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神物語 つまり私が本当の神様になった世界でのお話  作者: 大倉士和
第4章 冒険の始まりに

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第4章8 一緒に冒険に行こう

(──あ、わかります! この広場で、魔力をまとっている人たちも、わかります! ひときわ大きくゆらいでいるのがあります。──あ、やっぱり、お二人はわたしと念話の魔力をつなげているのに、ほとんど感じられない。すごい)


 魔素が感じられるようになると、世界がひらけて気が大きくなる。ウェスタもやや興奮状態にあった。


(魔素を感じられない者は、魔力を広げることで、探知や感知をおこなっている。それだと、探知や感知をやっている自分の存在を、周囲に知らしめているようなものだ。だから魔素を通して、魔素探知や魔素感知をやるんだけど、それが誰にもわからないかといえば、そうでもない。ということで、ミリフィアはその理由、もうわかってたっけ?)


(魔力は人の欲望だということは、実感できてます)


 ミリフィアが静かに答える。つづけて、


(でも魔素は人の意識に反応しているんです。──ですよね? だからもっと繊細に魔素を感じていると、魔素を通して人の意識が感じられます)


(ミリフィアは、この広場にいる人々の意識をとらえられる?)


 私は立ち止まった。


(ここから目で見える範囲内なら、なんとか……)


(ウェスタは?)


 ウェスタは目を閉じていた。


(──これはどういうことでしょう? こうして魔素で人々を感じていると、わかります。人って、そんなにまわりのことを意識していないということでしょうか? それに比べ、アトマやミリフィアの意識は、広場全体というか、それ以上に広がって存在しているような気がするんです。魔力とは正反対だから、この感じ方自体が、間違っているのでしょうか?)


(間違ってないよ。ぼくらはいま魔素探知をしているから、ウェスタはそれを敏感に感じとったんだね。上出来。ふつうの人が、まわりを気にしていない、というのもその通りだよ。ただ、おかしなものが視界に入ると、人は意識を傾ける。そうなると気づかれてしまう。だったら、どうすればいい?)


(──えっ、あっ、どういうこと? ──消えました! あの子が、ミリフィアが、いない!)


 ウェスタは目を見開き、あたりをきょろきょろとする。驚きを隠せず、ミリフィアの姿、存在もなくなっていることにも気づいて、


(ミリフィア──が、いません! ──えっ、あ、……アトマも……?)


 そのとき、上空──雲の上に、ミリフィアの体はあった。


(隙をついたと思ったのに──)


 転移して私がやってくると、ミリフィアは念話で愚痴をこぼす。


(神域には、あえて、入らなかった?)


(あえて、入る必要がないと思ったので。──大きいというか、壮大ですね、ここから見える景色、眺めは。ほんとうにこの星が丸いってとわかったけど、大きすぎ。人が──いえ、自分が、ちっぽけな存在に思える)


 ミリフィアは、上空に向けて魔素探知をし、意識を上空に飛ばした。そして肉体を瞬間移動させたのだった。


(さっき、下から空を見ていたんです。そしたら雲が輝いていて、あの上に行ったら、どうなるのかと思って……)


(転移で上空という発想はふつうはないからね。もし地上で魔素感知していたとしたら、相手のいた魔素がふと軽くなって、まるで突然消えたように感じられる。ウェスタはミリフィアが消えたと思ってるよ)


 私たちは、広場に一人取り残されていたウェスタの元に戻り、何気なく姿を見せる。


(どこ行ってたんですか? アトマも──)


(ミリフィアが気配と一緒に姿を消したからね。追いかけて連行してきたよ)


 軽口をたたく。が、三人とも念話で話しているので、まわりに見えている態度としては、互いに知らんぷりだ。ミリフィアが、


(気配を消すって、こういうことですよね。──目立たないようにすること。ここでは通行人にまぎれてただの通行人を演じてる。──でももし、もう誰かに魔素探知や魔素感知されてたら、逃げられませんよ、絶対に。だからアトマは、最初から正体を隠したただの旅人なんじゃ?)


