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次の厄介事がやってきたよ

本日は二話更新です。こちらは二話目なのでご注意を。



 嵐の様なメギドさんの襲来から1日経ち、水の月17日。

 メギドさんは好きなだけ騒いだ後「また来るぜ」と告げて去っていった……本当に嵐みたいな方だ。


 水の月16日は平穏な一日だったので、今日も平和に過ごせるかと思ったが……どうもそういう訳にはいかないみたいだ……


「どうぞ、ご主人様。紅茶です」

「え? あ、あぁ……ありがとう」

「ご主人様、クッキーをお持ちいたしました」

「……あぁ、うん。その前に、一つ聞いて良いですか?」

「「なんでしょう?」」


 左右から差し出された紅茶とクッキーを戸惑いがちに受け取った後、俺はそれを出してきた……メイド服を着た二方に視線を動かす。

 正直まったく状況が分からない。何でコイツ等がメイド服を着ているのか、俺をご主人様と呼ぶのか全く分からない。


「……なんで、ここに居るんですか? 『イータさん』『シータさん』……」

「ご主人様、敬称など不要です。どうぞイータとお呼びください」

「私も、シータと呼び捨てにして下さい」

「……ああ、うん。それで、イータとシータはなんで、俺をご主人様って呼ぶの?」


 そう、以前襲撃をかけて来た赤い髪の双子……イータとシータは、何故か今朝方メイド服でアルベルト公爵家を訪れ、現在何故か俺の事をご主人様と呼んでくる。

 なんでそうなっているのか、さっぱり分からなくて尋ねてみると、イータとシータは俺の前で片膝をつき頭を垂れながら言葉を返してくる。


「この命はご主人様に拾われました……なれば、この先、拾っていただいた命はご主人様の為に使わせていただきたいと思います」

「ご主人様に仕えます。尽くします……全てを奉げます」

「……あ、うん、えっと……」

「き、貴様等……突然現れて、訳の分からん事を!」


 真っ直ぐに告げられる、俺に仕えたいという言葉に驚愕していると、アニマがプルプルと肩を震わせながらイータとシータに近付く。

 うん、険悪な雰囲気ではあるが……このままでは、状況に流されてしまいそうなので、是非アニマにビシッと言って貰いたいところだ。


 するとイータとシータは、アニマの方にも片膝をついたままで頭を垂れる。


「挨拶が遅れて失礼致しました『アニマ従士長』!」

「……じゅ、従士長?」

「従士長はご主人様の『一番の腹心』……色々指導して下さい」

「い、一番の腹心……」


 あ、駄目だこれ……アニマ、明らかに嬉しそうな顔してる。

 さっきからヒクヒクと口元が動いているし、頬も染まって幸せ絶頂みたいな顔をしている。


「……ご主人様を生涯の主と見定めるとは、貴様等も中々真に優れた人物を見極める目を持っている様だな……良いだろう! ご主人様の名に相応しい配下となるべく奮励努力せよ!」

「「はっ!」」

「……おい、こら……」


 もはや完全にイータとシータは俺に仕えるつもりらしく、今さら止めた所で聞いてくれなさそうだ。

 ガックリと肩を落としながら溜息を吐くと、同じ様な溜息が聞こえて来た。


「……高位魔族級の配下が三体に、ベヒモス……もう、カイトさん一大勢力じゃないですか……本当にどうなってるんですかこの人は……」

「まぁまぁ、リリ。それだけカイトさんが魅力ある人物と言う事ですよ。それにこうして屋敷に実力者が多く滞在してくれるのは、利点でもあります」

「それは……そうかもしれませんけど……」

「気真面目すぎるのも問題ですよ。カイトさんの交友を利用してやろう、位の心構えでないと貴族の当主は務まりません。ほら、もっと自信を持ってしっかりと」


 頭を抱えるリリアさんを、隣に居たジークさんが優しく慰める。

 やっぱり幼い頃からの親友と言う事だけあって、二人の相性は良い様で、ルナマリアさんの様にからかったりはせず、優しくフォローを入れてくれるジークさんの存在は、リリアさんにとってありがたいものなのかもしれない。


