表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偏差値70なのに恋愛経験0の二人の理性が崩壊するまで〜財前慶一郎と伊集院桜子の恋  作者: 間宮芽衣


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/42

第二十二話◇源氏の君と、テレビ電話。〜伊集院桜子視点


◇◇伊集院桜子視点


(──この例文、もう一生忘れませんわ。)


家に着いた私は、熱くなった頬を抑えながらほうっと息を吐き出しました。

………………………………………………

 She is cute, and what is more, she is beatiful.

(彼女は可愛らしい、その上、美しい。)


 Sakurako is the love of my life―what pi is to a circle.

(僕の人生に桜子さんが不可欠であるように―円にπが不可欠である。)

………………………………………………


──あの時。こう書かれたルーズリーフを見た瞬間、全身がカッと熱くなりました。


 …今もまだ思い出しただけ笑みが溢れてしまいそうになります。


 ついついこの例文に後押しされた私は、大胆な行動に出てしまいました。


『ふふっ、慶一郎様、大好きっ。』


自分からキスをした上に、大胆にも慶一郎様の腕にしがみついてしまったのです。


 照れたように耳を真っ赤にして顔を晒す慶一郎様の様子を思い出し、ぎゅうぎゅうとケロちゃんを抱きしめながらベッドの上でジタバタと悶えてしまいます。


(…い、いつか私も慶一郎様ともっと大人のキスをするようになったりしてしまうのでしょうか…。


 そ、そしてゆくゆくは慶一郎様が源氏の君のように私の部屋に忍んできて下さって…。)


『──桜子さん。綺麗です…。』


妄想の中で、何故か烏帽子に着物姿の慶一郎様が私の部屋の窓から忍び込んで来ます。


 ドキドキして顔を赤らめる着物姿の私の上に影が落ちるように身を屈めて、口づけを落としてきます。


 ──そしてついに慶一郎様のゴツゴツした指先が私の着物の襟元を…。


(きゃー!きゃー!!)


そんなはしたない妄想をして一人でゴロゴロベッドの上で転げ回っていると、ピロンと着信音が鳴りました。


 スマホを見ると、慶一郎様でした。


『今日はありがとうございました。

 お弁当、とても美味しかったです。

 ――次は僕にも是非ランチをご馳走様させてください。』


そのメッセージにジワジワと胸が喜びで溢れてしまいます。


(…お料理、本格的に習いに行こうかしら。)


そんな事を思いながら震える手で返信を打ちます。


『こちらこそありがとうございました。次回の勉強会も楽しみにしていますね。』


すると、直ぐに返信が返ってまいりました。


『はい。ありがとうございます。水曜日、僕の方から電話しますね。』


「──っ!!」


(慶一郎様のあの、低くて色気のある素敵なお声が聞けるなんて…!!)


私は再びケロちゃんを思いっきり抱きしめてしまいます。そして気がつくと無意識にこんなスタンプを送っていたのです。


 ──だいすき。


(…きゃー!!送ってしまいました!!)


その時、母に呼ばれました。

 

「桜子さーん!ご飯よー。」

「…はーい!只今参りますわ!」


私は慌てて階段を降りて行きました。


◇◇


「──桜子さん。今日は慶一郎さんとのお勉強会だったわよね?…どうだったの?」


食事の後、母・美智子の言葉に思わず顔がだらしなく緩んでしまいそうになります。


「…っ、はい!慶一郎様が勉強スケジュールをご提案下さいまして。とても有意義な時間を過ごせましたわ。」


「──そうか。楽しく過ごせたなら何よりだね。でも、桜子も遂に男性とデートするような年頃になってしまったんだね。」


父・雅臣が少し寂しそうな顔で言いました。


「いいじゃない。貴方。そもそも慶一郎君を選んだのは貴方でしょう?」


母の言葉に父が頷きます。


「ははっ。そうだった。桜子が幸せそうでよかった。」


「ええ。本当に。

 ──でも、桜子さん。受験まであと少しなんだから節度あるお付き合いにして頂戴ね?」


その言葉に私は一瞬固まってしまいます。


「…はい。」


「──まあまあ、美智子。ずっと会えてなかったんだから、舞い上がるのは当たり前じゃないか。


 でも、桜子。大学に受かるまではあくまでも成績が下がらないように自制しろよ。」


(そうでしたわ。

 ──成績が下がったら慶一郎様に会えなくなってしまうわ…!!)


