表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の実力を持つ俺、学園で唯一の最低ランク〜誰にも理解されないまま無双してしまう〜  作者: vastum


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/32

■第20話「回収対象」

 夜は、静かに降りていた。


 昼間の騒がしさが嘘のように、街は少し落ち着いている。とはいえ完全に静かになることはない。どこかで酒の音が鳴り、遠くで笑い声が響く。それでも昼とは違う、少しだけ張り詰めた空気があった。


 ギルドの二階、簡易の宿泊部屋。


 カイルは窓際に立ち、外を見ていた。


(……やっぱり来るな)


 視線ではない。気配でもない。だが、確実に“見られている”感覚がある。昼間の連中とは違う。もっと遠くから、もっと静かに。


 ノックの音がした。


「入るぞ」


 レイヴンの声だった。


 返事を待たずに扉が開く。相変わらず遠慮がない。


「起きてたか」


「まあな」


 レイヴンは部屋に入り、壁にもたれた。


 しばらく無言でカイルを見ていたが、やがて口を開く。


「単刀直入に言う」


 少しだけ声を落とす。


「お前、普通じゃねえ」


「知ってる」


「軽いな」


 ため息混じりに言う。


「だが、問題はそこじゃねえ」


 レイヴンは視線を窓の外に向けた。


「回収屋ってのはな、ただの傭兵じゃない」


「そうなのか」


「そうだ。あいつらは“組織”だ」


 その言葉には重みがあった。


 カイルは少しだけ興味を持つ。


「どんな組織だ」


「簡単に言えば、異常を集めてる連中だ」


 レイヴンは腕を組んだ。


「能力、体質、魔力、なんでもいい。普通の枠に収まらないものを見つけて、連れていく」


「何のために」


「そこまでは分からん」


 正直な答えだった。


「だが、一つだけ確かなことがある」


 視線が戻る。


「捕まったやつは、戻ってこない」


 部屋の空気が、少しだけ重くなった。


 カイルは黙っている。


「怖くねえのか」


 レイヴンが聞く。


「別に」


「そうかよ」


 苦笑する。


「お前らしいな」


 その時、扉がもう一度ノックされた。


 今度はグレンだった。


「入っていいか?」


「勝手に入れ」


「お前なあ……」


 ぶつぶつ言いながら入ってくる。その後ろからセラとナナも入ってきた。


「なんか重い空気だな」


 グレンが言う。


「いい感じじゃん」


 セラは相変わらずだ。


「話してたのは回収屋のことだ」


 レイヴンが説明する。


 グレンの顔が一気に引き締まる。


「やっぱりやばいやつらなのか」


「やばいどころじゃねえ」


 レイヴンは即答した。


「外でも、かなり上の連中だ」


「上ってどれくらいだよ」


「少なくとも、さっきのやつは一人でギルド中級クラスは潰せる」


 グレンの顔色が変わる。


「マジかよ……」


 セラは笑っている。


「いいね」


「よくねえよ!」


 ナナは静かに口を開いた。


「目的が分からないのが一番危険」


 全員がそちらを見る。


「理由がない行動は、止められない」


 確かにそうだった。


 利益や損得で動く相手なら、まだ読みようがある。だが、目的そのものが見えない場合、行動の予測ができない。


「まあ、だから厄介なんだよ」


 レイヴンが肩をすくめる。


「で、どうするんだよ」


 グレンがカイルを見る。


「どうって?」


「逃げるとか、隠れるとかあるだろ!」


「ないな」


「だろうな!」


 グレンは頭を抱えた。


 セラは満足そうに頷く。


「それでいい」


「よくねえって言ってんだろ!」


 カイルは少しだけ考える。


 回収屋。異常を集める組織。戻ってこない。


 情報としてはそれだけだ。


(……まあ、いいか)


 結論は変わらない。


「来るなら来るでいい」


 その一言で、部屋が静かになった。


 レイヴンが苦笑する。


「ほんと変わってんな」


「そうか?」


「普通はもう少し危機感持つ」


「持っても変わらないだろ」


 それは事実だった。


 グレンは言い返せず、口を閉じる。


 ナナは小さく頷いた。


「合理的ではある」


「合理的か?」


 グレンが疑問を投げる。


「結果が変わらないなら、前提も変えない」


 ナナは淡々と言う。


「カイルはそういうタイプ」


 セラが笑う。


「いいね、分かってきたじゃん」


「分かりたくなかった……」


 グレンは肩を落とした。


 その時だった。


 窓の外の空気が、わずかに変わる。


 カイルが視線を上げる。


 レイヴンも同時に気づいた。


「……来たな」


 低く呟く。


 気配が近い。


 さっきまでとは違う。隠す気がない。


 むしろ、見せている。


「おいおい、夜襲かよ」


 レイヴンが舌打ちする。


 グレンの顔が青くなる。


「もう来たのかよ!」


 セラは笑っている。


「いいね」


「よくねえって!」


 ナナは静かに立ち上がる。


「外」


 短く言う。


 全員が動く。


 廊下を抜け、階段を降りる。ギルドの一階は、すでにざわついていた。


 扉の外。


 そこに、一人立っていた。


 昼間の男とは違う。


 もっと静かで、もっと冷たい。


(……強いな)


 カイルは思う。


 今までで一番分かりやすい。


 危険だと。


「早いな」


 レイヴンが言う。


「準備してくるんじゃなかったのか」


「準備はしてきた」


 男が答える。


 その声には温度がない。


「観察も終わった」


 視線がカイルに向く。


「お前は確定だ」


「何がだ」


「回収対象として」


 グレンが一歩下がる。


「……冗談じゃねえ」


 男は気にしない。


「今回は連れていく」


 はっきりと言った。


 カイルは少しだけ首を傾げる。


「無理だろ」


「試してみる」


 短い返答。


 次の瞬間、空気が張り詰める。


 周囲の冒険者たちが一斉に距離を取る。さっきよりも速い判断だった。それだけ、この男が危険だと分かる。


 レイヴンが前に出る。


「今回は俺もいる」


「関係ない」


 男は淡々と言う。


「邪魔なら排除する」


 その一言で、場の空気が一段重くなる。


 カイルは一歩前に出た。


 視線がぶつかる。


 静かな圧。


「……いいな」


 男が小さく呟く。


「やっと“本体”か」


 意味は分からない。


 だが、軽い言葉ではない。


「来い」


 男が言う。


 それが合図だった。


 次の瞬間、空気が弾ける。


 戦いが始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