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クロに想いを伝える

本日は二話更新です。これは二話目なのでご注意を。

 転移魔法によってアリスの店まで帰ってきた。

 現在俺の体には、クロを除いた六王全員の魔力で作られた防御魔法が張られているらしいが、見た目的に変化は分からない。


「……本当はアインさんにも協力してもらえたら、良かったんですが……」

「……アインさんは、断ったって言ってたよな?」

「ええ、バッサリと断られました……私の召集に応じる気はないって」

「そっか……」


 クロに対し最大の忠誠を誓い、全てにおいてクロを優先するアインさんにとっては、俺のやろうとしている事はクロの心に土足で踏み込む行為……容認は出来ないみたいだ。

 クロの為だなんて、綺麗事を言うつもりはない……アリス達に頼まれたかどうかも関係なく、あくまで俺は、俺自身がクロの事を好きだから告白する。

 そうじゃないと、クロに失礼だと思う。


 そんな事を考えていると、滅多に客が来ない筈の雑貨屋の扉が開く音が聞こえてきた。


「……失礼します」

「なっ!?」

「アインさん!?」


 店に入ってきたのは、今話題に出たばかりのアインさんだった。

 アインさんはそのままこちらに歩いて来て、驚愕する俺とアリスの前で立ち止まり、冷やかな表情のままで藤色の目を俺に向ける。


「……カイト様、先に確認しておきます。思い直すつもりは?」

「……待ってくださいアインさん。そんな事聞いて、どうするつもりっすか?」


 まるで感情の籠ってない冷たい声で告げられ、思わず俺が後ずさると、素早くアリスが俺の前に立ち、アインさんを睨みつけるようにして言葉を発する。

 両者の間の空気が軋むかのような緊迫した会話……アリスはいつの間にか手にナイフを握っており、アインさんの返答次第では切りかかるのではないかとすら思えた。


「……シャルティア。一応誤解は解いておきます。私は貴女が知らせた事、それをカイト様では無理だと思っている訳ではありません……可能性だけなら五分五分だと思っています」

「なら、何で協力してくれないんですか?」

「単純な話です。絶対では無いからですよ」

「っ!?」


 睨み合った姿勢のまま、アインさんとアリスは鋭く言葉を交わし合う。

 何故協力してくれないのかと尋ねるアリスに、アインさんは淡々と100%では無いからだと答える。


「カイト様の行動の結果が実ればクロム様が救われる……そんな事は関係ありません。今の、クロム様が、傷つく可能性が欠片でもあるなら……私がそれを見過ごすと思いますか?」

「……カイトさんを、どうするつもりですか?」

「危害は加えませんよ。ただ、説得します。考え直して頂けるように『何時間でも何日でも何年でも』……私の力ならそれが出来る」

「なっ!? 本気で言ってるんですか!?」


 たぶん、いや……間違いなくアインさんは時間を操る事が出来る。だからこの言葉も決してハッタリなんかじゃない。

 アリスの纏う雰囲気が、強い怒気を帯びて行く中、それでもアインさんは冷静なままで俺を見つめる。


「カイト様、今いった事をふまえた上で……再度尋ねます。思い直すつもりは?」

「……ありません」

「……そうですか……いえ、予想通りと言うべきですかね……致し方ありません」

「っ!?」


 例えアインさんに何を言われたとしても……俺はこの決意を変えるつもりはない。

 別に高尚な理由やカッコいい考えがある訳じゃない……ただ、クロの事が好きだから……クロを諦められないから……ただ、それだけだ。


 アインさんは俺の言葉を聞いて静かに頷いた後、俺に手を向ける。

 その動きに反応して即座にアリスが間に割って入ったが……次の瞬間、アインさんの手の前には、先程アリス達から受け取ったのと同じ魔力の球体が現れる。


「……え?」


 アリスが驚いたような声をあげる中、魔力の球体はアインさんの手を離れ、俺の体に吸い込まれていった。


「……アインさん?」

「今までの私なら、先程言った事を実行していた筈でしたがね……どうやら、私も貴方に毒されてしまったみたいです……賭けて、みたくなりました。だから、生涯に一度のみ、ただこの一度だけ……私は己に課したルールを破ります」


 微かに、注意してみなければ分からない程小さく微笑みを浮かべ、アインさんはすぐに踵を返す。

 用件は終わったといった感じで、そのまま去っていこうとするアインさんを見て、アリスが大きく溜息を吐きながら呟く。


「助かりました。正直、魔力の大半を消耗した状態で、アインさんと戦ったら、カイトさんを守り切るのは難しそうですしね」

「……適当な事を言うのはやめなさい。あくまで私の想像の範疇ですが……私は、貴女はシャローヴァナル様、クロム様に続き、世界で三番目に強いのではないかと考えています……私が強硬策に出た場合は、何かしら『切り札』を切ったのでしょう?」

