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悪役覇道  作者: wisteria
第二章 『裏町覇道』
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全貌

「じゃあ、聞いてね」


「と、その前に、防音の部屋に移動しようか」


 彼が歩き始めたのでついていくと、本部のような場所に出た。壁に作戦が貼ってあったり、武器が飾ってあったりする。ちなみに内装は、マフィアの本部って感じの、威圧感のあるものだ。

 だが別にそこまで気にするほどでもないので、応接用のソファーらしきものに腰を下ろす。一旦飲み物を勧められたが、一応断った。これで毒殺とか、マジで洒落にならない。


「じゃあ、今度こそ」


 その言葉を皮切りに、彼は計画の全貌を話し始めた。


「マーディッシュ商会と「協会」の裏切りが判明した後、制裁の第一段階として、僕はこのニつの組織の力を削ぐことから始めることにした」


 制裁、か。確かに必要だろうが、現代日本でぬるま湯につかっていた身からすると、その言葉の意味は、あまりにも重い。そういう空気に、これから慣れていかなければならないのだと実感した。


「マーディッシュ商会の方が楽だと判断して、僕は今回の作戦に出た。暗黙の了解である、互いの分野への不干渉。これを破らせるという内容のね」


 それで今回の行動に出たわけか。裏町の孤児に手を出すのは、自治活動を行っている傭兵組合(クラン)の分野に干渉することになるわけだ。


「でも、そう簡単に相手がルールを破ってくれるわけがない。そこで、「クロニック」を使った。あの組織は、老舗ではあったものの、没落寸前だった。ここ数年は、まともに依頼を受けてさえいなかったみたいだしね」


 なるほど、それでジンの情報に引っかからなかった。そもそも、情報がほとんどなかったということだろう。


「だから、救済案を持ちかけたんだ。没落の原因となった、棟梁(ボス)の不在。それを、傭兵組合(クラン)が解決するってね」


「そうやって、僕の部下を送り込んだ。で、マーディッシュ商会に今回の作戦を吹き込んだんだ。最初は渋っていたけれど、かなり強い部下を派遣したから、その強さを見たら、あっさりと承諾したよ」


 勝てるって思ったんだろうね。そう彼は言った。そんなはずもないのに、か。奴隷商の彼らは、武道に詳しくはないはずだ。

 そこに、マキナの言う「かなり強い」レベルの部下を派遣したら、箱庭(ガーデン)に勝てるレベルで強いと思ってしまうかもしれないな。


「マーディッシュは、所詮、財力で成り上がったものだからね。策略陰謀に巻き込まれる事はとんどなかったから、簡単に騙せたよ」


 まぁ、そうだろうな。商人が強いのは、あくまで取引関係だ。そのうえ、奴隷商は奴隷を買い付けて販売する以外、あまり取引することもないだろうからな。

 この分野に関しては、長年マーディッシュ商会の一強だったらしいから、そういう策略に巻き込まれる機会もなかったらしい。それが裏目に出たのか。

 政府御用商人とかだったらこんなに上手くいってなかっただろうな。


「唯一と言っていい誤算が、君達だ。珍しい情報収集の仕方をしているせいで、計画が狂ってしまった。調べたら、厄介そうな護衛を引き連れているとも聞くし、わざわざ僕が出ることになったんだよ」


 厄介そうな護衛って、俺のことか。あまり俺は表に出ていなかったつもりなんだけど。というか、訓練ばっかで表に出る機会すらなかったと言うべきか。


「取引の際に、建物の奥からすごい覇気が漏れてきていたとか、よく聞いたけどね」


 そうですか、漏れてましたか。というか、ジンの「役に立っている」発言って、このことだったんだな。別に俺に気を使わせないための建前とかじゃなかったんだ。

 彼に視線と向けると、珍しく動揺したような表情をしている。別に怒ったり不快になったりなんてしないというのに。そんなに気を使わなきゃいけない存在じゃないしな、俺。むしろ居候の俺が配慮しなきゃいけないくらいだというのに。


「話を戻すけど、その時点で僕は、君達を仲間に引き入れようと決めた。その方が断然楽だからね。さっきのは、言わば採用試験っていうわけ」


 ずっと手の内で転がされっぱなしだったってことか。恐ろしいな、箱庭(ガーデン)


「と、いうことで、協力してもらうよ。僕達に」


 まあ、しょうがないでしょう。というか、断れる雰囲気じゃない。空気を読んで、とかじゃなくて、協力しないと始末されるような空気感がある。


「はい……」


 歯切れの悪い俺の返答に対して、マキナは爽やかな笑顔で応答する。この場の空気感に、天と地ほどの差があった。


「まあ、壮大なマッチポンプだけど、「クロニック」より先には辿り着けないと思うよ」


 だから安心して協力しろ、という声が聞こえた気がした。絶対そういうことを思ってるだろうな。何だか今、マキナは悪い顔をしているし。


「じゃあ、新しい仲間の誕生を祝して」


 彼は、ワイングラスのようなものを持ってくる。中には赤い液体が入っていた。おそらくだが、ワインではない。まさか……血?いやいや、それはないだろう。ちょっと不安になったので聞いてみたが、普通にジュースみたいなものらしい。

 あまり祝われる気分でもないが、俺は彼に促されるまま、グラスを高く掲げる。グラス同士がぶつかる音が、何故だろうか、戦いの火蓋が切られた音に聞こえて仕方がなかった。

明日は恐らくですが、投稿できません。善処はしますが……

明後日に二話投稿しますので、読んでいただけると幸いです。

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