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俺の情報が広まっているらしい

本日は二話更新です。これは二話目なのでご注意を。

 王城に一泊する事になり、広く豪華な風呂に入浴を済ませ……本当に国賓用と思える程、広い部屋へ案内された。

 何もかもが豪華な上に、部屋の前には専属のメイドまで待機しているサポート体制。さ、流石王城と思うが、やっぱりこう言うのは落ち着かない。

 当然女性のアリスは別室であり、ベルも丁重に食事等を貰えているらしい……いや、実は当初世話に来た騎士を、ビンタで吹っ飛ばしたらしく、良く言って聞かせる事になったりした。


 そしてしばらく広すぎる部屋で過した後、クリスさんに呼ばれていたので、メイドの方に案内をしてもらってクリスさんの部屋に向かった。

 広い王城の最奥とも言える場所にある部屋へ辿り着くと、メイドの方は一礼をして去っていき、残された俺はやや緊張しながらノックする。


「クリスさん、宮間です」

「ああ、ミヤマ様、すみません今……ああ、いえ、どうぞ入って下さって結構です」

「うん?」


 何か妙な言い方だった気がしたが、すぐにカチャリと鍵が開く音が聞こえ、少し疑問を感じながらも扉を開く。

 そして中に入ると、想像通り中にはクリスさんが居たが……その様相は想定外だった。


「……なっ!? え?」

「すみません、ミヤマ様。今『着替え中』でして、すぐ終わりますので、そちらの席でお待ち下さい」


 中に居たクリスさんは、白磁器の如く白く美しい肌を露出させ、胸元を隠す上品な布に手をかけている最中だった。

 思考が止まってしまいそうな程扇情的な光景であり、駄目だとは思いつつも視線は控えめな膨らみに向かってしまう。

 って、待て待て!? それより……


「なっ、なっ……って、え? じょ、女性!?」

「……おや?」


 俺が口にした言葉を聞き、クリスさんは一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、何やら考える様に顎に手を当てる……いや、その前に服着て下さい。

 その動きでようやく思考が正常に戻ってきた俺は、大慌てで部屋から出る。


「失礼しました!?」


 急いで外に出て扉を閉めて肩で大きく息をする。

 頭には先程見たクリスさんの肢体がありありと浮かび、本当に落ち着かない。

 これは、何て言えば良いのか……ともかくクリスさんに謝罪をしないと、いや、でも、ちょっと待てよ?

 よく創作物の世界ではノックや確認を忘れた主人公がこんな展開になる事があり、それはラッキースケベと呼ばれる訳だが……俺、ちゃんとノックしたよね?

 うん、間違いなくノックしたし、クリスさんの入って良いと言う言葉を聞いてから入室した筈だ。なのに、何でこんな状況になったんだ?


「ミヤマ様」

「は、はい!?」

「もう、着替えは終わりましたので、どうぞ」

「あ、は、はい」


 再び聞こえてきた声に、思わず背筋を伸ばしながら返事をして、何度か深呼吸をしてから再び中に入る。

 クリスさんは先程あった時の様な豪華絢爛な皇帝に相応しい衣装では無く、シンプルなドレスを着ており、衣服が変わっただけで印象がかなり違って見えた。

 短めに切られた髪と中性的な顔立ち、初めてあった時に男物の御者服を着ていた為に誤解していたが、こうしてみると完全に女性だ。

 よくよく思い返してみれば、クリスさんは自分を男性だとは一言も言って無いし、アリスも前皇帝の第三子とは言ったが、王子とは一言も言って無かった。


「クリスさん、本当にすみませんでした」

「え? ああ、構いませんよ……むしろ私の方が、『打算あり』で入って良いと言った訳ですし……」

「……打算?」

「ええ、着替えのタイミングでミヤマ様が来たのは偶然でしたが……ミヤマ様が私に欲情の一つでもしてくれれば、身を奉げて寵愛を得る事で、今後に有益な関係が築けるかと思いましたが……そもそも女性と思われていなかったとは、失敗でしたね」

「……」


 怖えぇよこの人!? あの一瞬でそんなハニートラップ仕掛けて来たの!?

