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十三話【非凡の力①】

 あ、うでが、いた、い。


「─────ん、あ」

 俺は痛みと共に、覚醒した。

 目を開けると、そこは見知らぬ天井。

 病院ではない。


「……ワタル?」

 次に、辺りを見渡した。

 そこはちっこい部屋で、隣にはソフィアが座っている。


 ……どこ、だろうかココハ。

 というか、俺、なんでこんな状態になっているんだ?

 俺は、どこかも分からない場所のベットで横たわっていた。

 ベットの隣にある古臭いテーブルには、俺の日本刀が鞘に入って、袋と共に置いてあった。

 ─────思い出す。


「あ、そう、か。俺はショッピングモールで……」

 あの惨劇を思い出す。


 人々の屍で創り上げられた地面と、鮮血の海。

 それは、眼に焼き付いたかのように鮮明に俺の記憶(のうり)に残っていた。

 忘れることは、不可能だろう。

 取り敢えず、起き上がろう。


「わ、ワタル……あの、大丈夫?」

「っ、問題は、ない」


 右腕に激痛が走る。

 だが、まだその激痛は我慢出来る程度のモノだ。

 特に問題という程ではない。


「それにしても、ソフィア。……ここ、どこだ?」

「え? ここは隣町(あやば)の廃病院よ」

「廃病院? って……それにしては綺麗じゃないか?」

 俺は部屋一帯を見渡してそう言った。


 俺が横たわっているベットも、この部屋に設置してある家具も、置いてある百均などで売っているデスクライト。どれもかなり綺麗である。

 廃病院なんて要素(くうき)は、微塵もない。


 疑問一色の俺に、白い悪魔は普通に言う。


「まぁ、元々私が昨日までここに住んでいたんだもの」

「は?」


 馬鹿かコイツは。馬鹿なのか。

 ああ、そうか馬鹿なのか。


「え? 私、何かおかしいこと言った?」

「ああ─────言った。普通に言ってた、お前って、こんな廃病院に住んでいるのか? 嘘じゃなくて、本当に?」

「だからそうって言ってるでしょもう。ワタルは信じられないの? というかこんなってなによ、こんなって。私、かなしーんだけどー?」

「いや、そういう訳じゃあないけど……」


 それでも、驚く。

 廃病院に住んでいるって、どんな生活を送って生きてきたんだろうかコイツは。

 少なくとも、普通のニンゲンではない。

 待て。今はそんな話をしている場合じゃあないではないか。


 気絶する前の会話を思い出して、早急に話題を転換する。


「というか、俺って、ショッピングモールで気絶しちゃったよな。あの後、どうやって俺の事を連れて来たんだ?」

「……? そんなの決まっている。また私がワタルを担いで連れてきてあげただけよ」

 彼女はさも、それが当たり前だと言うかのように普通にそう告げた。

 ああ、俺はなんて無力なんだ。助けようと、手助けしようと走ったというのに、逆に俺は迷惑を掛けてしまっているではないか。馬鹿か、俺は。

 馬鹿なんて、コイツに言えないほどに、俺が馬鹿じゃないか。


「それは、すまない……」

「別に、それはワタルの所為じゃない。これは私が招いてしまった結果なんだ、し……」

 心なしか、昼のソフィアに比べて、今のソフィアの声は低かった。

 さっきの事を気にしているのか? なら、それはダメだ。

 というか、手間をかけさせてしまったのは、待っていろと言われた命令を無視して来た志摩弥(オレ)の責任だ。

 そう、言わば、俺は自業自得なのだ。

 俺は馬鹿だ。


「いいや、そんな事はない。逆に俺の方こそ、変に乱入しちまって、悪かった」

「……⁉ ワタル、まずは自分の身体を心配して。私の事情なんて、気にしなくていいの。貴方は、人間なんだから……。まずは、自分の保身を優先しなさい」


 また、だ。

 ソフィアのそのコトバに、違和感を覚えた。

