第7話 戦場に残るは、笑みと閃光
ザァァアアアンッッッ!!!!
タタッ…
ハルゼン
「…ふぅ〜疲れたぜぇ…」
トール
「よくやりました。我々の勝ちですね。」
カイガス
「うむ!良い準備運動であったな!!」
クローリス
「ボクも疲れたぁ〜ここから出たら寝るぅ〜。」
ユウリ
「みなさん……まだ終わってない様やで?…気ぃ抜かんといておくれやす。」
トール
「何を言って…ッ!?」
カチャ…という音がした。それは、氷縛龍の最期の足掻きを示す…そんな音だ。
氷縛龍
「…グゥラァァァアッッッ!!!!」
キュイィィィンッッ!!!
氷縛龍は、その身を魔力体に変貌させ、大きな魔力溜まりへと化す。
その魔力溜まりは、今にも破裂しそうな程に膨れ上がっていく…
トール
「まずいですねぇ…これ、どうしましょう…」
カイガス
「吾輩の手には余るな。」
ハルゼン
「俺も無理だぞ?こういうのへの対応策は持ってねぇ…おい、メスガキ。テメェはなんか止める方法とかねぇのかよ?宮廷魔導士だろ?」
クローリス
「無理だよぉ〜ボクにも出来ないことってあるんだよ?まぁ!ボクだけなら離脱出来るけどねっ!」
ハルゼン
「使えねぇ…トール、さっきみたいな魔導具で、使えそうなもん持ってねぇのか?」
トール
「そこまで便利なものではないですよ?魔導具と言うものは。そもそも、普及してる数すら少ない、旧王朝時代の遺物です。現在作れる人といえば極々少数。」
「ですから、研究も中々進んでいないんですよね。まぁここ最近は、フィクス殿主導で次々と作られてはいますが。」
クローリス
「そこのお姉さんはどうなのぉ〜?」
ユウリ
「そないな真似……うちも無理やね。」
ハルゼン
「おいおい…もう時間ねぇぞ!?爆発しちまう!!」
スッ……
バルナバス
「安心しろ。問題は無い。」
結界内に、満を持してバルナバスが姿を現す。
トール
「バルナバス議長!?どうやってこの中に…」
バルナバス
「レティスに入れてもらったのだ。維持は探偵社の者が担っている故、気にするな。」
「さて…アレを消せば良いのだな?」
ハルゼン
「そりゃそうだが…出来んのか?」
カイガス
「ふむ…そういえば、吾輩達は其方の戦いを一度も見た事が無いな…」
クローリス
「ボクも無いやぁ〜。ってかさ、なんで最初っからやらなかったのぉ?」
バルナバス
「群衆のパニックを抑え、結界の維持をしていたからな。その様な時間など無かったのだよ。」
「それは置いておいて…早急に終わらせようか。」
バルナバスは手を翳し…技を唱える。
バルナバス
「《虚牢葬》…」
──瞬間、バルナバスの影が蠢き出し、魔力溜まりを包み込む。
空気が押し潰されるような圧が全員の肺を締め上げ、色…音が、世界から消えた。
影はただ静かに、だが確実に圧縮を続け、遂には虚空へとソレを呑み込む。
バルナバス
「よし。これで終わりだな。良く頑張った…後で褒美を取らそう…」
クローリス
「…ねぇ、バルナバス議長ぉ…ボクの代わりに宮廷魔導士にならない?」
バルナバス
「残念だが、兼任は御免でね。断らせてもらう。」
トール
「…これは……敵に回したくは無いですねぇ〜」
バルナバス
「そうならん限りは問題無かろう?
まぁ確かに、敵には容赦などせんし、今以上の苦しみを与えるつもりだがね。トール殿?」
トール
「…怖いですねぇ〜私、失禁してしまいそうです…」
ハルゼン
「……ここですんなよ?」
トール
「冗談ですから、そのような目で離れないで下さい。流石の私でも傷つきます…」
ユウリ
「まぁまぁ……あんさんにも傷つく心があったんですねぇ?驚きましたわぁ〜。
てっきり、その尻尾みたいに、情けも切り捨ててはるのかと思いましたえ?」
トール
「…これはこれは…白蓮家のお嬢様にお褒め頂けるとは…光栄の至りですねぇ…」
ユウリ
「ホンマ……面の皮が厚いなぁ〜。
その厚み、ちぃと削ったら……ええ鎧くらい作れそうやわぁ?」
いつものように、二人はニコニコとした顔で、睨み合っている。
バルナバス
「…相変わらず相性の悪いコンビだな。」
ハルゼン&クローリス
「本当だぜ…/まったくだねぇ〜」
バルナバス
「…こう言う時だけは息が合うのだな…よく分からぬものだ。」
カイガス
「む?何の話をしているのだ?」
バルナバス
「…はぁ、貴殿の様に、みな単純であれば良いのだがな」
ファンッ……
その場を包み込んでいた結界が、ゆっくりと消えていく…
シグルド
「そりゃ無理な話だろ?バルナバス議長。」
バルナバス
「分かっておるさ。それに、複雑であるからこそ…人と言うものは面白い。
シグルド殿、此度の結界の維持…感謝させてもらおう…」
シグルド
「要らないさ、そんなものはな。それより、何処か寝られる所は無いか?うちの娘を早く寝かせたくてね。」
