結婚式参加の準備⑤
目的のカフェに辿り着いて席に座る。中央区画の高級カフェということもあり、中は高級感がありつつも落ち着いたいい雰囲気の店だ。
陽菜ちゃんはさっそくフルーツパフェを注文し、俺と葵ちゃんはケーキセットを頼んだ。
「……陽菜ちゃん、それ全部食べれるの?」
「はい! 全然余裕ですよ!」
こうして改めて見るとパフェって結構なサイズだが、陽菜ちゃんは全然余裕とのことでニコニコと楽しそうな笑顔を浮かべながらパフェを食べていて、非常に微笑ましい。
葵ちゃんは上品にケーキを一口食べ、紅茶も一口飲んだあとで口を開く。
「光永くんの結婚式……どれぐらいの参列者が来るんでしょうね?」
「う~ん、やっぱ貴族が多くなるのかな? カトレアさんの関係でライズさんも来るだろうし、となるとライズさんの関係で結構多くなるかもしれないね」
いちおうは子爵の結構式ということだが、同時に王族の結婚式……それなりの規模にはなるだろう。となると招待されている人も多いだろうし、貴族となった光永君にとってはコネクション作りとかでも重要なんじゃないかと思う。
「ビックネームの人とかも来たりするのかな?」
「……快人先輩が、それ言いますか?」
「……貴族にとっては、快人さんが一番のビックネームでは?」
実に、実に鋭いツッコミである。いや、たしかに、なんか俺のことは貴族の間では結構広まってるらしい。情報的な意味でも、六王祭で脅しをかけてたヤバい神的な意味でも……。
買い物を終えて家に帰った後は、アニマが部屋に届けてくれていた手紙を確認していた。
「……うん? これは……?」
ただ、今日はちょっと珍しい相手からの手紙が届いており、少し驚いた。そして、手紙を開いて内容を読んで……再び驚愕することになった。
手紙には、どこで知ったのか光永君の結婚式のことが書かれており『可能であれば自分も参列したい』という風に書かれていた。
まさかの展開だが、ど、どうなんだろうこれ? このタイミングで参列者の追加とか聞くのだろうか? う、う~ん……いちおう光永君に伺いの手紙を出してみるか……。
シンフォニア王国の王都からやや離れた場所にある街、そこの領主も兼ねる子爵の屋敷では、当主である光永正義が手紙を手に考えるような表情を浮かべていた。
するとそこに、正義の婚約者であるカトレアが入室してきた。
「セイギ、式で使う品のリストを……って、どうかしたんですか?」
「ああ、カティ。実は、いま宮間さんから手紙が届いて……可能ならひとり同行者を連れて行きたいって話なんだけど……」
「了承しましょう! 願ってもない話です!!」
「うぉっ、そ、そんな食い気味に?」
正義の言葉を聞くや否や、カトレアはかなりの勢いで反応した。驚く正義に対し、カトレアは極めて真剣な表情で告げる。
「いいですか、セイギは……というより、当家はまだ貴族としての年数が浅いのです。セイギは私との婚姻もあって、本来移住者に与えられる名だけの爵位ではなく領地も合わせて与えられ、子爵家を立ち上げたわけです」
「う、うん」
「ですが、やはり歴史ある貴族等と比べると、どうしても見くびられる部分があります。なので、出来ればこの結婚式である程度のコネクションは形成したいと思っていたのですが……」
そこで一度言葉を区切ってから、カトレアは正義の手元にある手紙の内容を確認して言葉を続ける。
「ミヤマ様の同行者となれば、有名な方である可能性は十分にありえます。例えば、六王様だとか最高神様だとかであれば最高ですね。その方々が結婚式に参列してくれたとなれば、かなりの箔が付きますし、当家との付き合いを望む貴族も増えるはずです」
「なるほど……」
「ミヤマ様と友好的な関係を築く上でも、今後に備えた箔付けという意味でも、当家には得しかありません。一名分の追加なら、手間もほぼかかりません」
「ふむ、僕としても宮間さんの頼みごとを無下にする気もなかったし……それなら、連れてきてもらって大丈夫って返答しておけばいいかな?」
「ええ……あとは、誰を連れてくるのか……ですね。六王幹部以上の方であればありがたいのですが、こればかりはミヤマ様次第ですね」
ともかく快人の希望である同行者をひとり連れてくるということ自体は問題ない。正義は手早く手紙の返事を書くと、使用人にそれを送っておくように頼む。
「……まぁ、宮間さんの件はまた話すとして、式で使う品のリストだっけ?」
「ええ、いくつか相談したい部分があるのですが、まず料理の……」
異世界に着て三年、貴族となってから二年が立ち、以前より遥かに成長した正義は、カトレアから受け取ったリストを見ながら、どこか穏やかな表情で式について話し合っていた。
【祝・光永正義278話(2017年1月27日)以降、959話(約5年半)ぶりの台詞】
シリアス先輩「……不遇過ぎるだろコイツ……5年半も台詞なかったのか……(戦慄)」




