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22nd Stage とうとうバレた!? 〝紫苑〞の正体!!

いつもご覧いただき誠にありがとうございます!

なんとか執筆時間がとれました! 時間は自分で作るものですね。


そして本作も残すところ、あと3話となりました!

加えて今さらですが、全然恋愛フラグを立てていない……

もし〝文芸に移行すべき〞というご意見ございましたら、遠慮なくお申し出ください。

 

 その後、私が朱里さんのマンションへ戻ったのは、夜になってからだった。


「……ただいま、帰りました」

「お帰り」


 扉を開けた私に、朱里さんはホットコーヒーを用意して待っていてくれていた。


「ジュリエットが、詳細は後でメールするって言っていたわよ」

「……ありがとうございます」


 ブラックのまま口に含んで、その苦さと温かさを舌に感じる。

 ダイニングテーブルの向かいに腰を掛けた朱里さんが、自分の分のコーヒーに一口口をつけると、おもむろに言葉を綴った。


「……()()でいいの?」

「……はい。これでいいんです」


 朱里さんの言いたいことはわかる。

 けれど、おおよそは、思っていた通りの展開になった。


 だから、このままでいい。

 〝紫苑〞を終わらせるには、これでよかったのだ。


「……そう」


 朱里さんの声が、コーヒーの味と共に響いては消えた。




 それから私は一月の下旬から二週間弱、ローズモンドの仕事を手伝いに、フランスへと飛んだ。

 今年のコレクションの開催は、二月二十一日の木曜日から三月一日の金曜日までの九日間。


 ローズモンドのブランドは創設されてまだ日も浅いながら、彼女のこれまでの経歴が評価されて真ん中の三日目に行われるという快挙を成していた。同日に発表される有名ブランドの名前をジュリエットから聞いて、全身に鳥肌が立ったのを、私はずっと忘れないだろう。


 手伝うといっても、ステージに上がる衣装は既に完成されていた。私に任された仕事は、コレクションの開催期間中に関係各所へ配布する資料作成や香水の試供品サンプルの発注業務など。


 雑務、といってしまえばそれだけのことだけれど、一般の人間が立ち入ることの出来ないコレクションへ関われて、しかも開催期間中には関係者として出入りが出来るなんて、私には夢のようだった。


 そして。

 二月に入って、一週目。私がフランスから帰ってきてからの初めての登校日。


「久しぶり! 宮園さん!」

「……っ!?」


 朝一。寝ぼけ眼でクラスへ向かうと、扉の前でその顔と鉢合わせた。彼の口が先に言葉を紡ぐ。


「……うん、久しぶり。緋織くん」


 本当ならもう顔を合わせたくない人だったけれど、〝クラスメイト〞としてはそういうわけにはいかない。


「宮園さん、この二週間はフランスへ行っていたんだって?」


 私が席に着くと、緋織はそう訊ねてきた。


「うん……ちょっと、知り合いの仕事を手伝いに」


 私がちらりと黒板の上の時計を見ると、時刻は午前七時四十分を指していた。

 恐らくあと十数分は、教室に誰も来ない。


 この二人だけの空間が、たまらなく恐ろしかった。

 脳裏に、マンションでの出来事が浮かぶ。


 同じそれが苦痛だった。


「へえ……宮園は進学しないの?」


 一月や二月は、遠方の大学や専門の試験などで数日不在にする生徒が多かった。

 けれどその中で二週間も不在な私のことを、みんな首を傾げていたようだ。


「うん。私は就職組だよ」


 この神原学園は進学校としても有名だった。けれどそれでも生徒全員が百パーセント進学の道を選ぶわけではない。


「……凄いな。宮園さんは」

「緋織くんは大学へ行くの?」


 私も一時期は大学に進むことも考えた。けれどそれよりも、認められたい、飛び込みたいと思う世界が出来た。ただそれだけだった。


「一応ね。でも、この仕事と両立でやるつもりだから、四年で卒業は難しいかな」


 確かに。芸能活動をしながらの学業は、高校以上に難しいのかもしれない。

 けれど。


「……どれだけ時間が掛かっても、自分で決めたことを最後までやり遂げられるのなら、それは立派で素敵なことだと思うよ」


 そう口にしてから、私は自分の失言に気付いた。


「そっか。ありがとう」


 それでも、緋織はいつものように笑顔を変えずに言う。


(……なに言ってるのよ……私は……)