私は父の言葉に真剣な顔で頷くとお茶を飲み干しました。


「では、そろそろ勉強して参りますわ。」


私は両親にそう宣言するとそそくさと自分の部屋に戻りました。


「…ふぅ。」


私は一人息を吐くと、勉強に取り掛かりました。


 けれど、頭には油断するとついつい帰り際、切羽詰まったように引き寄せてきた慶一郎様が浮かんできてしまいます。


 酷く扇情的な色気のある妖艶な表情で私の事を見つめていらっしゃいました。


(あの時、街宣車が来なかったらどうなってたんでしょうか…。)


口付けをしようと、顔の角度を傾ける慶一郎様。


「──っ、」


私は火照る頬を押さえながらそっと呟きます。


「…思へども なほぞあやしき 逢ふことの なかりし昔 いかでへつらつらむ。」


私は万葉集の村上天皇の詠んだ和歌を呟きました。


(どうしましょう。慶一郎様に会う前は、自分が一体どんな気持ちで過ごしていたのか、もう、思い出せませんわ…。)


◇◇

 

「おはよう、桜子!! 一昨日の財前君とデート、どうだったの?!」


教室に入ると朱里さんがワクワクした顔で声をかけてきて下さり、思わずジワジワと赤面してしまいます。


「…ご機嫌よう。朱里さん。

 その。大変有意義な時間でしたわ。」


そんな私に朱里さんが目を丸くしたあと、そっと耳元に口元を寄せてきます。


「…なぁに?その顔。


 ──もしかしてエッチでもした?」


その言葉に私の顔はボンっと沸騰します。


「っな!!…ちょ、そ、そんな!!

 そんな破廉恥なこと…。」


「えー、でも。ほら、本郷さんとかGWに彼氏と軽井沢で最後までしたらしいよ?」


(…えー!!!!!)


思わず本郷さんをバッと見ると、柔らかい顔で友達と談笑していらっしゃいました。


(う、嘘!!あ、あの本郷さんが?!)


私が必死で呼吸を整えていると、朱里さんが苦笑しました。


「…まあ、桜子にはまだ刺激が強かったかな?」


私はブンブンと首を振ると、朱里さんを見つめました。


「──朱里さんは、その。そういう事を付き合ってた方とした事はあるんですか?」


すると、朱里さんは少し目を見開いて黙り込んだ後、悲しそうに笑いました。


「…前付き合ってた人とね。そういう風になりかけたことがあったんだけど、勇気が出なくて。


 待っててもらったらさ。

 彼氏と同じ学校の女の子がいつの間にかそういう関係になってた。」


「──え。」


目を見開く私に、朱里さんがハッとしたように顔を上げました。


「…っごめん!朝からする話じゃなかったね。」


「──いえ。話してくださって、嬉しいです。

 辛かったですね。」


私が眉尻を下げると、朱里さんが黙った後、ふっと目元を綻ばせました。


「…もう大丈夫だよ。その時はショックだったけどさ。そういう人だったんだなって。」


「──そうですか。」


その後程なくして予鈴が鳴ったので私達は席に着きました。


 チラリと朱里さんを見ると、『何でもないよ。』とでも言うようにこっそりピースしてきました。


 私は何となくきゅっと胸が締め付けられるような気がしながらその日の授業を受けました。


◇◇


(──いよいよですわ!!)


 20時52分。


 私はドキドキしながら勉強机の上にスマートフォンを置いて椅子の上にソワソワと座っておりました。


 …今日は初めて慶一郎様がテレビ電話を下さる日なのです。


 ソワソワと手鏡を見て髪型が変になっていないか確認しながら電話をかかってくるのを待ちます。


 そして21時になった瞬間、着信音が鳴り『財前 慶一郎』と表示されました。


 慌てて通話ボタンを押すと、そこには緊張した顔の慶一郎様が映っておりました。


「っ、慶一郎様っ!」


私が思わずお名前を呼ぶと一瞬固まった後、蕩けるようにやっと笑って下さいました。


『──桜子さん。会いたかったです。』


その声に、その言葉に。


 自分の心が甘いもので満たされて、ふわふわと高く昇っていくのがわかりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