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勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした 作者:灯台
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閑話・クロムエイナ①~分かたれた全能の力~

 夜もすっかりふけ、窓の外を静寂が支配する中、クロが穏やかな口調で言葉を発する。

「え~と、じゃあ、どこから話そうか?」
「……そ、その前に、一つ聞いていい?」
「うん?」
「……この体勢は、一体……」

 現在俺はソファーに座っていて、クロも同じ場所に座っている……そう、同じ場所に……
 つまりクロは、俺の膝の上に乗っている状態と言う訳だ。

 も、物凄くドキドキする……なんで、こう、女の子の体ってどこもかしこも柔らかいんだろうか……膝に感じる柔らかな感触と暖かさに、俺の心臓は早鐘のように動き、顔もどんどん熱くなる。
 しかもクロは、体重を俺に預けるようにもたれかかっていて、膝だけじゃなく胸元にもクロの体温を感じている。

「カイトくんにくっついてたいから……だめ?」
「ッ!? い、いや、駄目じゃない」
「えへへ、ありがとう。カイトくん、あったかい……」

 嬉しそうにはにかみ、頬を桜色に染めたクロの表情は、殺人的とさえ言えるほどに可愛らしい。
 そのあまりに可愛い姿に、反射的に了承の言葉を返すと、クロは幸せそうに俺の胸に後頭部を擦りつける。

 どこか以前より子供っぽい様子で甘えてくるクロ……たぶんクロにとって、甘えるという行為は、何よりの愛情表現なのだろう。
 それを温もりと共に感じ、そっとクロの体を後ろから抱き締める。
 クロは俺の行動に嬉しそうに笑みを浮かべた後、最初に話しかけていた話題を告げる。

「じゃあ、先ずは……ボクの正体から、教えておくね」
「分かった」

 クロの正体、それは正直全く気になっていないと言ったら嘘になる。
 この世界最強の神であるシロさんに匹敵する力を持ち、アリス曰く唯一シロさんを殺す事が出来る存在……それは一体どんな存在なんだろうか? 
 少なくともただの人間である俺には、漠然と物凄い存在なんだろうなとしか想像もできない。

「……ボクはね……『もう一人のシロ』なんだ」
「……へ?」
「シロとボクは、鏡映しの対存在でもあり、表裏一体でもあるんだ」
「えっと、どういう意味?」

 自分はもう一人のシロさんだと告げるクロ……その言葉で思い出したのは、先程見たクロの姿。
 シロさんに瓜二つ……と言うよりは、髪の色以外全く同じ……正しくもう一人のシロさんと言う言葉がピッタリ当てはまる容姿だった。

「カイトくんが知り合ったシロは、実はけっこう丸くなってたんだよ。昔のシロは、もっと冷たくて淡々としてた」
「……」
「シロはね、この世界を造ったんだけど……自分が正しいとも、自分の行いが素晴らしいとも……欠片も思っていなかった。だからシロは世界を造った時、同時に全能だった自分の力を『半分に分けた』」
「半分に?」
「うん……そしてその半分の力は、最低限の知識だけを与えて、造り出した世界に落とした……それが、ボク」

 何となく話が見えてきた。
 クロはシロさんが造り出した自分と同じ力を持つ存在であり、同時にシロさんの造った世界を見定める役目を持っていたという事。
 それを肯定するように、クロは一度頷いてから言葉を続ける。

「シロがボクを造り出した理由は単純だよ。世界を見て、世界と共に成長して……この世界に創造神が不要だと判断した時に、創造神を殺す事が出来る存在を造った。シロは自分にすら興味が無かった。世界を造った時点で、自分の役目はいずれ終わるって考えてた。そして、造った世界の管理は神族に任せて、世界を見る事すらせず……いずれボクが自分を殺しに来るか、或いは世界に見切りをつけて滅ぼすのを待ってた」
「……」

 正直その時のシロさんの考えは全く理解できない。いや、ある意味神らしいとも言えるのかもしれないけど……自分にすら何の興味を抱かないという言葉には寒気すら覚える。
 必要とあれば、役目の終わった時に自分を殺す為の存在を造り出す、失敗であれば自分の造った世界すら滅んでも構わない……あまりにも冷徹でシステマチックな思考……