 時差が抜けきれていないのかもしれない。

 来週には期末試験が控えていると言うのに……もっとしっかりしなければ。


 私が〝羨ましい〞なんて、思う資格なんかないというのに。


 その日の授業は、全然身に入らなかった。

 大学入試を控える生徒もいることから、訪れる自習時間という静寂。


 私は気を抜くと睡魔に襲われそうで、眠気のピークが来る度に頬や腕をつねっていた。


 その睡魔は学習室へと来ても変わらなかった。


「……宮園さん?」

「……ふぁい!?」


 学習室の長机で船をこいていた私に声をかけたのは、他ならない緋織だった。


 机の上には、クラスメイトから借りたノートと私のノートを広げたままだった。

 私がフランスに行っていた間の授業ノートとを借りて


「大丈夫? 顔色、すごい悪そうだけど……」

「あはは……ちょっと、時差ボケが治らなくて……」


 本当は時差以外にも理由はあったけれど、これだけは彼に言うことは出来なかった。


「それより、どうして緋織くんがここにいるの?」


 首を傾げる私に、緋織は自分のノートといくつかの教科書を鞄から取り出す。


「前にここで、宮園さんたちにテスト勉強教えてもらったでしょう? あれからここで勉強するといい点取れるようになったんだ」

「そっか。それはよかったね」


 それは彼の努力のところが大きい気もするけれど、当の本人がそれで納得しているのなら、私が言う必要もないだろう。


「俺が言うのもなんだけど、少しは休むことも必要だよ?」


 机の向かいに座った緋織が告げる。


「スッキリした状態で勉強した方がいいって言うのも、宮園さんから教わったことだしね」

「……」


 そんなこと、私は言った覚えはなかった。それでも、緋織の言葉は道理にかなっているとは理解できる。


「そっか……うん。じゃあ、今日はここまでにしようかな」


 私は立ち上がって先ほどまで写していたノートをしまう。

 これくらいの眠さなら、夢を見る暇もないまま熟睡出来るかもしれない。


「宮園さーんっ」


 学習室から女子寮へ戻っている最中、背後で彼が私の名前を呼んだ気がした。

 最初は気のせいかと思ったけれど、三回目でそれは幻聴ではなかったと気付き、振り向く。


「これ、学習室の机の下に落ちていたんだけど、宮園さんのじゃない?」


 緋織が手に持っていたのは、筆箱一式で、そして私のものだった。


「あっ……ありがとう。私のです」

「よかった、間に合って」


 わざわざ走ってきてくれたのだろうか。肩を少し弾ませている緋織を見て、私は懐かしい思いと後悔が胸に湧いた。

 私はそれを受け取ろうと手を伸ばす。けれど、腕が異様に重く感じ、思った通りに上がらなかった。


 そして。手の横を筆箱が通り過ぎる感覚を感じた時、私は自分の身体にも力が入らなかったことに気付いた。

 私は、もう。


 ――限界だった。


「宮園さんっ!? どうしたの!?」


 耳の奥でそう叫ぶ緋織の声が聞こえたけれど、大丈夫としめす体力も、気力も、今の私には残っていなかった。


 ◆


「……もう大丈夫ですよ」


 女子寮の一室。

 寮母の珠代が、部屋の扉を静かに開けて、彼女の無事を告げる。


「ゆっか!? 大丈夫!?」


 珠代が部屋の扉を開けたことで、紫のルームメイトという雪子が彼女の名を呼びながら入室した。けれどベッドで静かに寝息を立てる少女に気付くと、雪子は自ずと息をひそめる。