 ジークさんのお陰で直ぐに冷静さを取り戻したリリアさんは、イータとシータに屋敷に住むのであれば、仕事も手伝って欲しいと持ちかける。

 イータとシータは、アニマ程苛烈な性格はしておらず、リリアさんの言葉に従い、他の使用人に連れられて仕事を覚える為に部屋から出て行った。


「……アニマ」

「は、はい!? も、申し訳ありません! ご主人様の意向を聞かずに勝手に……」


 イータとシータが出て言った事を確認してアニマの名前を呼ぶと、怒られると思ったのか、アニマはビクッと肩をすくめ慌てて片膝をつく。

 そんなアニマの様子を見て苦笑した後、俺は熊の耳が生えたアニマの頭に手を乗せて撫でる。


「言い忘れてたけど、一昨日はありがとう。アニマが来てくれて、助かったよ」

「ふぁぁぁ……ごしゅ、ご主人様、頭撫で……こ、光栄の極みです!」


 アレコレ暴走気味ではあるけど、実際アニマにはよくしてもらっている。

 その感謝を伝える思いで頭を撫でると、アニマは惚けた様な表情を浮かべて、目に涙を浮かべる……一々反応が大袈裟すぎる。


「……ああいう事をサラッと言ってしまうから、周りにどんどん集まってくるんですよ……」

「ジーク、貴女も大変ですね」

「その辺りはもう、覚悟してますよ」


 しばらく頭を撫でてから手を離すと、アニマは少し名残惜しそうな表情を浮かべたが、直ぐにやる気満々と言った様子に変わり「見回りをしてきます」と敬礼をして出て行った。

 相変わらずの様子に苦笑した後、リリアさんとジークさんの方を向いて口を開く。


「そう言えば、楠さんと柚木さん……後、ルナマリアさんは?」

「アオイさんはもっと魔法を学んでみたいという事なので、魔法学校に講義を聞きに行ってます。ヒナさんは、恒例ですが走りに行ってますね。ルナは郵便物を受け取りに行っています」

「へぇ、楠さんは魔法学校に行ってるんですか?」

「ええ、紹介状を書きました。入学したいという訳ではなく、講義を聞くだけみたいです」


 楠さんはどうやら魔法学校に言ってるらしい、元々土属性の魔法に大きな才能のある楠さんが、本格的に学ぶと結構凄い事になりそうだ。

 そして柚木さんは……まぁ、いつもの事だが走りに行ったらしい。本当に元気だなぁ……


 っと、丁度そのタイミングで大量の手紙を抱えたルナマリアさんがやって来た。

 リリアさんはそのとんでもない数の手紙を見て、嫌そうな表情を浮かべる。


「ルナ、それはまさかまた……」

「お嬢様宛の物も多いですが……半分程は『ミヤマ様宛』です」

「へ?」


 また以前みたいにリリアさんに大量の手紙が来たかと思ったが、どうやら半分近くは俺宛らしい……なんで?


「カイトさんに、ですか?」

「ええ、大半は貴族ですね。ミヤマ様は宝樹祭の件から有名になってきてますし、交流を持ちたいという貴族も多いのでしょう」

「……えぇ、俺、そういうのはちょっと……」

「ええ、そう言うだろうと思って、その手の用件の物は中を確認した上で、こちらで破棄しておきます」

「助かります」


 正直貴族との交流とかは、本当に気が進まない。

 皆が皆リリアさんみたいな人なら良いんだが、ガマガエル伯爵とか、そういうのは面倒くさそうだし……


 ルナマリアさんは俺を安心させるようにこちらで処理しておくと伝えた後、リリアさんの前に一通の手紙を置く。


「お嬢様、王宮からの手紙です……しかも、国王陛下のサインが入っている上、ミヤマ様宛です」

「……兄上、また馬鹿な事を考えているんじゃ……カイトさん、中を見ても構いませんか?」

「ええ、お願いします」


 例のシスコン国王から、何故か俺宛に手紙が来ているみたいで、リリアさんは怪訝そうな表情を浮かべて中を確認して良いかと尋ねて来る。

 俺がその言葉に頷くのを確認してから、リリアさんは手紙の封を開けて読み始め……少しして首を傾げる。


「……どういう事でしょう?」

「お嬢様? 一体何が書かれていたんですか?」

「ええっとですね……要約すると、以前はカイトさんに無礼な行いをしてしまい、本当に申し訳ありません。直接会って謝罪をしたいので、是非一度王宮に足を運んでいただけませんか? と言う内容です」

「……はい?」


 正直何を言っているのか直ぐには分からなかった。

 以前無礼な行いをした? 何の事……ああ、ひょっとして夜会の招待状が来なかった件だろうか? 