 ああ、そうだった。確か、彼女は自分の事を天使と自称していたか。

 そうだった、忘れていた。


「……」

「─────」

 彼女はその真摯な眼差しで、本気で俺の事を正視する。

 その瞳に犯された人間(ヤツ)は、誰でも見入るだろうな。そう、魅力的で妖艶な彼女を見つめ返しながら、そう思った。


 彼女の瞳、黄金の瞳。

 それは本当に、”天使の眼”と比喩するに値する。

 こんな瞳で、そして、屈託のない笑顔で懇願されたならば─────断れるヤツはいないだろう。



 俺も、例外ではない。

 大きく目を閉じて、もう一度開く。

 そして。


「─────分かった、分かりましたよ。自分の身体を第一に動きますよ」

 そう空返事に等しい感じで、取り敢えずで、その場しのぎで言った。


 だって、そんなのムリだ。たとえ天使の様な美形なオンナに懇願されたとて。

 そんなの約束するのは、ムリだ。

 第一に、俺はあの惨状を見て理性(りせい)が崩壊してしまった。

 抑えられるはずの衝動(いかり)を解き放ってしまった。

 多分、この先も同じ様な場面に遭遇したとて、同じ結果になる。


 そうに、決まっている。

 だから、そんな心にもない返事しか出来なかった。

 すると─────彼女は、言い返してきた。


「ワタル、つまらない嘘はやめて。それは、とっっっても面白くないわ」

「─────あ」

 指摘される。昼に、俺が告げたコトバで。

 それはいともたやすく論破された。


「……」


 これじゃ、完敗ではないか。

 もう、言い返すコトバは思いつかない。

 どうすれば、いいんだ。

 もう一度の嘘で凌ぐか、本当の事を言うか。


 ……ここで嘘を言えば、もうそれはダメだ。

 男としても、人間としても、生物としても。


 正直に、話そう。


「……悪かった。だから、本音を言うよ。早速悪いけどさ、ソノコトについては、約束出来ない」

「─────」

 彼女は驚いた様な表情をする。

 俺は話を続ける。


「理由は一つだけだ。俺は、人が傷ついているの……いいや、命の恩人であるお前が傷つくのを見放す事なんて出来ない。傍観者は、俺にはムリなんだ」

「─────え?」

 彼女の顔が、少し変化した。


「そ、そう……? そんな、感じなんだ。人間って、不思議ね。でも、本当の緊急事態になったら、ちゃんと逃げてね? それじゃなきゃ─────」

「分かった、それは、約束する」

 ソフィアはそんな事を言って、納得してくれた様子。


 良かった、と。

 密かに安堵の息を吐く。

 ともかく、これで解決だ。


 次は─────。

「じゃあ、ソフィア。話してくれるか? お前が対峙してたアイツらについて」

「……そうね、貴方を巻き込んでしまったんだし」


 ◇◇◇

 廃病院の一室で、俺はベットに座りながら聞く。


「単刀直入に言うわ。貴方が倒したあの黒いローブのヤツが、私の言う魔源種(あくま)って存在よ」

「あく、ま……か……」

 あの黒いローブのヤツ。

 黒塊(バケモノ)の事。


 でも、よく分からない。

 あくま、と言われてもそんなに実感がわくわけでもない。

 なんとなく、頷ける程度の理解。

 正直、信じられない話だが。あの惨状を見た後ならば、信じざるを得ない。


 ……。


「そう、あれが魔源種(あくま)。ま、下位中も下位の堕族(ゴースト)とか言われる類だけども。貴方たち人間界のイメージに生きる悪魔という姿は、それこそ上位種よ」

 下位、堕族(ゴースト)、上位。

 多々不明な単語が連なって、脳が理解を拒んだ。

 追いつかない。


「えーーと、あれが堕族(ゴースト)っていう種類のアクマということは分かったけどさ、下位とか、上位とかって……なんなんだ? ランク付け、的なものでもあるのか?」

「ええ、その通り。天使もそうだけど、悪魔にはその強さ、世界に対する個々の影響力の事で格付けをしているの」

 ふむ、なるほど?


