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捨てられた荷物持ちの俺、死にかけて覚醒する  作者: beck2026


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第22話 封印強化の試み



共同訓練を重ねた末、いよいよ封印強化の試験を行う日が来た。第十二層の臨時拠点に、調査隊の全員と、セレン、ガレンが集まっていた。


「今日は、小規模な試験だ」セレンが、改めて全員に説明する。「亀裂に直接干渉するのではなく、周囲の空間に封印の力を流し込み、効果を確認する」


「危険はないんですか」


「絶対にない、とは言えない。だが、君たちの力を見る限り、十分に管理できる範囲だと判断している。もし異変があれば、即座に中止する」


俺とミラは、互いに顔を見合わせ、頷いた。


「やりましょう」


座標点を使って、亀裂のある場所まで一気に移動する。今回は調査隊全員が同行するため、何度かに分けて移動を行った。


亀裂に到着すると、薄紫の光は、前回観察した時とほぼ同じ強さを保っていた。


「ロウ殿、ミラ殿、準備はいいか」


「はい」


俺たちは、亀裂から少し離れた、安全とされる距離に立った。セレンが手順を改めて確認する。


「まず、ロウ殿が空間を歪ませ、亀裂の周囲に薄い境界を作る。その境界に、ミラ殿が時間の遅延をかけ、固定する」


「分かりました」


俺は座標点に意識を集中させ、亀裂を囲むように空間の歪みを生み出した。普段の戦闘で使う歪みより、もっと広範囲で、もっと緩やかな歪みだ。


「繋がれ、囲め」


歪みが、亀裂の周囲に薄い壁のような境界を作り出す。完全に塞ぐわけではないが、漏れ出す光の流れが、わずかに緩やかになった。


「今です、ミラさん」


「分かりました――遅れろ」


ミラが力を発動し、俺が作った境界に時間の遅延をかける。境界そのものが、まるで固定されたように、安定した形を保ち始めた。


「……効果が出ている」セレンが、興奮した声で資料を確認する。「亀裂からの光の流出量が、明らかに減少している」


『……何をしている』


低い声が、頭の中に響いた。前回よりも、はっきりとした怒りのような感情が伝わってくる。


『そなたたち、我を再び封じ込めようというのか』


「お前を完全に消すわけじゃない。だが、これ以上、外に出すつもりはない」


俺は、亀裂に向かって声をかけた。


『甘い……。アーシェルの欠片二つ程度で、我を抑えられると思っているのか』


亀裂が、一際強く振動した。境界の一部に、亀裂が入る。


「境界が、揺らいでいます!」ミラが声を上げた。


「踏ん張って!」


俺は座標点をさらに強く意識し、歪みを補強しようとした。だが、災厄の力が、想像以上に強い。


『まだ、足りぬ』


亀裂から、薄紫の光が一気に強くなり、境界を押し破ろうとする。


「セレン殿、これは――」


「一旦、中止だ! 二人とも、力を緩めて!」


セレンの指示に従い、俺とミラは力を緩めた。境界が崩れ、亀裂は元の状態に戻っていく。災厄の声も、徐々に静かになっていった。


「……今のは」


「想定よりも、災厄の力が強い」セレンが、険しい表情で言った。「二人の力だけでは、まだ不十分なようだ」


ガレンが、心配そうにこちらを見た。


「無理はしないでくれ。二人とも、無事か」


「大丈夫です」俺は答えたが、内心、強い焦りを感じていた。


「もっと、力を高める必要がある、ということですか」


「そうだろうな」セレンが頷いた。「君たちの連携自体は、確かに効果があった。だが、災厄の力に対抗するには、まだ足りない」


ミラが、不安そうな表情で俺を見た。


「ロウさん、どうしましょう」


「焦らず、できることを積み重ねていきましょう。まだ、時間はあるはずです」


そう言いながらも、災厄の言葉――「まだ足りぬ」という声が、頭の中に重く残っていた。荷物持ちだった頃から、ずっと積み重ねてきたものが、今、試されている。


「次は、もっと強くなって戻ってきます」


亀裂を見据え、俺は静かに決意を固めた。第十二層の奥で、もっと大きな試練が、確実に待っていた。

お読みいただきありがとうございます!


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