表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/2400

頭がショートしそうなんだけど!?

 以前からの約束通り訪れたアイシスさんの居城、そこで現在俺はかつてない程の危機的状況に遭遇していた。

 俺の視線の先には、雪の様に白い肌を露出させたアイシスさんが、フワフワと浮かびながら近付いて来ており、心臓の音が聞こえるほど大きくなってきている。


 アイシスさんはタオルを巻いていたりする訳ではなく、申し訳程度に体の前にタオルを持っており、大事な部分だけがギリギリ隠れている感じだ。


「あ、あい、アイシスさん!?」

「……うん? ……どうしたの?」

「なな、何やってるんですか!?」

「……なにって……カイトと……一緒に……お風呂……入る」


 ああぁぁぁ!? 首傾げちゃ駄目!? タオル動くから! 見えちゃうから!?

 と言うかいつまで見てるんだ俺! さっさと視線外せ!?


 自分の体に必死に言い聞かせつつ、何とかアイシスさんから視線を外す。

 そしてアイシスさんに背を向けた状態のまま、慌てて言葉を続ける。


「お、俺出ます!」

「……だめ」

「へ? なっ!?」

「……ちゃんと入らないと……疲れ……取れない」


 あれ? おかしいな……今アイシスさんは、俺の背後から肩に軽く手を置いて注意してきた。

 全然力込めてる感じはしない……けど、体ピクリとも動かないんだけど!? 見た目からは想像もできないけど、やっぱり力も滅茶苦茶強いの?


 ともあれこれでは逃げられない。

 覚悟を決めるしかない……心頭滅却、心を強く持って……冷静に……冷静に……


 動揺しながらも落ち着こうとしている俺を尻目に、アイシスさんが湯船に入る音が聞こえる。


「……んっ……ふぁっ……」


 色っぽい声出さないでもらえますか!? もう一瞬で精神が焼き切れそうなんだけど!?


「……気持ちいい」

「そそ、そうですね……」


 あわわわ、どうしよう!? 当り前の様に隣に来るし、声は何か色っぽいし、見ないようにしようとしてもつい視線が……

 肌白っ!? 肩ちっちゃっ!? し、しし、しかも……ポニーテールだと!?


 どうやら湯船に髪が浸からない様に纏めているのか、アイシスさんはポニーテールの髪型になっており、普段は長い髪に隠れて見えないうなじが見え、上気し微かに朱が入っている肌は芸術品の様に美しい。

 このまま沈黙していると本当に頭がおかしくなりそうだったので、何とか話題をと思って呟く。


「あ、あい、アイシスさん……その、えっと……は、恥ずかしくないんですか?」


 って、何聞いてるんだ俺は!? 駄目だ、完全に動揺してるみたいで、話題を逸らそうとしてより悪い方向へ誘導してしまった気がする。

 アイシスさんは俺の言葉を聞いて、微かに頬を染めて少し俯き気味で口を開く。


「……他の人に見られるのは……嫌だけど……カイトなら……いい」

「!?!?」


 こ、殺しに来てる……完全に俺の理性を抹殺しに来ている!?

 可愛すぎるし、距離が近すぎるし……コレはもう、少しくらい見えてしまうのは不可抗力なのでは……

 いやいや!? ふざけるなよ……いくら相手がこちらに好意を抱いてくれてるからって、気持ちに応えても居ないのに良い目見ようなんて最低の考えだぞ!


 落ち着け、大丈夫だ……視線は下げない。不用意に体は動かさない。変な妄想をしない……よし大丈夫だ!


「……カイト」

「なあっ!?」

「……うん?」

「あ、ああ、あい、あい、アイシスさん!? て、ててて、手!?」


 しかしそんな俺の決意を嘲笑うかのように、湯船の中で手が引かれ、アイシスさんは俺の手をそっと抱きしめた。

 二の腕に当たる天国の様に柔らかな感触と……その中で微かに突起したやや硬めの部分……こ、コレって、あの、つまり……


「……今日……カイトが来てくれて……本当に……嬉しい」

「……」


 アイシスさんが話している言葉が全く頭に入ってこない。

 もう俺の理性は崩壊寸前であり、アイシスさんから漂ってくる花の様な香りと、肩に乗せられた柔らかい頬に全神経が集中してしまっている。

 頭はのぼせた様にボーっとし、アイシスさんに掴まれていない方の手が無意識に動き始め……


「……来て……くれないかと……思ってた」

「……え?」


 告げられた寂しげな声に、動きかけていた手が止まる。


「……カイトは……そんな人じゃないって……信じてた……けど……どうしても……不安だった」

「……アイシスさん」

「……だから……本当に来てくれて……嬉しい……カイトと居ると……暖かい」

「……」


 幸せそうに俺に身を寄せてくるアイシスさん……その心の内にある孤独への不安を感じ、俺はアイシスさんに掴まれていない方の手で、自分の太ももを思いっきりつねる。

 アイシスさんの好意はとても純粋で綺麗な物。他者と触れあいたい、温もりが欲しい……

 クリスさんの様に打算があって色っぽい行動をとる訳ではなく、ただ純粋に傍に居たいと近付いてくる。だからこそこんなにも俺はドキドキしているんだと思う。


 ならそんな純粋な気持ちを、不誠実に汚して良い訳が無い……俺はアイシスさんの気持ちを裏切る様な事をしたくない。

 なので、とりあえず今は必死に持ちこたえよう……頑張れ、俺!



