「─────」

「じゃあ、特別に私が少しだけ説明してあげる。人間で、普通の一般人である”志摩弥クン”にね♪」

「……普通で悪かったな⁉」

 こうして、白い悪魔の授業が始まった。


「……まず、前提の話だけど。今存在する悪魔という存在は、”魔王”が生み出した原初の悪魔から派生した者達よ。魔王が生み出した魔力の塊って感じね」

「……ま、魔王か」

 なんか急にファンタジーじみたな。

 少し胡散臭い話……にも思える。


 取り敢えず、俺は脳を整理しながら話を聞く。


「悪魔という存在は、その原初の悪魔から派生し、広がってきた」

「……なぁソフィア。ソイツ、えーと、原初の悪魔? って、どうやって仲間を増やしているんだ?」

 人間達と同じ交配によって子を作るのだろうか?

 でもそれじゃ、随分と生物っぽい。


 俺が魔源種(あくま)と対峙した時に感じた、あの空気。

 あの存在感。あれは、生物らしからぬものであったのだ。

 生物ではないのなら、交配で子を作ることは不可能……なんじゃあないのか?


「そりゃ決まっているわ。彼らは存在しているけど、生きてはいない。だから、死という概念もない。だから人間のように交配することで子を生み出す事は出来ない。じゃあ彼らはどうやって広がっていった存在なのか。それは単純明快。彼らはね、乗っ取るのよ─────」

「……乗っ取るて、ナニ、ヲ?」


 ─────厭な予感。

 だけど、ここで踏みとどまるわけにはいかない。


生物(いきもの)を、よ。近代では、ほぼニンゲンを乗っ取って、彼らは生きている。貴方達、人間社会のイメージで言うと。今の悪魔はどっちかというと、幽霊? という存在に近い」

 ─────。


 ああ、なるほどと理解をする。


「じゃあさっきの俺が倒した……? 悪魔も、人を乗っ取ろうとしてショッピングモールへ襲ってきたのか?」

「……いや、それは違うと思う」

「? 、どうしてだよ」

 それじゃあないのならば、何故アイツは俺たちを襲いに来た?


 ─────意味が、分からない。


「じゃあ、さ。それ以外の目的で、なんで俺たちを襲いに来たんだ……」

 俺は問う。そして、ソフィアは答える。


「あの悪魔達のボス……っていうのかしらね、ま。その悪魔がなんでか知らないか分からないけど私の事を追いかけているのよ。ストーカー、ね」

「は?」

 そりゃあ、どういう事だ。─────脳に邪推がよぎる。

『コイツがいなければ、あの惨劇は起きなかった』それは、ダメだ。

 考えるな。


「だから、言ったでしょう。アレは、私が招き入れてしまった惨劇だ、と。……ごめんね、悪いのは私なんだよ……ワタル。やっぱり私は、人間社会(あなたたち)とは適応出来ない」