「……恐らくは、軽い疲労が原因ね。けれど今はぐっすり眠っているから、寝かせてあげなさい」


 一応、ご家族には連絡してくるわと言葉を残して珠代は退出した。


「……よかった」


 緋織はクラスメイトの紫の命に別状はないと知り、胸を撫で下ろした。

 少し前に緋織は、目の前で倒れそうになる彼女をすんでのところで受け止め、一番近くにあった彼女の住む女子寮へと彼女を運んだのだった。


「時差ボケだって、言ってたから……」

「……うん。そうかもね」


 不意に、机の上に飾られていた写真立てに目が行く。

 それはごくありふれた両親と子供の三人で写る、いわゆる家族写真。

 プライバシーに関わることだと思いつつ、その写真に写る人物を見て、緋織は驚かずにはいられなかった。


「……朱鷺花ときかさん?」


 緋織の記憶のページが捲られる。




 緋織の子供の時の夢は、ヒーローだった。

 きっかけは、TVに出てくる特撮ヒーロー。


 毎週日曜日の朝、かじりつくように観ていたTVの中で、毎回チームのメンバーと協力して敵を倒すヒーローたち。


 一人よりも二人。二人よりも三人。

 そうやって互いをフォローし合いながら強敵と刃を交え、強くなっていく彼らの姿に、幼心ながら感動し、期待し、憧れた。


 そして訪れたあの日。それは、緋織が幼稚園児だった、ある年のことである。


 従兄弟のバイト先である遊園地で、当時流行っていた特撮ヒーローのヒーローショーが行われることになり、それに行けることになった緋織は、普段テレビでしか観られないヒーローたちを直に瞳へ映すことにとても感動していた。


 だからこそなのだろう。ショーの最後に行われた握手会で、幼いながらも緋織はひとつの事実に気が付いてしまっただった。


(このお兄ちゃん、いつものレッドじゃない!)


 無意識に、いつもレッドが取る決めポーズの角度を覚えていた緋織は、そのポーズの違いから、先ほどまでステージで赤いコスチュームを着て跳んだり跳ねたりしていたヒーローが別人だと気付いてしまったのである。


 そして偽物のレッドの正体を暴いてやろうと考えた緋織は、ここまで連れてきてもらった兄に「トイレに行く」と嘘を吐き、一人ステージの舞台裏へと潜り込んだ。


 〝関係者以外立ち入り禁止〞という文字を当時五歳児の彼が読めるはずもなく、無事に誰もいない舞台裏のスタッフルームへと辿り着く。


(絶対に、俺が正体をあばいてやる!)


 テーブルの下に隠れて息を潜めていると、しばらく経って扉を開ける音と男性二人の話し声が聞こえてきた。


「今日はほんとにありがとな、朱鷺花! でも、菫さんたちには悪いことしたよな。せっかくの休みにお前を借りてしまって……」

「どういたしまして。石崎の頼みなら断るなって言っていたから、大丈夫だと思うよ」


 仲良く話す二人のうちの片方は、カメラを首から下げた見知らぬ男性だった。

 そしてもう片方の男性は……


(あのレッドだっ!)


 もう片方の男性は、先ほどショーで見たレッドのコスチュームを纏っていた。脇には頭部から外されたヘルメットが抱えられている。


 そしてその顔は、いつもテレビで見るレッドとは違う人物だった。


(やっぱり、あのレッドはニセモノだったんだ!!)


 緋織は自分の予想が間違ってはいなかったこと、そして誰も気付かなかったその事実に自分だけが気付いていたことに内心で喜びを隠せなかった。


 しかしここでもうひとつ、カメラの男性がおかしなことに気付いてしまう。

 二人の会話を盗み聞いていると、カメラの男性は完全にもう一人を〝レッド〞だという認識で話していたのだ。


(も、もしかして……洗脳されてる!?)