「……で、あの……何でこんな状況に?」

「……背中……洗う……洗いっこ」

「……は、はぃ」


 どうしてこうなった? 

 神は俺にどこまで試練を与えれば気がすむのだろうか……本気で俺の理性を殺しにきているとしか思えない。


(別に私は何もしていませんが?)


 気が散るから黙ってろ天然女神。


 当り前の様に心の声に反応した天然女神に切り返しを放つと、丁度そのタイミングで俺の背中にスポンジの様な感触が触れる。

 この世界にスポンジその物は存在しないが、似た素材が有るみたいで、入浴の際はそれを利用して体を洗う。

 名称はなんだったっけ? 俺と楠さん、柚木さんは普通にスポンジと呼んでいるので、正式名称は忘れてしまった。


 ともあれそのスポンジで、アイシスさんは俺の背中を丁寧に擦ってくれる。

 手つきは優しく、時々アイシスさんの長い髪が肌に微かに触れ、その度にドキドキしてしまうが……心持が変わったお陰か、先程までよりは落ち着いて穏やかな気持ちで……


「……あっ……ごめん……落とした」

「~~!?!?」


 ポロっと俺の前にスポンジが転がり、アイシスさんは俺の後ろから手を伸ばしてそれを拾おうとして……俺の背中に密着した。

 肌の触れる感触、少し低めの体温は火照った身体に心地良く、一気に体に熱が集まる。


 しかもアイシスさんはスポンジを拾うのに少し苦戦したみたいで、体が何度も動き背中に触れた胸が上下する。

 ここは天国か、はたまた地獄か……もはや俺はオーバーヒート寸前である。


「……拾えた……前も……洗う?」

「だだだ、大丈夫です!?」


 前は不味い、大変不味い……今はタオルで上手く隠しているが、俺も健全な男。

 アイシスさんの様なとびっきりの美少女と密着していては、どれだけ理性を必死に繋ぎとめようとも、体の一部は自然に反応してしまう。


 アイシスさんの言葉に全力で首を横に振ると、アイシスさんは少し首を傾げたが、そのままお湯で背中を流してくれた。

 よ、よし、何とか乗り切れた……頑張った。俺、超頑張った。


「……じゃあ……交代」

「……は?」

「……洗いっこ……今度は……カイトの番……」

「……」


 ……そういえば、最初に洗いっこだって言ってた様な気がする。

 え? うそ? 俺が、アイシスさんの背中を洗う? 今でさえいっぱいいっぱいなのに?

 で、でも、たぶんここで断ったりしたら……凄く悲しそうにするだろうし、こ、断れない!?


 茫然とする俺の気持ちには気付かず、アイシスさんは当り前の様に俺と入れ替わりで座る。

 てか、アイシスさん!? 前、隠して!? 何か小さくピンク色のものが見えてるから!?


「……カイト?」

「ストォォォップ! 振り向かないで下さい!! ちゃんと、洗いますから!!」

「……うん」


 ……もってくれよ俺の理性……鼻血とか出すなよ……

 ああぁぁっ!? 肌柔らかいし、すべすべだし、とんでもなく綺麗だし……これ、本当に凄まじい苦行だ……無心だ。無心で洗うんだ。


「……んっ……ぁっ……」


 だから色っぽい声出さないで貰えますか!? 本気でやばいので!!


 拝啓、母さん、父さん――まさか、まさかの展開でアイシスさんと一緒にお風呂に入る事になった。アイシスさんのガードは緩々で、本当に、もう、疲れが癒えるどころか――頭がショートしそうなんだけど!?















お色気回である。

前回混浴が決定した瞬間に、一気に増えたブクマ……私、正直な子、好きです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
つまりカイトの理性を殺すから「死王」なんだな
[一言] まぁ、ノクじゃないから いくら女の子が複数主人公の事を好きになっても明確な何かがないとねぇ?( -∀-)
[良い点] やはり死王という名は伊達ではない。彼女は確かに色んな死を運ぶ存在です ごちそうさまでした! [一言] なるほど、確かに私はこの小説を初めて読むのはクロとアイシスが居たから。しかし良いセン…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