表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の実力を持つ俺、学園で唯一の最低ランク〜誰にも理解されないまま無双してしまう〜  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/90

■後日談「その先にあるもの」

 春だった。

 風が、柔らかい。


 冷たさは残っているが、どこか優しい。


 街の色も、少しずつ変わり始めていた。


 木々に、小さな芽が出ている。


 花も、ちらほらと咲き始めている。


 何かが始まる季節。


 そんな空気だった。


 グレンは、一人で歩いていた。


 見慣れた道。


 見慣れた街。


 だが、今日は少し違う。


 背中に荷物を背負っている。


 軽くはない。


 だが、重くもない。


 ちょうどいい重さ。


 それが、妙にしっくりくる。


「……行くか」


 小さく呟く。


 その声には、迷いがなかった。


 前に進む。


 それだけ。


 後ろから声がする。


「本当に行くんだな」


 振り返る。


 レイヴンが立っている。


 腕を組んで。


 いつも通りの顔で。


「ああ」


 グレンは頷く。


「まあ、な」


 レイヴンは少しだけ笑う。


「止めても無駄だろ」


「当たり前だ」


 軽いやり取り。


 いつもと同じ。


 だが。


 その裏にあるものは、少しだけ違う。


 ナナが、静かに近づいてくる。


「……準備完了」


「おう」


 グレンが答える。


 セラも、後ろから歩いてくる。


「いいね」


 その声は、いつも通り。


 だが、少しだけ優しい。


 四人が揃う。


 並んで立つ。


 何も言わない時間が、少しだけ流れる。


 それで十分だった。


「……なあ」


 グレンが言う。


「なんだ」


「なんかさ」


 一拍。


「前も、こういうのあった気がする」


 レイヴンが少しだけ笑う。


「またそれか」


「いや、なんかこう」


 グレンは頭をかく。


「別れる感じっていうか」


「旅立つ感じっていうか」


 一拍。


「そういうの」


 ナナが言う。


「……ある」


「お前もかよ」


「分からない」


 一拍。


「でも、ある」


 セラが笑う。


「いいね」


 その言葉が、少しだけ響く。


 誰も覚えていない。


 何も思い出せない。


 それでも。


 “知っている”。


 その感覚だけが、残っている。


 その時。


 カイルが、ゆっくりと歩いてくる。


 少し遅れて。


 いつも通りの足取りで。


 何も変わらない。


 その姿を見た瞬間。


 グレンの中で、何かがほどける。


「……ああ」


 小さく息を吐く。


 理由は分からない。


 だが。


 “これでいい”と思える。


 カイルが、目の前に立つ。


 何も言わない。


 ただ、見ている。


 グレンを。


 そのまま、少しだけ間が空く。


 風が吹く。


 春の匂いがする。


 その中で。


 グレンが、口を開く。


「……行ってくる」


 シンプルな言葉。


 それだけ。


 カイルは、少しだけ頷く。


「ああ」


 それだけで、十分だった。


 レイヴンが言う。


「無茶すんなよ」


「分かってる」


 ナナが言う。


「……必要なら戻る」


「分かってるって」


 セラが笑う。


「いいね」


 グレンは、少しだけ笑う。


「なんだよ、それ」


 軽く肩をすくめる。


 そのまま、一歩踏み出す。


 道の先へ。


 振り返らない。


 そのまま、歩いていく。


 レイヴンたちは、その背中を見る。


 何も言わない。


 止めない。


 ただ、見送る。


 それでいい。


 それが、正しい。


 グレンの姿が、少しずつ遠くなる。


 小さくなる。


 やがて。


 見えなくなる。


 完全に。


 その瞬間。


 ナナが、小さく呟く。


「……また会う」


 レイヴンが言う。


「当たり前だ」


 セラが笑う。


「いいね」


 カイルは、何も言わない。


 ただ、空を見る。


 春の空。


 明るく、広い。


 その奥に。


 ほんのわずかに。


 “何か”が見える。


 終わりと。


 始まり。


 その両方。


 すべてが、繋がっている。


(……続くな)


 小さく思う。


 この世界は、終わらない。


 形を変えて。


 続いていく。


 それでいい。


 それがいい。


 レイヴンが歩き出す。


「行くぞ」


 ナナが頷く。


 セラが笑う。


「いいね」


 三人が動く。


 それぞれの方向へ。


 それぞれの道へ。


 カイルは、少しだけその場に残る。


 空を見て。


 風を感じる。


 そして。


 ゆっくりと歩き出す。


 どこへ行くわけでもない。


 ただ、進む。


 その足取りは、静かで。


 迷いがない。


 どこへ行っても。


 何があっても。


 成立させる。


 それが、自分だから。


 そのまま。


 街の中へ消えていく。


 春の中へ。


 光の中へ。


 そして。


 物語は、静かに終わる。


 だが。


 終わらない。


 どこかで。


 また。


 同じように。


 少し違う形で。


 続いていく。


 それが、この世界だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