(ま、べつに正体を隠すのが目的じゃないけど、目立たないほうが、気が楽だし、いろいろ楽しめるんじゃないかな。あとは、自分ができることをするだけ。それを極めるだけ。他人に自慢したり、見栄を張ったり、格好をつけたりする必要はないよ)


 私たち三人は、広場の中央を横切って、城門の出口に向かって歩く。そこは、騎士団が取り囲んでいて、検問をしていた。


 ──やっぱりか。ウェスタの運命からは逃れられないようだ。


(ウェスタ、これから神域に入るよ。さっき教えた魔素で、自分の周囲全体を感じてみてごらん。自分の意識を、自分の肉体から切り離す。それに成功すれば、時間が止まる。いや時間が止まって見える。でもそのとき、自分の体を強引に動かそうとすると、大量に魔力を消費するから、そうなるとウェスタは気を失ってしまうかもしれない。じっとしているんだよ。──じゃ、合図を出す。ぼくが手を上げたのを、魔素でとらえたら、時間が止まるイメージをして。三人、タイミングを合わせよう)


 私たちは神域に入った。ウェスタも当たり前のようについてこれている。


(──うまくいったね。それじゃ魔素探知をする要領で、城門のトンネルをくぐって、外まで意識をもっていくよ。──ウェスタ、意識が自分の目指した場所についたら、そこに自分はいるんだ、と思うだけでいい。気づいたら転移しているはずだ。じゃミリフィアもいい? さきに行って待ってる──)


 内界においては意識を同じくする。私の意識の移動を感じとり、私の意識が消えると、二人は私の身体も移動したんだとわかる。ミリフィアが後につづく。それを意識して、ウェスタも試みる。


 城門の外、人々の集まっているところから離れたところに、ウェスタは、私とミリフィアの後ろ姿を見つける。近づき、──ここにいる、と思ったら、肉体もその場所にあった。


(──体を動かさないで)


 私から警告的な念話を受ける。私がそうしたのは、ウェスタはミリフィアと違い魔力量に限界があるためだ。つづいて私が、


(呼吸するイメージで神域から出られるよ)


 そう言うと、時間が動き出し、彼女は前屈みになって片膝をついた。外界での聴力が戻り、彼女の耳には人々のざわついている声が聞こえてくる。


(転移できたね。大丈夫? 初めてだったから魔力酔いもあるはずだけど、つぎはもっと楽にできるはず。もし自分一人でやる場合には、神域に入るまえに、自分でちゃんと移動先を下調べしてからだよ)


(──完璧……ですね。目立たせない転移……)


 膝をついてうつむいたままウェスタが私の念話に答える。


 城門の外側には、なかで騒ぎがあったこともあり、厳しく検問していた。そのせいか人が大勢いた。が、自分たちが突然転移してきたのにも関わらず、驚いたようすもない。人々の盲点をつき、タイミングをはかったからだ。ウェスタはそのこと自体に感心していた。


「──アトマー!!」


 ルルレの声だ。私たちを見つけたのか、やってくる。


「あれ? ミリフィア。アトマはどこだ? いまこのへんにいたような気がしたんだ」


「えっ……」


 ミリフィアもそう言われて、探す。が、見当たらない。


「ほんとだ……。いない……。どこ行ったんだろ……」


 ──本当に不思議だ。ありえない。ミリフィアは状況が理解できないでいた。


(それじゃ、ウェスタ。ここでしばしのお別れだ。この近くに乗合馬車が停まってる。それに乗って好きなところに行くといいよ)


(──え、あ……)


 ミリフィアは、姿を消した私の念話が届いたことに驚くが、ウェスタも一緒に行くことになったと思っていたので、そのことにも驚く。ウェスタは、


(ありがとう。本当にいろいろと。心から感謝しています)


(ミリフィアはルルレのこと、よろしく。ぼくは気配を消して、もうしばらく身を隠しておくよ。ルルレが師匠になってくれとやかましいからね。それとミリフィアは、魔素探知や魔素感知をされていたら、絶対に逃げられないって言ってたよね? ぼくがいまどこにいるか、わかる?)


(空……ですか? でもいま、ここにいたはずなのに……)


(それはフェイクだよ。ミリフィアが魔素でとらえていたのは、ぼくが魔力でつくりあげたぼくのニセモノだ。魔力のみで姿形はない。だから目で見ようとしても見つけられないのは当たり前)


(でもこうして、念話でつながっているから、あとを追えますよ!)


 ミリフィアはだまされていたことに少々怒っていた。


(そうかな。追った先にあるのも、フェイクだったら? そして、そのフェイクにつながる魔力にも、複数のフェイクが仕掛けられているとしたら? ──意地悪しているわけじゃないよ。絶対はない、ってことだよ、ミリフィア。勝手に思い込んで、限界を決めてしまっている自分がいないか、それに気づくことが大事。過信による過ちと同じさ)


 腕組みをし、考え込んでいたルルレが、


「しょうがないか。アトマはあたしの師匠になることは嫌がっていたから。でもあたしはアトマが好きだ。ミリフィア、これから一緒に冒険に行こう」


「──え?」


「心配しなくてよいぞ。アトマはすぐに戻ってくる。あたしにはわかる」

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