要領を得ない話
「…ゴッドリープ様!キューケン様!」
遅れて、いつもの側仕えの教徒とキューのお目付役の教徒が来る。
いつもの側仕えの教徒は片足と片腕にほんの僅かだが痺れがあり、キューのお目付役の教徒は耳が若干遠い。
その境遇ゆえ自立は難しいだろうと長らく総本山に置いている二人。
付き合いが長いゆえに特に信頼している。
だが、キューのお目付役のこの教徒には少し色々聞かねばならない。
「キューは疲れているようだから、代わりに説明してくれるね?事と次第によっては…わかるよね」
「はいっ…」
「兄様っ…」
「キュー、まだ休んでいないとだめだよ」
キューは仲の良いその教徒を守りたいのか、身体を起こそうとするがオレが止める。
「じゃあ、お願い。怒らないであげて。守ってくれたの」
「守った結果がこれかい?」
「これは私の問題なのっ」
私の問題?
どういう意味かな。
「…兄様には踏み込まれたくないってこと?」
「違うっ…違うの、兄様、違うの…」
珍しく…いや、ここに来て初めてキューが泣いた。
ぽたぽた溢れる涙に焦る。
「ああっ…ごめんね、キュー。意地悪をしたいわけじゃないんだ。キューを責めてるんでもないよ。キューが言いたくないなら良いんだ」
「違う、違うの…あのね、キュー、難しくて。でもね、キューが言うから聞いて欲しいの」
キューが、あの聡明なキューが。
まるで年相応に泣いて、懇願して、混乱するままに話そうとする。
…聞いてやらねば。
「わかった、聞くよ」
幸い、オレとの付き合いの長い…と言ってもオレが五つの時からの付き合いだけれど…二人の教徒は空気を読んで黙っていてくれる。
「あのね、キューね…前世の、記憶があるの」
キューの口から語られるのは、本来ならばおおよそ信じられない話だった。
「キューね、キューね、前世で誰にも愛されなくて、やっと家を飛び出したら変な人に刺されたの、痛かったし怖かったの」
「…うん」
「それでね、そのせいで生まれ変わってもやっぱり愛されなくて、でもね、兄様に会えて嬉しかったの」
「うん」
「でね、でもね、やっぱり怖くてね、襲われて、血が出て、思い出して、怖くて」
要領を得ない説明だが、言いたいことはなんとなく汲み取れている…と思う。
「でも、兄様に心配かけたくなくて我慢して、でも息が上手くできなくなってはぁはぁしちゃったの」
おそらく過呼吸かな。
「でも兄様の顔がちらついて、だから意識を踏ん張ったの」
「うん」
「そうしてたら落ち着いたの、兄様のこと考えたら落ち着いたの」
…それに嬉しいと思ってしまうオレはだめな兄だな。
「だから大丈夫、その人怒らないで、叱らないで、意地悪しないで」
「わかった。今回は許すよ」
今回は、と付けたのは彼への忠告でありキューに嘘をつきたくないという気持ちの表れ。
とはいえ本当に、今回は罰することはしない。
何故ならば、キューの話を聞く限り…襲われたとかも問題なのだが、根本はそこじゃないからだ。