 確か数週間前の番組の放送で、相手を思い通りに洗脳できる怪人が現れて、町を滅茶苦茶にしようとしていた回だったのを思い出す。

 カメラを持つ男性も、もしかしたらあの時の人たちのように洗脳されているのかもしれない。


 その時、テーブルの上にあった何かがゴトンと落ちてきた。


 床に転がったのは、劇中で怪人の手下たちが持っていた剣の小道具。

 それを拾おうとしたコスチュームの足が屈み、緋織はその男性と目が合ってしまう。


「……あっ」

「……あっ」

「……はい? どうかしたのか? 朱き――」


 二人同時に声を上げ、そしてもう一人が疑問を上げたのちに固まった。


「きみ、お名前は?」


 優しげな表情かおと声に、緋織は咄嗟に答えてしまう。


「花川、緋織」


 答えたあとで、自分も洗脳されてしまったのではないかと、身体が強ばった。


「緋織くん、ね。今日はどうしたの? パパやママとはぐれちゃった?」


 身体は動くし、考えも目の前の男性がニセモノだと思っていることも変わらない。

 洗脳されたわけではないとわかった緋織は、隠れていたテーブルから飛び出し、二人の大人と距離をとる。


 そして首を横に振り、目的を口にした。


「このニセモノめっ!」

「……はい? 偽物?」


 しゃがんでいるとはいえ、身長が自分よりも倍以上ある二人の男性は互いに視線を交わしていた。

 まるで何かのやり取りを視線でのみ行っているようだった。


「おじさん、さっきショーに出ていたでしょ? で、でも、テレビに出てくるレッドじゃないし……レッドが二人いるわけないもん!」


 緋織は思いをすべて声にのせる。


「はははっ!!」

「朱鷺花!?」


 突然笑い出した男性に、もう一人のカメラを持つ男性がその名前を呼んだ。〝ときか〞という名前らしい。

 しかしその〝ときか〞と呼ばれた男性は、真っ直ぐに緋織を見つめ、優しく告げる。


「そうだね、ひおりくん。実を言うと、僕は君の言う通り、()()()()()()()()()()んだ」

「……えっ?」


 まさか早々に折れられるとは思っていなかった緋織は、呆気に取られた声を上げた。

 けれど続く男性の言葉を聞いて、さらに驚くことになるのである。


「ただね、僕はレッドから力を分けてもらって、今日ここに来たんだ。レッドに頼まれて悪い奴らを退治しにね」

「レッドに、頼まれて?」


 ウインクする〝ときか〞に、緋織は首を傾げる。


「ああ。君も知っているだろう? レッドも、それ以外のレンジャーも、みんな忙しいんだ。でも、今日みたいに悪い奴らはそんなのお構いなしにやって来る。


 だから、僕でも悪い奴らを倒せるように、レッドから力を借りて戦っているんだ」


 はっきりと告げられる、緋織の知らない衝撃の事実。


 ――レッドのニセモノは、レッドの力を借りている?


「おじさんは……レッドのニセモノだけど、ホンモノだってこと?」


 思考力が追い付かない緋織の頭と口は、それを言語化するだけで精一杯だった。


「……でも、それだと、おじさんのやったいいことは、みんな〝レッド〞がやったことになっちゃうよ? おじさんは誉められないけど、それでいいの?」


 そう口にした瞬間、〝ときか〞の目が一瞬だけ丸くなる。けれどそれはすぐに綻び、笑顔へと変わった。


「君は優しいね、緋織くん。でもいいんだ。レッドの手伝いをこっそりすることで、みんなの笑顔を守れるのなら。

 だって、ヒーローの仕事は〝みんなを笑顔にすること〞だからね。それをするのが〝僕〞でも、〝レッド〞でも、その目的は変わらないだろう?」


 そう屈託のない笑顔で言い切る〝ときか〞が、緋織の瞳にはとても輝いて見えた。

 そしてその輝きに憧れ、緋織もたった今胸に生まれた新しい夢を口にする。


「俺も……レッドの役に立ちたい! 大きくなったら俺もおじさんみたいなニセモノレッドになれるかな!?」

「〝ニセモノレッド〞か……」


 緋織の言葉選びが気に入ったのか、〝ときか〞は優しく頷いた。


「勿論! そうしたら、レッドに伝えておくね。〝僕の正体を見破った協力な味方が出来た〞って。

 待ってるよ。緋織くん」


 そう言って、緋織の前に差し伸べられる〝ときか〞の手。


 その手を握り返した瞬間から、緋織はヒーローと、それを支える誰も知らない〝ニセモノのヒーロー〞に憧れを抱くようになった。


雪子:やっほ~。雪子だよ。

捺花:株式会社宮園プロダクション所属《Vision》のマネージャー、

   早川捺花です。

雪子:お姉ちゃん、相変わらず固すぎ(笑)

   仕事のことばっかり考えてるから、彼氏が出来ないんじゃない?

   お母さんが心配してたよー。

捺花:なっ! 今はプライベートのことは関係ないでしょう?

   それに仕方がないじゃない。

   毎回予告で《Vision》の子達が自由過ぎるから、

   最後くらいしっかり予告をさせないと!

雪子:……で、それで何で今、お姉ちゃんが予告してるの?

捺花:さっきスタッフさんから

   「せっかく姉妹がおいでなら、姉妹バージョンも録っておきますか?」

   って……。

雪子:流されたねー。お姉ちゃん。

捺花:……でも、一度仕事を振られた以上、

   最後までやり遂げるのがプロのマネージャーってものよ!

   行くわよ、雪子!

雪子:う、うん。   

雪子&捺花

  :次回『23rd Stage やっとわかった! 〝私〞の願い!!』

   お楽しみに!

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