 ただ、そのままシロさんの思惑通りに事が進んだ訳ではない。
 実際に現在のシロさんは淡々とした天然な部分はあるが、優しさも愛情も持った人間らしい神になっていると思うし、なんだかんだで俺はシロさんの事が結構好きだ。

「……まぁ、それで、ボクはこの世界を見て、この世界と共に生きて、この世界を愛した……で、むかついたから、シロの事ぶん殴りに行った」
「……は?」
「だって、そうじゃん。こんな綺麗で素晴らしい世界作っておきながら、見もしないで勝手に達観してさ、後で自分を殺して下さいって……ふざけんなって感じだよ。物凄く腹が立った……お前が造った世界だろ? だったらちゃんと責任もって見守ってやれよ、支えてやれよって感じでね」

 クロは元々はシロさんと同じ存在だったが、世界と共に生き、この世界を愛し、確固たる自分を造り上げた……だからこそ、世界と関わろうとしていないシロさんが……もう一人の自分が許せなかったって事だろう。

「んで、神界にシロをぶん殴りに行ったのが……2万年前の戦いだね」
「って事は、2万年前の魔界と神界の戦争って……ようは、クロとシロさんが喧嘩したって事?」
「まぁ、そう言う事だね!」

 小さな胸を張りながらえっへんといった感じで頷くクロに、思わず呆れてしまう。

「ボクとシロの力は全くの互角だけど……ボクにはシロを一撃で殺せる特殊な魔法が、他ならぬシロ自身から与えられてた。けど、ボクはシロを殺す気も世界を滅ぼす気も無かった……シロと喧嘩して、意見をぶつけ合いたかっただけなんだけど、そうなると他の神族と戦って消耗しちゃうと……元が全く互角だから、消耗した分だけ不利になる」
「……だから、六王達と一緒に……」
「うん。皆に手伝ってもらって、シロを神界の奥から引っ張り出した感じだね」

 そう言って言葉を区切った後、クロはゆっくりとその当時の事を語り始めた……


















 ――2万年前――

 その日、神界に激震が走った。
 当時の神界から魔界、人界、他の世界を繋ぐ唯一の道である神門が破壊され、桁外れの魔力を持つ者達が現れた。
 そしてその異常事態を、最も早く察知したのは神界の最高神……

「ッ!? (なんだ……この、魔力は!? 6つ……いや、7つ?)」

 時空神クロノアは、突如神界に現れた巨大な魔力を感じ取り、仕事を行っていた手を止めて立ち上がる。
 神界から魔界、人界へと移動する事は出来る。しかし、魔界、人界側から神界へ移動する事は、神族しか行えない筈だった。
 つまり、現在クロノアが神族以外の魔力を感じ取っているという事は……

「……まさか、術式を書き換えたのか!? シャローヴァナル様が造ったゲートの……シャローヴァナル様の術式を……くっ!?」

 状況を認識すると共に、クロノアは即座に神殿の外へ飛び出す。
 飛び出してすぐに遠方……神門のある方向から大きな煙が上がっているのが見え、クロノアは瞬時に世界の時間を停止させる。

「……何者か、知らぬが……神界に刃を向けた事、後悔させてくれる!」

 時を司るクロノアにとって、距離など何の足かせにもならない。
 停止させた時間の中で移動を開始し、クロノアは他の者達にとっては瞬き程の時間さえかけず、神門に辿り着く――事は、出来なかった。

「ぐぅっ!?」

 移動を開始した直後、クロノアは強烈な衝撃を受けて地面に叩きつけられる。
 最高神であるクロノアの防御を持ってしても受け切れない強烈な一撃に、苦悶の声を溢しながらも即座に体勢を立て直す。
 体のダメージは即座に回復が出来る。しかし、クロノアの表情に浮かぶ驚愕までは消えていない。

「……馬鹿な……貴様、何者だ! どうやって、我の停止させた時間の中を……」
「……その程度、『従者』たる私にとっては造作も無い事……我が主の元へは行かせません」

 白金色の短く切り揃えられた髪をなびかせ、悠然とクロノアの前に立つ襲撃者……アインは、油断なく構えてクロノアと対峙する。

「……(なんだ、この馬鹿げた魔力は……信じられん。最高神である我に匹敵するだと……他の襲撃者もこのレベルだとするなら、不味い!)」

 クロノアの額を一筋の汗が伝う。
 肌で感じ取ったアインの実力を理解し、そのレベルの実力者がまだ6体も存在している事に戦慄する。
 しかしそれを表情には出さず、クロノアは即座に戦闘態勢になる……このレベルの強者が神界を襲撃しているなら、一刻も早く現場に駆け付けねばならないと……













