ナイトマーケット①
光永君に手紙を出して数日経った日の夜。俺は他の手紙と共に届いた光永君からの手紙を確認していた。
といっても、内容は単純で以前同行者をひとり連れて行っていいかと尋ねた件の返事で、連れて行っても問題ないとのことだった。
なので俺は改めて、返事の手紙を書いて、それを書き終えたあとで立ち上がる。
時刻は夜なので、もう手紙を出せる時間ではないので手紙は明日アニマに預けるとして、先にしておかなければならないことがある。
そう、俺も日々成長している。ここで、リリアさんにちゃんと報告しておかないと、待つのは厳しいお説教である。ふふふ……抜かりはない。
意気揚々と部屋を出てリリアさんの屋敷に向かった俺は……数分後、軽く肩を落として自分の家の方に戻っていた。
そういえば今朝の朝食の時、王宮の方でロータスさんやダリアさん……つまり、両親の結婚記念日なので、王宮の方で夕食を食べてそのまま泊ってくると、そう言ってた。というか、夕食の時もいなかったんだから気付けよ俺……。
……ううむ、仕方ない。報告に関しては、明日にするとしよう。
そう考えて廊下を歩いていると、ふと前方からイルネスさんが歩いてくるのが見えた。いや、別にそれ自体はおかしくないのだが、歩いてくるイルネスさんは白いシャツに黒のロングスカート、上品なカーディガンを羽織った私服姿だった。
「こんばんは、イルネスさん。どこかにお出かけですか?」
「こんばんはぁ、カイト様ぁ。はいぃ、少し~買い物に行こうかと思いましてぇ」
「か、買い物? この時間から、ですか?」
私服ということは外出するのかと思って尋ねてみると、肯定の言葉が返ってきたが……いまはもう、夜の8時である。
当たり前だが、この世界にコンビニなんてものは無い。この時間帯に開いているとなると、それこそ一部の飲食店ぐらいではないかと思う。
「今日は~『ナイトマーケット』がある日なのでぇ、そちらに行くつもりですよぉ」
「ナイトマーケット?」
「はいぃ。魔界で開かれるマーケットですよぉ。夜行性の種族が集まって開くマーケットでぇ、月に二回程度の頻度で開催されていますぅ。いろいろと~特殊な品も販売しているのでぇ、そこでしか買えないものも~多いんですよぉ」
「なるほど……」
そういうのがあるのか……確かに魔族はいろいろな種族が居るわけだし、当然夜行性の種族だっていてしかるべきだろう。
そんな夜行性の種族が開く少し特殊なマーケット……正直ちょっと興味ある。なんか一種の隠しイベントみたいというか、ここでイルネスさんに聞かなければ知る機会が無かったんじゃないかと思うレベルなので、見て見たいという気持ちがある。
そんな俺の考えを察したのか、イルネスさんは微笑みを浮かべてながら口を開く。
「興味があるようでしたらぁ、カイト様も~一緒に行きますかぁ?」
「え? いいんですか?」
「はいぃ」
「じゃあ、是非……支度してきますね」
「それではぁ、玄関前でお待ちしておきますので~用意が出来ましたらぁ、お越しくださいぃ」
「分かりました。出来るだけ早く準備します」
イルネスさんの提案はまさに渡りに船であり、ナイトマーケットに興味があった俺としては、知識のあるイルネスさんと一緒に行けるのはありがたい。
イルネスさんを待たせても悪いので、早足で部屋に戻り、手早く着替えと支度をして玄関に向かう。イルネスさんは玄関を出てすぐの場所にいて、夜空の月を見上げており……月明かりに照らされたその姿は、驚くほど美しく、思わず息を飲んでしまった。
するとそのタイミングでイルネスさんが俺に気付いたみたいで、顔をこちらに向けてくる。
「準備はできましたかぁ?」
「あ、はい。バッチリです」
「それでは~参りましょうかぁ」
「はい。あっ、えっと、いまさらですけどイルネスさんの私服姿は見かける機会は少ないですけど、いつもセンスがよくて素晴らしいと思います。今日の服も落ち着いた雰囲気がイルネスさんに凄く似合ってますよ」
「くひひ、ありがとうございますぅ。カイト様も~とってもぉ、素敵ですよぉ」
俺の言葉を聞いて、特徴的な笑みを浮かべつつ、それでいて穏やかな言葉を返してくれるイルネスさん。それこそ、俺の知り合いの中でも下から数えたほうが早いぐらいに低身長なイルネスさんではあるが、仕草とか雰囲気とか、不思議とすごく大人っぽくて……なんというか、出来る大人の女性ってイメージが強い気がした。
そんなイルネスさんとのナイトマーケットでの買い物……正直に言えば、かなり楽しみである。
~分かりやすい前回のあらすじ~
正義さん「僕の出番、どれぐらいぶりか……わかる?」
シリアス先輩「なっ、お、お前は……」
正義さん「明確にその場にいるって表現があったのは、661話の勇者祭のシーンやね。それ以外やと、新築パーティとかにも呼ばれてたかもしれんけど、表記はない。まぁ、作中時間で言えば2年ほど経過しとるわけや」
シリアス先輩「……」
正義さん「ほんなら台詞は、どんぐらいぶりか分かる?」
シリアス先輩「そ、それは……えっと……」
正義さん「しゃぁない、よう分かるように、キミらの長さ(現実時間)で、教えたげるわ」
シリアス先輩「ッ!?」
正義さん「……5年半や」
シリアス先輩「……なん……だと……(し、信じられない、なんだこの圧倒的な不遇力は……か、勝てない)」




