皆さんには納税義務もありません。そのお金は観光や趣味にお使いください」

 生活費含まずだった!? じゃあ、やっぱ多すぎる!?

「そ、それだと、流石に多すぎませんか?」

 良く言ってくれた楠さん、そうそれ、俺が言いたかったのはそれだよ。

「クスノキ様、お気遣いは無用です。皆さんを巻き込んでしまった私には、そういった形でしかお詫びのしようがありませんので、どうか使いきるつもりで……足りなければ、その都度追加を用意します」
「ちなみにご用意させて頂いた金銭は、お嬢様の私財ですので遠慮する必要はありません。特にお金のかかる趣味も無く、旦那はおろかその候補すらいない寂しい公爵家当主。貯め込んでいる金額は相当なものですから」
「ルナ、ルナ……何で貴女は、わざわざ私の心をえぐっていくのですか? 貴女私のメイドですよね?」
「ええ、私ルナマリアは、リリアお嬢様に身も心も奉げる事を誓ったメイドであり、いつでもお嬢様の味方です」
「……」

 リリアさんって苦労してるんだな。いや、本当に……後ルナさんの名前は、ルナマリアさんと言うのが正式らしい。覚えておこう。

「さて、お嬢様。婚期を逃した事について気にされる気持ちは分かりますが、そろそろお時間が……」
「私、そう言う話一度もしてませんよね!? 貴女が勝手に付け足してるだけですからね!! っと、それはともかく、確かにこの場で長々と話を続ける訳にも行きませんね。皆さん、この世界の常識等の説明は私の家に移動してからに、させていただきたいのですが……構いませんか?」
「あれ? ここって、えとリリ――アルベルト公爵様のご自宅ではないのですか?」
「ミヤマ様、リリアとファーストネームで呼んでくださって大丈夫です。敬称も不要ですし、話しやすい口調で構いません」
「あ、えっと、では、リリアさんと呼ばせて頂きます。後、俺も快人と名前……ファーストネームで大丈夫です。敬称も要りません」
「分かりました。では、今後はカイトさんと呼ばせて頂きます。さて、先の質問の件ですが……ええ、ここは勇者召喚を行う神殿で、私の所有宅と言う訳ではありませんので、長い話は移動してからと致しましょう」

 柔らかく微笑むリリアさんは本当に可憐で、思わず見とれてしまうほど美しかった。う~ん、美人で優しそうで地位もお金もあるのに独身。世の中分からないものだ。
 そしてリリアさんが光永君の方の進展を確認してくると、席を外し室内には俺を含めた3人とルナマリアさんが残される。

「皆様、お茶のお代わりはいかがでしょうか?」
「あ、ありがとうございます。あの、ルナマリアさん?」
「はい。なんでしょうかユズキ様?」
「ぶしつけな質問なんですけど……リリアさんって、凄い美人でスタイルも良くって、その上優しそうなのに……なんで、恋人が……」
「陽菜ちゃん……貴女……」
「あ、いや、ほら先輩も気にはなるでしょ?」

 どうやらリリアさんのお陰で余裕が出てきたのか、柚木さんが俺も気になっていた内容をルナマリアさんに尋ねる。楠さんも強く止めはしないって事は気になってるんだろう。
 そんな俺達の疑問に対し、ルナマリアさんは紅茶を淹れながら苦笑する。

「実は現国王陛下、つまるところお嬢様の兄君様なんですが……歳の離れたリリアお嬢様の事を、それはもう溺愛しておりましてね。ええ、本当に……『リリアお嬢様に男が近付いたら、翌日消える』なんて噂も流れるほどです」
「え、それって……」
「ええ、困ったものです。そのおかげでアルベルト公爵家は使用人含め全員女性で、『本来なら男性の立ち入りは禁止』されてますからね」
「……」

 ちょっと待って、ちょっと何言ってるか分かんないんですけど……つまり国王は重度のシスコン野郎で? リリアさんの自宅は基本男子禁制で? 以上から導き出される答えは?

「ミヤマ様、おめでとうございます。アルベルト家始まって以来の快挙です。まぁお嬢様の代が初代なんですが……」
「……は?」
「……宮間さん、でしたね? 短い付き合いでした」
「……へ?」
「……日本に帰っても、宮間先輩の事はわすれません」
「……え? えぇぇぇぇ!?」

 拝啓、お母様、お父様――異世界は平和でした。でも――死亡フラグはちゃんとありました。


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