 にしても、なんで今さらそんな事を?


「……ルナ、何か知っていますか?」

「私が掴んだ情報によりますと、例の一件以降、王宮に冥王様が寄り付かなくなり、国王陛下の立場がかなり悪くなっているみたいです。そしてつい先日、界王様が王宮を訪れ、その件で国王陛下を厳しく非難したとか」

「ルナマリアさん……何でそんなことまで知ってるんですか?」

「王宮にも『同士』は数多く存在しますので、そちらからの情報です」


 同士と言うと、それはつまりクロの信奉者って事かな? 成程、ルナマリアさんがやたら情報通なのは、他の信奉者から情報を得ていたからか……

 しかし、それにしても……


「俺、別にあの事は気にしてないんですけど……」

「カイトさんがそうでも、周囲の印象的にはそうは見えないのでしょう。今や、カイトさんは王宮も無下にできない存在ですし……明確に謝罪を行って、印象を回復させたいのでしょうね」


 と言うか、リリウッドさんもクロも一体何をやってるのか……特にリリウッドさん、王宮訪れて厳しく非難したって……どうしてそんな状況に……

 けどこれは、う~ん……国王に関しては別にどうとも思っていないけど、ここで俺が断ると国としてのメンツみたいなのが不味くなりそうだし、リリアさんとしても兄の立場が悪くなるのは良い気分ではないだろう。


「……分かりました。後日行きますと、返事してもらえますか」

「分かりました。その時は私も同行しましょう」

「助かります」


 と言う事で、リリアさんと共に後日王宮を訪れる事が決定した。

 そしてその後で、ルナマリアさんは何通かの手紙を俺の前に置く。


「後、重要そうなのはこちらですね」

「えっと……どれどれ?」


 置かれた手紙を見てみると、まず一通目は……ノインさんからだった。

 そう言えば以前文通をしようと言う話になったっけ? うん、コレは後で読んで返事を出そう。


 そして二通目……何やらピンク色で、ハートマークの付いた封筒。

 なんだコレ? ま、まま、まさかラブレターってやつなんじゃ……


 情けない話であるが、俺は今までそう言った手紙をもらった経験は無いので、初めて手にするラブレターっぽい手紙に思わず生唾を飲んでしまった。

 そして、緊張しながらそれを裏返すと……差出人の所に『クリス』と書いてあったので、即座に破り捨てた。


「……あの人は、本当に……」


 どう見てもハニートラップ的な手紙を破り捨て、大きく溜息を吐きつつ三通目を見ると……『手紙を破り捨てたカイト様へ』と書かれていた。

 こちらの行動を完全にお見通しな上で、一回ふざけた手紙を挟んでくるとか……本当にあの人が一番怖い相手かもしれない……


 拝啓、母さん、父さん――どうにも平穏に毎日を過ごすのは難しいみたいで、メギドさんが来てから直ぐに、王宮を訪れる事になったりと――次の厄介事がやってきたよ。

 





















 


冥王、死王、界王、戦王、幻王とは出会ったので……次は竜王ですね。

まもなく……快人がアイシスの居城に遊びに行き、魔界に訪れる話です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 謝罪する側の癖に呼びつけるとか、さすが駄王族。
[一言] 国王、謝罪の申し出までずいぶんと時間がかかったなぁ 「迅速に」と言われてから、物語中ではいったい何日たってるんだろう
[一言] 吾輩、鈍感系主人公嫌いだけど、カイトクンさんの鈍感は許せるんよな…なんでやろσ(-ω-*)
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