ナイトマーケット②
イルネスさんの転移魔法で移動した場所……魔界だとは思うのだが、その辺りかまではわからない。目の前には大きな洞窟の入り口? いや、トンネルのようなものが見えた。
「ここを抜けた先がぁ、ナイトマーケットの開催場所ですよぉ」
「ここって、魔界で言うとどのあたりなんですか?」
「魔界西部ですねぇ。周りの山と~地形の関係上~ここはぁ、一日のほとんどがぁ、日陰になる場所なんですよぉ。夜なので見えにくいでしょうがぁ、周囲には~大きな山が囲むようにありますよぉ」
なるほど、なんかいかにも穴場という場所ではある。説明を聞きながらイルネスさんに続いてトンネルに入る。暗いが足元には照明魔法具があって、道は照らされているので普通に歩く分には問題ない。
そのまま少し歩くと前方に光が見え、トンネルと抜けると……そこはまた不思議な光景が広がっていた。
イメージとしては夜にやっているフリーマーケットのような感じだろうか、道の両わきにズラっといろいろなものが売られているのが見える。
それなりに賑わっているみたいで、結構の人がいるが……なんか、リッチっぽいガイコツとか、悪魔みたいな羽がある人とか、あまり王都などでは見ないような姿の人が多い。
「凄いですね。かなり規模もありそうな感じで……」
「エリアごとにぃ、ある程度分かれていますぅ。入ってすぐの場所は~日用品が多く置いてありますねぇ」
「なるほど、イルネスさんはなにを買うんですか?」
「食材をいくつか~急ぐ必要があるものではありませんのでぇ、他の店も見ながらで大丈夫ですよぉ」
イルネスさんは初めてナイトマーケットに来る俺のために、自分の買い物は急がないので他の店を見ながらで問題ないと言ってくれた。
せっかくなのでその厚意に甘えさせてもらうとして、日用品を扱っているというエリアを眺めていくことにした。
するとさっそくひとつの店に、気になる品があった……なんというか、ガイコツのフィギュアのようなものや、骨でできたインテリアっぽいものが並んでいた。
「おっ、兄ちゃん人間族かい? どうだい、なにか買ってくかい?」
「う~ん、なにかオススメとかは?」
店主っぽい方が話しかけてきたのでオススメ商品を聞いてみる。ちなみに店主もガイコツである。
「この辺りなんか、美男美女揃いで、飾ると華があるぜ」
「……な、なるほど……」
知らなかった……ガイコツに美男美女とかあるのか? え? どのあたりが? なんかしゃれこうべの形状とか、そういうのに差があるの?
正直美男美女以前に、性別すら見ただけじゃわからないんだけど……。
いきなり種族としての常識の違いを感じる言葉に戸惑いながら商品を見ていると、ふと見覚えのある方……ゼクスさんっぽいフィギュアがあるのに気づいた。
「あれ? これってもしかして……」
「おっ、やっぱり人間族でもゼクス様は知ってるか? どうだい、よくできてるだろ? ゼクス様のダンディーな顔を精巧に表現できてる自信作さ」
「は、はぁ……」
分かんねぇよ! というか、ゼクスさんの顔立ちがガイコツ界ではダンディーって評価なのすら、今初めて知ったよ!!
「……そ、その、どれもいい出来なんですが、ちょ~っと、俺の部屋の雰囲気には合わないかなぁって……」
「そうかい? それは残念。また気が変わったら買いに来てくれよな」
「は、はい」
誤魔化すように告げて店先から離れ、少し歩いてからイルネスさんに小声で話しかける。
「……イルネスさんは、違いとか分かります?」
「詳しくは知りませんがぁ、骨の色合いなど~複数の要素で判断するらしいですよぉ」
「そ、そうなんですね。俺には正直、どれも同じようなガイコツにしか見えませんでした」
「くひひ、私も~同じですよぉ……インテリアでしたらぁ、あちらの店はいかがですかぁ?」
イルネスさんの示した方向に視線を向けると、これはまた特徴的な店があった。なんというか……店主がめっちゃデカいフクロウなのだ。
凄いな、ファンタジー感が半端じゃない……。
「いらっしゃい。人間の客は珍しいねぇ……おや、興味深そうな顔をしているね。ホロロ族を見るのは初めてかな?」
「ええ、すみません。住んでる場所の街中とかだとあまりにかけない姿だったので、少し驚いてしまいました」
「ホロロ族は基本的に夜しか活動しないし、人界にはほぼ住んでないから無理もないさ。それより、よかったら見ていってくれ」
「はい。コレは……羽根飾り?」
「特殊な加工をした羽根で、風が吹くと綺麗な音が鳴るんだよ。窓際に飾ったりするといい音が鳴るよ」
風鈴みたいな感じかな? 大きさも手頃だし、どんな音が鳴るかちょっと興味がある。
「いくらですか?」
「ひとつ7R、ふたつ買うなら10Rにまけとくよ」
「それじゃあ、ふたつください」
「はいよ~」
面白そうだったので、ふたつ購入して連取にお礼を言ってからイルネスさんと共に移動する。
その途中で今買ったインテリアのうち、のひとつをイルネスさんに差し出す。
「イルネスさん、よかったらどうぞ」
「よろしいのですかぁ?」
「はい。せっかくですし、一緒に着た記念ということで」
「それではぁ、ありがたくいただきますねぇ。音が鳴るたび~カイト様とここに来たこと思い出せるのはぁ、素敵ですねぇ」
本人にとっては何気ない一言だったのだろうが、イルネスさんって不意にドキッとするようなことを言うので、なんというか少し照れください。
ただ、微笑むイルネスさんの表情は温かく、なんというか……優しさが溢れているような、母性的な感じがした。
シリアス先輩「なんとなく、愛情たっぷりの微笑みで快人を見てるイルネスが想像できる。たぶん快人と店主のやり取りも微笑ましげに見てたんだろう……くそがっ!」
???「ほぅ……冷静に分析しつつも、甘くなりそうな気配を感じて悪態をつく。分析力を発揮しつつも己の本来の役割は忘れていないとは……いつも通りっすね」
シリアス先輩「……その前振りって……『成長しましたね』って括るパターンのやつじゃないの?」
???「……まるで成長していない」
シリアス先輩「それは完全に別のやつじゃねぇか!?」