ドクル
「僕もそろそろ休みたいですね。」
セレス
「私もぉ〜〜眠くなってきたわぁ〜〜」
コン…コン…と、規則正しい足音が聞こえてくる…
ルーエン
「…私の部屋をお使い下さい。今回、私もあまりお役に立てませんでしたから…」
シグルド
「そりゃあ良いな!…だが、男女は分けにゃならんだろ?」
セレス
「そうねぇ〜でも、私はドー君となら一緒に寝ても良いわよぉ〜?」
ドクル
「冗談はよしてください。」
ルーク
「それについては、兄さんの部屋を女の子たちが使って、僕の部屋をおっさんたちが使ったら丁度良いんじゃない?」
ルーエン
「…ルーク、初対面の方にそのような言葉使いでは失礼だろう?もう少し皇族としての意識をだな…」
ルーク
「別に良いじゃん。どうせ僕は、居ても居なくても変わらない出涸らしなわけだしさ?」
ルーエンの身体がピクリと動き、少し暗い顔をする。
ドクル
「コホン…それでは、僕たちは先に眠りにつかせてもらいます。皇子様方…ご厚意、痛み入ります…また、菓子折りでも献上させていただければと…」
ルーエン
「そう堅苦しくならなくても良いですよ。菓子折りも要りません。間に合っておりますので。」
セレス
「それじゃあ〜お言葉に甘えさせてもらうわねぇ〜?」
そうして、ドクルとセレス…ルリを抱えたシグルドは、ルーエンとルークの案内の元、その場を離れた。
レティス
「皆さん…お話が長いですよ?さっさとこの跡…片付けてしまいましょう。」
ヴリトラ
「それにしても…随分と派手に暴れましたねぇ…請求は全て、最も破壊したカイガスにお願いしたらどうです?」
カイガス
「ふん!この様な問題の起きた時に、何の役にも立っていない狐風情が…どの面下げて弁を立てているのだ?ヴリトラ。」
ヴリトラ
「私は君の様に"暇"では無かったからね?"たまたま"その場に居なかっただけさ。居さえいれば、君よりも大きな戦果を上げていただろう。」
バルナバス
「……そう言えば、ここも中々面倒な関係であったな…。まったく…こちらの身にもなって欲しいものだ。」
アントレム
「心労が絶えませんねぇ〜バルナバス殿。心中…お察しします。」
バルナバス
「貴殿に察せられたくは無いのだが…まぁ良い。そういえばイオ殿、患者の治療は終わったのか?」
人混みを掻き分けて、白衣を着た知的な男性が近づいてくる。
イオ
「問題ありませんよ。とっくに全て終わっています。ついでに、この場も元に戻しておきましょうか?一応可能ですが。」
タッ…タッ…タッ……
マルヴェス(歩きながら)
「そのような事が可能なのか?イオ司教。
建物の再構築や時を戻すなどと言った魔術は、あなたの専門とは関係ないはずであろう?」
イオ
「居たのですか、マルヴェス殿。まぁ私も、十二司教の一端ですからね。多彩なんですよ…それなりには。」
バルナバス
「そうか、深くは聞かぬようにしておこう。任せたぞ。イオ殿。」
イオ
「はい、任されました。」
イオはスッと手を翳しながら、言葉を紡ぐ…
イオ
「《再雷》…」
バチッ…
小さな稲妻が迸り…瞬きを一つする内に、戦跡は跡形も無く消えていた…
ユウリ
「…いやぁ、こらまたえらい面妖なもんやねぇ…こないな術、魔術いうより、どっちか言うたら魔法に近いんとちゃいます?」
トール
「…失われた"魔法"ですか…確かに、近いかも知れませんね。」
イオ
「…そんな大層なものではありませんよ。…さて、私もこの場を離れさせてもらいます。まだやる事が残っているので…」
バルナバス
「ああ、行くと良い。ご苦労であった…イオ殿。」
そうして、皆各々の場へと戻っていった…
***
ザザッ……
アルセリオ
「よし、ここなら自由に暴れられるな。」
レオナール
「なぁ、アル。この大広場…こんなに広々としていたか?」
アルセリオ
「……既に壊したからな。あっ!俺じゃねぇからな?カルデラの奴が派手にやって…
そっそれに、ルドヴィクスにも事前に許可もらってるし…」
レオナール
「…程々にな?それより、さっき走ってる時に聞こえた音…どうやらあっちはもう終わったようだな。」
アルセリオ
「だな。こっちも出来るだけ早く終わらせっ…」
──その時、正面の路地から軽い足音が近づいてくる。
足音は段々と強くなっていき、やがて、小さな影が角から伸びる…
セクメト
「…ここに居たのね。結構探しちゃったわ…ねぇ?探偵さん?」
そう、声が静寂に響いた…そこには、一人の少女の姿が淡い光を浴びている…
氷の龍との激戦に、ついに一つの決着が刻まれる。
だがその頃、皇都の別の場所では──“縛鎖のセクメト”が、新たな標的の前にその姿を現そうとしていた。
静かに張り詰める空気。
次の瞬間、その均衡は崩れ去る。
──次回、『怠惰な声色』