 クロノアと同様に襲撃を察知し、即座に襲撃現場である神門に向かった生命神ライフは、襲撃者達の姿をその能力によって、現地にいる神族の視覚で捕らえる。

「……(魔力は7つでしたが、神門に居るのは3体……魔獣に竜に精霊……他は散りましたか、厄介な……ともかく、桁外れの魔力……なんとしても、私があの三体を抑えなければっ!)」

 ライフもまた襲撃者達の力を感じ取り、神界始まって以来最大の危機であると判断し、即座に生命を司る力を行使する。
 ライフの周囲に光り輝く魔力が流星のように流れ、それぞれが巨大な槍を持った鎧兵の姿へ変わる。
 その数は優に数万を超える軍勢であり、ライフの指示によって襲撃者達の元へ一直線に飛翔する。

「行きなさい、先兵よ――なッ!?」

 しかし、鎧兵達は襲撃者の元に辿り着く事はなく、一斉に落下し始める。

「……行かせない」
「……(なんて、禍々しい魔力……まるで、死、そのもの……)」

 青白い光を禍々しい死の魔力を纏い、ライフの前にアイシスが降り立つ。
 アイシスが放つ死の魔力に触れた鎧兵達は、次々とその命の光を消して落下していく。

「……邪魔を……するなら……殺す」
「……成程、大した力です……ですが、あまり見くびらないで貰いましょうか!!」
「ッ!?」

 言葉と共にライフの体が光を放ち、周囲に先程を遥かに超える兵団が出現する。

「私は生命を司る。失った命を蘇らせる事も、新たな命を造り出す事も、容易い……死の化身よ……貴女が何体の兵を殺そうと、私はそれを上回る兵団を造り出します」
「……関係ない……全部……殺すだけ」

 視界を埋め尽くすほどの兵団を従えるライフを睨みながら、アイシスはさらに身に纏う死の魔力を強大に膨れ上がらせる。
 生と死、相反する二つの力が、今、静かに衝突する。















「……こりゃ、面倒臭いとか、そんな事言ってらんないね」

 神界に響き渡る戦いの音を聞きながら、運命神フェイトは静かに上空から戦局を見つめる。

「……(時空神も生命神も喰いとめられてる。コイツ等、一体一体が私達に匹敵する力を持ってるって事か……仕方ないね。この状況じゃ、私が残る5体を全部片付けるしかなさそう)」

 運命を司るフェイトは、可能性を決定する権能を有している。
 故に彼女が戦局全体を見渡せば、味方には奇跡が起こり続け、敵には不幸が続けざまに降り注ぐ。

 そしてフェイトがその運命を決定する力を行使しした瞬間、景色がノイズのようにブレ、彼女の力がかき消された。

「ッ!?」
「……怖いっすね~因果律をいじるとか、神様ってのは本当にとんでもないっすね」
「……(いつの間に!? 私が、接近を察知できなかった?)」
「なので~足止めさせてもらっちゃいます!」

 鎖の付いたローブを揺らし、シャルティアは軽い口調で宣言する。
 その言葉を冷ややかな視線で受け流しつつ、フェイトは静かに言葉を返した。

「……私を、止める? 出来ると思ってるの?」
「出来ますよ。私は虚ろな幻影……世界を欺く道化……運命には縛られません」
「……流石道化だね。面白い冗談だと思うよ……笑えないけどさ……」

 運命を定める神、世界を欺く道化……他の最高神と同じように、フェイトもまた強敵と対峙する事になった。

 そして、強大な力を持つ者達により戦いが繰り広げられる中……世界最強の存在が、ゆっくりと神の座から立ち上がり、戦場へと歩み始めていた。
 それを心待ちにしている存在がいる事を、知らないままで……


クロの過去を語る三部構成の閑話です。
神界との戦いは次回で終了します。てか、閑話自体明日中に書き切ってみせます。
そしてこの時はまだ……世界にメイドと言う言葉は無い。

シリアス先輩「……えぐっ……ひぐっ……もう出番なぃ……」

【閑話で活躍できる。閑話では主役】

シリアス先輩「……えっ(きゅん」

シリアス先輩はチョロイン。
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