「……いいや、違う。それは、違う」

「─────?」

「悪いヤツがいるとすれば、それはその悪魔達だ。お前はただ追われているだけの被害者なんだ……ろ……? それならば、お前が重く考え事は必要ないって」

 俺も、あの惨劇を見て理性を抑えきれなかった。が。


 そんなのは、偽善だ。

 他人の死を悔やむなど、親族でもない他人の死を悔やむなど。傲慢にも等しい。

 自分の人間価値(そんざい)を過大評価しすぎている。


「それに、お前自身は人間に手を下した訳じゃ……ないんだろう?」

「まぁ、そうだけど……さ。でも間接的には殺しているもの私」

「そんな事言ったら、俺だって何人も殺しるだろうよ。やめよう、この話は暗くなるから。……さっきの授業の続き。悪魔のランク付けについての話を続けてくれ」

「ええ、勿論」


 ─────話を続ける。

 彼女、白い悪魔は話を直ぐに切り替えた。


「そうね。じゃあ、まずは魔源種(あくま)の大まかなランク付けを教えてあげるわ! 誰でも理解できる簡単な知識よ」

「ほう」

 それは気になる。

 そう思いながら、俺は鼓膜に意識を集中させた。


「簡潔に言うわ。魔源種、アクマという存在には。弱い順から、

 魔渦(ファントム)、魔概、魔道、魔人、魔災(マーダー)、源種に分かれているわ」

「ぬ、お、おお……? ず、随分と数が多いな」

「それぞれ説明してあげようか?」

「い、いいや。それは時間かかりそうだし、後で大丈夫だ。簡潔に、簡潔に頼む」

 思ったよりも乗り気な彼女を少し抑制させる。


「えーーと、だな。聞くけど、俺が倒したさっきのアクマは、この中でどの位置付けなんだ?」

「アレ……というか、あの堕族(ゴースト)は全然の雑魚だったし、ランク付けなら一番下の魔渦(ファントム)かな」

「一番下……です、か……」


 ちょっぴり、残念。

 どうせなら、もっと強いヤツを倒したとか、そんな感じが良かった。……て、何を言っているんだ俺は。

 俺は、例え人外でもソレを手にかけたのだ。

 決して褒める事じゃない。ただ、自分を、人間を守る為に本能が殺しただけ。

 それだけなのだから。


 というか、その種類の名前とランク付けは別なんだな。

 かなりややこしいではないか。何が簡潔、なのか。

 文句を心の中で垂れ流すが、それは無意味。


「そんなに落ち込むことないよワタル。人間の肉体で、アクマを倒せるってだけでも人外レベルなんだから」

「そりゃ……そうです、か」

「あ、ああーーー。えーーーと、聞きたい事はそれだけ?」

「い、いいや。まだ二つ程度残っている」


 自分の気力を取り戻し、もう一度彼女の瞳をまっすぐと覗き込み。

 俺は聞く。


「お前、確か前に自分が天使だと言っていたよな……?」

「え? まぁ、うん。そうだけど」

「じゃあ、さ。お前のモクテキって、なんなんだ? どうやら俺の眼が、直感が言ってるんだが、お前は何も使命無しに生きている様には見えないんだ」

「─────……ぁ、……はぁ。まさか、人間(ワタル)がそんな事聞いてくるなんて、ね」

 彼女は濁す。話を。だが、俺は続ける。


「聞かせてくれ、お前の目的はなんなんだ……天使(ソフィア)。そして、教えてくれ。俺が倒したあのアクマ、アレがお前の敵だったりするのか……?」

 もしかすると、なんとも的外れな質問になるかもしれない。又は、図星を突く質問。否、核心を突く質問かもしれない。


 まず第一に、コイツに敵がいるのかすら分からないし。

 コイツが誰かと敵対関係になるような行動をしているのかも大して分からない。

 これはあくまでも推測だ。あの黒塊と対峙していた場面から、そう推測しただけに過ぎない。


 ─────彼女は、少し押し黙る。


 聞かせてくれ。

 俺の質問の、返答を。

 生唾を、ごくりと飲み込む。


 振動(おと)は喉内を反響して、鼓膜にうるさいと叫び気がおかしくなるような程響き渡る。視界も歪んで、どこかで人生の選択肢を誤ったのではないかと錯誤する。

 そんな錯覚が、俺に襲い掛かる。


 だが、大丈夫だ。

 俺は、何も間違っていない。

 俺は、まだ正気でいられている。


 彼女の、黄金の瞳を見つめる。

 ただ、ただ、ただ、ただ、見つめる。

 彼女は、そうしてゆっくりと告げた。


