1537年。11月4週目。3つ目の戦線。摂津山城方面を厚くしながら河内方面も三好細川勢を押し込む。
十一月四週目。
茨木。
高槻方面。
戦線は。
大きくは。
動いていなかった。
細川・三好方も。
ここだけは。
簡単に。
抜かせるつもりはない。
「まあ」
八郎が。
地図を見ながら言う。
「急がんでええでしょう」
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摂津から。
山城へ。
つながる正面。
そこへ。
警備。
荷駄の護衛。
街道の確保。
交代要員まで含めて。
「四万五千ほど」
「置きましょう」
「一気に?」
「はい」
「攻めますか?」
「少しずつです」
八郎は。
首を振る。
「一番大事なんは」
「崩れんことです」
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村を。
一つ守る。
街道を。
一つ押さえる。
川を。
一つ越える。
それでいい。
「無理して」
「城取らんでもええです」
「向こうから」
「崩れるまで?」
「そういうことです」
八郎方には。
飯がある。
替えの兵もいる。
なら。
急ぐ必要はない。
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「それと」
八郎が。
地図の南へ。
目を移す。
「紀伊は」
「一旦」
「放っときましょう」
「攻めぬので?」
「はい」
紀伊には。
畠山をはじめ。
いくつもの勢力がある。
寺社も。
土地の者も。
入り混じっている。
「細川さんや」
「三好さんと」
「どこまでつながってるか」
「僕も」
「全部把握してません」
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「でも」
「向こうから」
「個別に喧嘩売ってこん限り」
「こっちから」
「殴る理由ないでしょう」
「では」
「次は?」
「河内です」
八郎が。
地図を。
指で叩いた。
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「河内へ」
「二万五千」
「出しましょう」
「また戦線を?」
「はい」
摂津。
山城方面。
そして。
河内。
さらに。
丹波方面でも。
細川方とつながる勢力との。
緊張が続いている。
「向こう」
「全部維持できます?」
「……難しいでしょうな」
「ですよね」
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今。
細川・三好方は。
茨木。
高槻。
京都西側へ。
力を。
集めている。
「ほな」
「別のところ」
「押したらええでしょう」
「戦がお好きではないと」
「いつも仰っておりますが」
「好きちゃいますよ」
八郎は。
平然と答える。
「でも」
「待ってあげるほど」
「お人よしでもないです」
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三郎が。
横で笑う。
「散々」
「包囲網組まれたからな」
「そうですよ」
九州。
四国。
中国。
その度に。
八郎を。
囲もうとした。
「ほな」
「今度は」
「向こうが困ってる時に」
「僕らが待ってあげる理由」
「ないでしょう」
「まあ」
「そらそうやな」
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河内方面へ。
二万五千。
ただし。
こちらも。
無理はしない。
「村が」
「入りたい言うたら」
「受ける」
「抵抗するところは?」
「まず話」
「それでも」
「向こうから殴ってきたら?」
「その時は」
「殴り返しましょう」
「分かりやすいですな」
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そして。
茨木。
高槻方面では。
少しずつ。
変化が。
現れ始めていた。
「また」
「連判状でございます」
「どこです?」
「街道沿いの」
「三村です」
「ほんまに?」
「はい」
細川・三好方から。
兵。
米。
荷駄を。
求められ続けた村々。
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「八郎様の方へ」
「入りたいと」
「皆で」
「決めたそうです」
「ほな」
「守りましょう」
八郎方の兵が。
前へ。
出る。
村を。
背中側へ。
入れる。
それを。
繰り返す。
結果として。
戦線は。
本当に。
少しずつ。
東へ。
動いていった。
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「左が」
「崩れました!」
「何?」
「一部で」
「兵が引いております!」
三好方の。
一角。
大崩れではない。
敗走でもない。
ただ。
支えきれなくなった部隊が。
一度。
後方へ。
下がった。
その隙間を。
八郎方が。
埋める。
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そして。
その日の夕方。
「八郎様」
「何です?」
「妙な者たちが」
「来ております」
「誰?」
「三好方の兵です」
「捕虜?」
「いえ」
十人。
二十人。
まとまって。
自分から。
やって来た。
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「八郎様のところへ」
「置いていただきたいと」
「……」
「それと」
「米を」
「持ってきております」
「米?」
「はい」
小さな俵。
数袋。
中には。
味噌まで。
持ってきている者もいた。
「これ」
「差し出しますんで」
「置いてください」
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八郎は。
少し。
困った顔をした。
「それ」
「元々」
「皆さんに配られた兵糧でしょう?」
「はい」
「持ってきたら」
「向こう」
「困りません?」
「もう」
「戻れませんので」
「……」
兵の一人が。
頭を下げた。
「向こうにおっても」
「先が見えません」
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飯は。
減る。
給金も。
怪しい。
村から。
何か取れば。
恨まれる。
その一方で。
目の前の八郎軍は。
大量の飯を。
毎日。
食べている。
「捕まった者も」
「殺されんかったと」
「聞きました」
「はい」
「なら」
「こちらへ来た方が」
「まだ」
「生きられるんちゃうかと」
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「分かりました」
八郎が。
頷く。
「まず」
「飯食べてください」
「米は?」
「一回」
「預かります」
「それで」
「置いていただけますか?」
「その話は」
「その後です」
すぐ。
兵にするわけではない。
名前。
出身。
家族。
元の所属。
全部。
確認する。
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「ただ」
八郎は。
報告役を見る。
「こういう人」
「増えそうですね」
「恐らく」
「ほな」
「受け入れる場所」
「作っといてください」
「投降兵の?」
「はい」
「いきなり」
「武器持たせるんは」
「怖いでしょう」
まず。
飯。
風呂。
寝床。
そして。
事情を聞く。
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十一月四週目。
茨木。
高槻の戦線は。
まだ。
膠着していた。
だが。
その横では。
村が。
連判状を持って。
八郎方へ。
入り始める。
兵が。
十人。
二十人。
単位で。
抜け始める。
さらに。
南では。
河内へ
二万五千の兵が。
動き始めていた。
「三つも」
「同時に押すんですか?」
「押すだけですよ」
八郎は。
地図を見ながら言った。
「全部」
「一気に取る必要なんて」
「ないでしょう」
「向こうが」
「どこから苦しくなるか」
「見ましょう」
七歳の八郎は。
戦を。
急がなかった。
ただ。
相手が。
休める場所も。
少しずつ。
減らしていた。




