戦の価値《求めるもの》
投稿ちょっと遅れました。すみません。
「最初に、勘違いしている愚者のために言おう。我らに大義はない」
会議は、マキナの爆弾発言により開始された。と、同時に会議は紛糾する。何せ自分たちの正しさを信じているからこその戦であり、「ヘル=ドメイン大連峰」に追いやられた人間たちの悲痛な叫びこそが戦いの原動力である。
それらを真っ向から否定する発言。到底受け入れられるはずもなかった。
「静かに。補足しよう」
「我らに大義がないと言うのは、国際上の話だ。今回の戦、呼称するに「裏社会独立戦争」は、我らが宣戦布告を行なって始まった。そうだな?」
それはもちろんそうである。と言うか、「裏町」なんかは宣戦布告後初めて周知された組織だ。そんな状態で相手から戦争をけしかけたとかいうアホはこの場にはいるまい。
「そして、非常に遺憾だが、国際的な観点においては合理な理由なき宣戦布告はそれだけで「悪」なのだ。我々の戦争が革命戦争ではなく独立戦争である所以に、アノルフィアと繋がる国だけでなく裏社会を危険視する国も我らの敵に回る」
「国際の支援が得られない以上、我らはどうやっても「大義のない」側に止まることしかできない。しかし、大義とは所詮移ろうもの。勝てばそんなもの紙屑だ。よって、我々は勝つ必要がある。大義を示せ、同志諸君よ!」
彼の一言一言が、この場の全員の戦意を上げるための処方箋として役立っていた。マキナは、本当に一体どこでこんな話術を学んだのか、と気になるほど人心掌握術に長けている。
本来「街」に対する帰属意識などさほど高くないはずの裏社会メンバーを熱気で巻き込むその手腕は本当に見事なものである。参考にしていきたい、とは思うものの、俺としては見ているだけで精一杯という感じである。
「では、軍議に入る。心せよ」
マキナの一言で、湧いていた場は一瞬で冷静になる。今この場は、もうすでにマキナによって空気感から何までコントロールされていた。彼が、彼のためだけに作り出した彼のための会議場。それが、今のこの場所である。
そしてマキナが語り始めたのは、戦の現状。それは、厳しい現実となりて俺たちを襲うことになった。
「我々連合国軍の強みは、まさに「総力戦」が可能なこと。誰一人として全く戦争において役に立たない人材は存在しない。しかしそれでも、我々の軍は六万に届かない。これは絶対的な人的資源不足が原因だ」
「それに引き換え、アノルフィア皇国軍は、全軍で約二十万。戦力差は単純計算で三倍。勝利の目標点の差にもよるが、それでも勝ち目は相当に薄いと思っておてほしい」
やはりだが、厳しいか。どうしたって軍全体の練度では向こうが上回ることになってしまうだろうし、それに何より俺たちの総戦力の計算には、非戦闘員、それこそ俺たちが所属する軍事特設諜報機関の構成員なんかがカウントされている。
直接戦えるものは六万どころではなくもっと少ないのである。そんな状態で一体何ができるというのだろうか。
「唯一救いがあるのは、これが独立のための戦争であるということ。つまりは、防衛戦だ。わざわざ相手のフィールドに入り込む必要がない。牢固な守りさえ見せつけれればそれでいい」
それは確かにそうなのだが、それでもやはり俺たちが圧倒的に不利だ。どう考えても人数の差が不利に繋がりすぎる。どうしたって数量というのはそのまま戦力に直結するのだ。そこばかりはどんな策を弄したところで覆しようがないのである。
「そこで、私は策と言うほどのものでもないが、考えを用意した」
今更であるが、マキナの一人称が私になっているのが非常に気になるな……いつもよりもさらに公的な場だから、ということかもしれないし、一応「ヘル=ドメイン」の盟主だから、ということかもしれないが、とにかくなんか気になる。
まあそんな余計なことを考えるのは後回しだ。今は、少しでも長く戦のための話し合いをするのが吉というもの。
「まず、我々の主領土はどこだ?ジン君」
いきなりジンに話を振るマキナ。これもパフォーマンスの一つであろう。いわゆる「聴衆」の役割を持っている人物に話を振ることによって、他の聴衆もあたかも自分が話し合いに積極的に参加しているような錯覚に陥ることがあるのだ。劇場感を演出している、といえばわかりやすいだろうか?
「それは……ヘル=ドメイン大連峰では?」
戸惑いながらも答えるジン。ありきたりな答えだが、それ以外に何を答えればいいのだ、と言う話であるのでマキナが求めている回答もこれであるはずである。
「そう、その通りだ。皇国の手が回っていないおかげで我々が治外法権的に組織を樹立できたのが、「ヘル=ドメイン」。皇国は「ヘル=ドメイン」に対して攻め込むのは相当に億劫なはずだ。それに、「ヘル=ドメイン」の凍結火山という厄介な地学的特徴。これも彼らが攻めあぐねる理由の一つになるはず」
凍結火山とは、読んで字の如くである。元の世界では起こりあない現象のはずだが、例えばこの世界では火山地域に氷属性の龍が生息したりすることによって発生する場合がある。非常に地盤が不安知恵であり、氷砕爆発という現象を起こしやすいため、滅多に人が近寄らない。……らしい。後半はマキナからの受け売りである。
「そんな時に彼らはどこを攻めたがる?そう、当然「下街」だ。こちらが相当の手練だと警戒されているのならあえて「ヘル=ドメイン」を攻める可能性も否定できなかったが、奴らは完全に我らのことを舐めている。ほぼ間違いなく「下街」に攻めてくるよ」
この言葉に表情が固まったのは、当たり前だが「下街」からの代表者の二人。アイシルは予想はしていたのか表情を大きく変化はさせていないが、それでもやや不安そうに表情筋を歪ませている。
「だが、これは逆に好機だ。全戦力にて、「下街」で皇国軍を討ち取る。皆、我らの意地を見せる時だ」




