迷子のハイエルフ⑦
転移ゲートに向かう傍らフォルスさんの気分が乗ってきたのか、特殊個体に関する講義のような話が始まっていた。
「そもそも、特殊個体には先天性のものと後天性の元があるという話は聞いたことがあるかな?」
「ああ、あります。生まれながらに特殊個体になる種族と、後天的に進化する種族がいるんですよね」
「その通り、それが現在の常識ではある。だが、私は果たしてそれは別の可能性もあるのではないかと感じているんだ。例えば、エルフは後天的に特殊個体に進化する種族だが、では、だからといって先天的な特殊個体が絶対に誕生しえないとは言い切れないはずだ。あくまでまだ前例が無いだけで、いずれ先天性の特殊個体が生まれる可能性もある」
言われてみれば、なるほどと思えるような内容ではある。いまはまだ後天的な特殊個体しか確認されていないだけで、実は先天的な特殊個体も生まれる可能性があるというのは、あり得そうな話ではある。
「さらに、先ほど話したがハイエルフは身体的特徴の変化に乏しいというのもがある。すべてというわけではないが、通常特殊個体というのは色が変化していたり、体の一部に特徴があったりと知るものであれば一目で判別がつく特徴がある」
「あ~なるほど、エルフ族の変化は内臓なので、少し変わった例ってことですね」
「ああ、その通り。あくまで仮説ではあるが、ハイエルフはエルフが一定の条件を満たせば成長するものであり、特殊個体ではない可能性もある。そして、エルフ族の真の特殊個体は未だに生まれていない。そう考えると、ロマンがあるとは思わないかい?」
「なんか未知って感じはしますね」
「そうだろう、そうだろう。いや、私は特殊個体の専門家というわけではないのだが、やはり研究者という性質上、そういったものにはロマンを感じるよ」
そう言って楽し気に話すフォルスさんに相槌を打ちながらのんびり歩いていると、不意に手を引かれた。
「おお、これはなかなか珍しい素材だね。これが有ればいま研究中の案件に新たなアプローチが可能になるかもしれない。むっ、向こうにはさらに珍しそうな……これは研究の香りが!」
「はいはい。今度にしましょうね」
「そ、そんな、待ってくれ!? この機会を逃すともう手に入らない可能性も……」
「さぁ、もうすぐゲートですよ」
歩いているとたびたびこうして研究の誘惑に惹かれることがあるので、本当に手を繋いでいなかった場合、即見失ってしまいそうではある。
実際ラグナさんとかも苦労していたみたいだし……果たして逸れ方は、トーレさんとどちらが上か……。
「なんだろう。私の扱いがだんだんとぞんざいになっている気がするね。それだけ心の距離が縮まったと喜ぶべきか、ラグナやヒカリと同じような対応をし始めたことに嘆くべきか、とても迷ってしまうよ」
「……ハプティさんは違うんですか?」
「ああ、ハプティは……私が迷子になるより、ハプティが金銭トラブルを起こす回数の方が多かったからね。私以上にヒカリやラグナに目を付けられていたよ。ただ、彼女は強かだから、そういった警戒まで利用して私たちを上手く誘導して、金もうけをしていたね。いやはや、むしろあの冒険中はハプティがトラブルメーカー過ぎて、私の迷子っぷりは霞んでいたレベルだったね」
どんだけトラブルメイカーなんだハプティさん……もといアリス。確かに六王祭の場でも、ノインさんがフォルスさん以上のトラブルメイカーだったと言っていたし、フォルスさんもこの言い方ということは、マジでよっぽどだったんだと思う。
シリアス先輩「4人のパーティで3人が口をそろえて、一番のトラブルメーカーだったというレベル」