「……さぁ、どうですかね? 買い被りなんじゃないですか?」


 淡々と告げるアインさんの言葉を聞き、アリスは適当な感じで首を振る。

 その人を喰ったような態度に反論する事はなく、アインさんは扉の前まで歩き、そこで一度立ち止まり振り返らないままで口を開く。


「カイト様、もし結果がどうであれ、貴方がクロム様を傷つけたなら……私は貴方を許さない」

「……はい」

「……ですが、もし、貴方がクロム様を救ったなら……その恩は……生涯決して忘れません。必ず報います」

「……え?」

「ご武運を……」


 最後に小さく応援の言葉を告げて、アインさんは雑貨屋から出て行った。












 アインさんが去って少し経ち、俺もそろそろ帰ろうと考えていると、アリスが穏やかな声で話しかけてきた。


「カイトさん、前に私が……心に力は宿ると思うかって尋ねたの、覚えてますか?」

「え? あぁ、ゲートで会った時だよな?」


 アリスが告げた言葉、それは魔界から戻るゲートで三度目に遭遇した際に、幻王の姿で俺に告げた言葉。

 その時は結局うやむやになってしまったが、アリスは何かを伝えたいみたいだ。


「……心に力は宿ります。心が強ければ、いくらでも奇跡は起こせる」

「……アリス?」

「弱くて、頭もよくなくて……気合いと根性、それに絆、少しの奇策を武器に格上を打ち破り続け、いつの間にか『英雄』と呼ばれていた馬鹿の言葉です。心に留めておいてください」

「……分かった」


 それは一体なんの例え話かは分からなかった。しかし妙にリアリティとでも言うのだろうか、まるで自分が経験してきたみたいな口調だった。

 そう言えば、さっきも『私の居た世界』という言葉を使っていたし……まだまだアリスには、秘密がありそうだ。


「頑張ってください。応援してますよ。心から……」

「……ありがとう」


 だとしても、それを問いただすのは今するべきじゃない……今は、うん。クロの事だけを考えよう。

 それが心から応援してくれるアリスへの、何よりの感謝になると思うから……













「カイトくん? 何か考え事?」

「え? あ、いや、ちょっとね」


 夜、当り前のように俺の部屋を訪れたクロとの会話の最中、どうやら俺は昼間あった事を考えていたみたいだ。

 意識するなと言う方が無理があるし、こればかりはしょうがないのかもしれないけど……その事についてクロは何も聞いてこない。


「あっ! 分かった! 明日のデートの事考えてたんでしょ!」

「う、うん……そんな感じかな?」

「凄く楽しみだな~カイトくんとのデート、ボクいっぱいお洒落していくね!」

「……ああ」


 俺の体に六王とアインさんの魔力で障壁が張られている事ぐらい、クロなら気付くと思う……いや、確実に気付いている。

 だけどそれには触れてこない……あえて触れないようにしているのかもしれない。


 そう考えながらクロを見てみると、クロの様子も普段とはどこか違う気がした。

 妙にテンションが高いけど、どこかクロらしくないというか……違和感がある。

 その話題に触れたくないから明るく振る舞いながらも、内心焦っているような感じだ。


「……なぁ、クロ?」

「うん? どうしたの?」


 静かに名前を呼び、こちらに向かって首を傾げるクロの目を見つめる。

 美しい金色の目は、俺を捕らえているようでどこか不確かに揺れている気がした。


 うん……そうだよな。

 明日はクロとのデート、俺だって本当に楽しみにしていた……凄く、ソワソワして落ち着かなかった。


 明日のデートは楽しいものにしたい。クロと笑い合って、この美しい世界を一緒に歩きたい……なら、決着は今着けるべきなんじゃないのか?

 先延ばしにするのは簡単……いや、楽だ。でも、結局それは逃げてる事と変わりない。


 こんなもやもやした気持ちのまま、クロの焦りを感じながらデートなんてしたくない。

 だから……覚悟を決めろ! 勇気を振り絞れ!


 緊張から微かに手が震える。喉はやけに渇いた感じがして、瞳に映るクロの姿が普段より何倍も綺麗に見える。

 告白なんて今までの人生で一度もした事が無い……こんな緊張するものなのか? まるで全方位から万力で圧力をかけられているみたいに身が硬くなる。


 首を傾げたままのクロの前で、俺は震える手でマジックボックスの中から、アリスに貰った金色の果実を取り出し……ゆっくりとクロに差し出す。


「……コレを、受け取って欲しい」

「ッ!? なっ……なん……で……」


 俺の差し出した果実を見て、クロの瞳が大きく揺れた。

 大きな動揺と、恐怖が織り交ざったような瞳を見開き……クロは茫然と俺を見つめる。


 拝啓、母さん、父さん――誰かを好きになるのに理由は要らないってよく聞くけど、アレは本当にそうだと思う。助けてもらった、救われた、そんなきっかけは確かにあるけど、クロを好きになったのは、そんな事は関係なくご自然な事のように思えた。ともあれ、今日、この時、この場で、俺は――クロに想いを伝える。




【アインの攻略フラグがクロムエイナを攻略することでアンロックされます】


シリアス先輩「えっ!? ちょ、早い!? デートの後じゃないの!? フライング! フライング! オフサイド!!」


次回「シリアス先輩死す」


シリアス先輩「え? 終わり? ま、まだ二話くらいしか……」


三話続けてあげるだけでも死ぬほど譲歩してます。はよ死ね。


シリアス先輩「ぶわっ……」

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― 新着の感想 ―
た、耐えらるはずです!・・・あなたなら! シリアス先輩!
やめて!ラブラブで、シリアスフラグを焼き払われたら、シリアス先輩まで燃え尽きちゃう! お願い、死なないでシリアス先輩! あんたが今ここで倒れたら、今後のシリアスはどうなっちゃうの? 希望はまだ残…
[一言] なんか一周まわってシリアス先輩が可哀想になってきた……名無
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