「私の目的…………。それは、ある悪魔を倒すコトよ」

「ある悪魔……? それは、さっき言っていたストーカーのやつなのか?」

「いいえ、違うわ。……まあ、なんていうか私情があって、ね」

「は、はぁ…………」


 私情か。私情、ね。

 そんなモンなのだろうか。

 取り敢えず、コイツがある悪魔を倒したいということは理解した。


「ソイツって、強いのか?」

「……? それは、私と比べて? それとも、ワタル達人間と比べて?」

「あーー、ソフィアと比べて、だ」

「なら、五分五分ってところかな。どっちかていうと、私の方が少し強い程度。だから、アイツはこの町で逃げ回っている」


 ふむ。

 ソフィアがどれぐらい強いのかは知らないが、多分強いのだろう。そのアクマは。

 ……人外すぎて、想像もつかない。

 それは、考えるには果てしなく遠い存在。


 俺には、トオイトオイ存在だ。


「─────分からない、な」

 言うなれば、今の状況は三つ巴なのだろうか。

 ソフィアはある悪魔を倒したい、だけどその悪魔は倒されたくないから逃げている。

 その悪魔を追いかけようとしても、ストーカー悪魔がソフィアを邪魔している……的な感じか?


 よくよく熟考する。

 というか─────。


「なぁ、そういえばあの時、悪魔と対峙した時。溺れる様な感覚に陥ってたんだけど、もしかして。この或間の町で起こっている事件の犯人て─────」

「それは、貴方が心の中で思っている通り。─────私をストーカーしてくる悪魔の、正確にはその親元の仕業よ」

「……」


 言葉が詰まる。

 予想外ではない、さっきの話と、対峙した時の感触があれば、誰でもそう考える。

 だけど、予想外ではないけど。

 頭の中が真っ白になった。


「────」

 あの非人道的行為は、俺が対峙した悪魔の親元。

 ソイツ。ソフィアのストーカー。

 ソイツが、コロシタ、のか。


 ……一体、何の為に。

 それは全くもって予想が付かない。

 知る由もない。知りたくもない。……そんなキチガイの話を聞けば、自分の脳内すら狂ってしまいそうなのだから。


「……はぁ。なるほどな」

 大きくため息を吐き、脳を整理する。


 勿論、理解なんて出来ていないし。

 この状況が許せていない。

 そんな悪魔なんて存在を。

 それを抑制出来ない己の無力さを。


 整理しようと思えば、思うほど脳が混濁して。

 怒りだけが湧いて出てくる。

 だが、それはあまりにもくだらない。


「質問はこれだけでいい……ソフィア」

「え? まだ一つしか質問してないけど? 二つあるって言ってなかったっけ?」

「まぁな、だけど、気が変わった。今は別にいい」

「そ、そう……?」


 俺からの質問はこれで終わりだ。

 少しの静寂が場を制す。俺の脳内は、先程までに話された情報で精一杯だ。

 だから、整理する為に天井をただただ眺める。


 ああ。

 疲れた。

 身体中、全身が痛い。

 だけど、ここでこの事案を見過ごすわけにはいかない。

 たとえ、普通の一般人の人間の志摩弥(オレ)でも、これは見過ごせない。

 或間の町に住む者として。

 人間という偽善として。


 ─────本能がそう言っているから。


 敵の悪魔がどんな目的を持っているのか、それは分からない。

 仲間だと思いたい……ここにいるソフィアの目的も、明確には分からない。まだ、表面上の話しかしてもらっていない。

 だから。分からない。


 ─────俺は、これからどうするべきなんだろうか。と。

 思う、考える、夢想する。

 しかし、そんな時間は俺には持ち合わせていなかった。


「じゃあ、私からも質問していい?」

「え? あ、ああ。構わないけど……」

「じゃあ、ちゃんと聞いててね?」


 一息ついた所で、彼女がオレニ質問を投げかけてきたのだ。

 俺が今まで考えなかったコト、考えたくなかったコト、無意識に避けていたコト。

 ─────。

 そう。


「ワタル。貴方があの悪魔に対して行使したその力。─────……一体、それが何なのか分かってる?」

 俺の、右腕の力について。


 彼女は、問いかけてきた。

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