目次 次へ PR 1/12 プロローグ 久瀬(くぜ) 理人(りひと)は、感情を持たない。 少なくとも、そう定義することで、彼の言動はすべて説明できる。 言葉は常に正確で、そこに揺らぎはない。 そこにあるのは、事実と論理だけだ。 だから彼は、誰にも影響されない。 ——はずだった。 朝比奈(あさひな) 心春(こはる)が、彼の前に現れるまでは。 ——と、書いて、未羽(みう)は手を止めた。 ノートに目を落とし、今しがた書き終えた文章を読み返す。 “久瀬理人は、感情を持たない” その一文を、未羽はもう一度なぞるように見つめた。