 ほ、本当に自分を国を良くする為の道具としか思って無いみたいで……何と言うか、本当に油断のならない人だ。


「やはり、私の貧相な体では、あまりそう言った対象には考えられませんか?」

「い、いえ……えっと、そもそも男性と誤解していた俺が言っても信用ならないかもしれませんが、クリスさんは大変綺麗な人だと思います」

「ありがとうございます。ミヤマ様が六王様方に我が国の事を良く伝えてくれるのであれば、私の体を好きにしていただいても構いませんよ?」

「……い、いえ、遠慮しておきます」

「振られてしまいましたか、残念です」


 そう言って苦笑するクリスさんの表情は美しかったが……全部クリスさんの掌の上という感じがして、何とも居心地が悪い。

 というかこのままこの話を続けるのは不味い、主に俺の理性的な面で不味すぎるので、さっさと話を切り替えてしまう事にしよう。


「そ、そういえば、何かお話があると言っていましたが……」

「そうですね。ミヤマ様を口説くのはまたの機会にして、本題に移りましょうか……」

「そうしていただけるとありがたいです」

「ふふふ」


 うん、クリスさんは力とかそういう意味では無く、別の意味で恐ろしい人だ。

 何と言うか油断していたら、いつの間にか逃げられなくなっていそうな恐ろしさを感じる。

 まるでこちらを誘う様な艶っぽい微笑みを浮かべた後、クリスさんは表情を真剣なものに変えて口を開く。


「……私がミヤマ様のお耳に入れたい情報ですが……最近、ミヤマ様の情報が、広まっていると言う事です」

「え? 俺の情報?」

「ええ、と言っても詳細なものではなく、あくまで噂程度の……冥王様や死王様、界王様に気に入られた異世界人がいると言った感じでしょうかね」

「……それは、宝樹祭の件で少し有名になってしまったとか、そういう事では無くて、ですか?」


 少し雲行きの怪しい話になってきた気がする。

 俺の情報が広まっている……可能性として一番考えられるのは、宝樹祭で優勝してしまった事だが、どうもクリスさんの表情から察するにそういう事では無いみたいだ。


「……あくまで私の私観になりますが、恐らく違うでしょう。宝樹祭の参加者が広めたにしては、早すぎる上に具体性が無い」

「……」

「根拠はありません。ですが、私も若輩ながら謀略渦巻く中で生きて来た者です。だからこそ、直感的に感じるんです……広まっている情報は『作為的なもの』だと……」

「それは、つまり……俺の情報をわざと広めている何者かが居るかもしれないって事ですか?」

「ええ……目的は分かりませんし、どういった手段でこれだけ広く早く情報を広めたのかも謎ですが……一つ言える事は、この世界の者達にとって、ミヤマ様という存在の価値が知れ渡りつつあると言う事です」


 クリスさんは真剣な表情のままで静かに告げる。

 何者かが俺の情報を世界に広めている? それは一体何の為に? 分からない、これだけ頭の切れるクリスさんにも分からないなら、俺が考えた所で分かる筈もないのかもしれない。


「現在は本当に噂程度です。しかし、時間が経てば……愚かな事を考え始める者達も出てくるでしょう。十分に注意して下さい」

「……はい」


 俺が居心地の悪さを感じながら頷くのを見た後で、クリスさんは真剣だった表情を崩して微笑む。


「私に出来る事でしたら、可能な限り協力させていただきますし、国内の情報に関してもある程度は抑制できるでしょうし、情報の出所も探っておきます。ああ、もしシンフォニア王国に嫌気が差したら、こちらに滞在していただいても構いませんよ。誠心誠意歓迎致しますし、私の命に変えてミヤマ様をお守りする事を誓いましょう」

「……それは、打算ありで?」

「勿論。いっそ婚姻でも結びますか? 幸い私は独身ですし……そうすれば、ミヤマ様に手出しを出来る者は少なくなりますよ」

「遠慮しておきます」

「おや、また振られてしまいましたね。残念です」


 本当に油断ならない方だが、こう言う人だからこそ皇帝という職が務まっているんだろう。

 ただ、少なくとも俺を心配してくれている気持ちは本物みたいだ……打算はあるにしても。

 出会った当初よりもクリスさんを好意的に感じる反面、この人と話してる時は一瞬の油断も出来ないという危機感も感じてしまう……まぁ、もしかしたらこの考えすら、クリスさんの思惑通りなのかもしれないが……


 拝啓、母さん、父さん――クリスさんは頭が切れ、深謀遠慮に富んだ……正しく皇帝と思える人物だった。そしてそのクリスさんから聞いた話では、今、世界に――俺の情報が広まっているらしい。






















幻王「見てて気に入った子がいる。皆、聞いて、聞いて~」


もしかしたらこんな感じかもしれない。

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