帰還
洞窟と言っても洞穴に近い感じだった。
5〜6メートルぐらい進むと気配を感じた。そこには裸の女性達がおり、みんな怯えた顔でこちらを見ている。
『皆さん!! 近くの村から救助要請があり助けに来ました!早くここを離れましょう 着いて来てください!』
そうすると、泣きながら抱きついてくる人もいればお互いに抱きしめ合う人もいた。その中で、1人だけ俯いて泣いてる女性がいた。
『もしかして、ハワードさんの娘さんですか?』
ハッとこちらを見て抱きついてきた。
『怖かったです…でも必ず父が助けてくれると信じてました…』
いや…厳密には俺が助けに来たんだけど…
まぁいいや!!とりあえず離脱しよう。
全部で5人。近くにある木箱には衣服や冒険者の装備があった。
女性達には服を着てもらい、俺は革の鎧を拝借した。
木刀は今にも折れそうなので、ここでお別れした。
『ありがとう』
小さく呟き壁に立てかけた。ボスゴブリンの死体から青龍刀らしき武器を拝借し、荷馬車で下ろしてくれた場所まで皆を引き連れて歩いて行く。
道に出るとハワードさんが迎えに来てくれていた。
娘と熱い抱擁を交わした後、みんなを荷台に乗せて村まで戻った。
俺はここまでは意識があったが気づいたら村長の家にあるベッドで寝ていた。
肩には丁寧に包帯が巻かれている。
体を起こすとドアが開きハワードさんが現れた。
『気づきましたか!! よかった… この度は本当にありがとうございました!』
隣には娘さんもいる。ひょことハワードさんの背中らから出てきてお辞儀をしてきた。
『ありがとうございました…本当にありがとう…』
泣きながらお礼を言われて、自分がしてきた事を思い出した…
人としてあるまじき行動だ…生き残る為に非道な手段を取った。戦闘員を狙わず、非戦闘員を狙う。
生き残る為…
『ハヤトさん! ハヤトさん!』
ハッと顔を上げるとハワードさんが詰め寄る。
『貴方は私の恩人です!! 一生掛かってもこの恩は返します!』
俺は我に返った。狩るか狩られるか。生き残った事に今は安堵しよう。
『ハヤトさん私たちは首都に向かいたいと思います…そこでハヤトさんにお願いがありまして…』
お払い箱かとため息がでる。そりゃわけわからない人とは関わりたくないだろう。
金を払って、さようならした方がいい。ましては恩着せがましく寄生虫みたいにこられたら面倒だよな…
『ハヤトさん、護衛をお願い出来ないでしょうか』
うん?護衛?
一瞬戸惑ったが、やはりこの人は信用出来る。
卑屈になっていた自分が恥ずかしい。
ありがたく承諾すると横になった。
ハワードさんは俺の傷が癒えてから出発するそうだ。今はゆっくり休もう。
報酬の金貨50枚…ムフフ…首都か…
あんな事やこんな事…楽しみすぎて眠れない…
遊びまくってやる!!