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少年の誓い

 「この白い世界は、君が作ってるの?」


 光弘(みつひろ)が問いかけると、黒衣の少年はフッと小さく微笑み、うなずいた。


 「そうだよ。見たいなら、もっと他のものも見せてあげる。」


 光弘がうなずくと、少年は手で印を組み、小さく何事かつぶやいた。


 真っ白だった世界が、一瞬で姿を変え、辺り一面砂浜になった。

 波の音も、肌に感じる潮風も、とても作り物とは思えないほど現実味を帯びている。


 少年は、草原や、街中、清らかな流れに苔むした山中、一面の雪景色、言葉の分からない異国の土地、明らかに違う世界の景色など、次々と景色を変えていった。


 真っ白い壁の家々と、その向こうに広がる、どこまでも青い海。

 丘の上にそびえたつ大きな城からのびる鉛筆のような細い塔。


 その景色を光弘が目にした瞬間。

 少年は、我に返ったように目を見開き、一瞬で白い世界へと景色をかえてしまった。


 「もうおしまい。」


 何かをごまかそうとしている。


 そう思って光弘がいぶかし気に見つめると、彼は硬い表情で目を逸らしてしまった。

 これらの景色は彼が作っているというのだから、恐らく今の景色も彼の記憶の中のものだろう。


 光弘は、今のことには触れず、先ほど思いついたことを相談してみた。 


 「ありがとう。すごく綺麗だ。・・・・同じことが、俺にもできるようになるだろうか?」

 「そうだね。少し練習は必要だけど。出来ない事じゃない。今すぐに使いたいのなら、僕が記憶をよんで、代わりに作ってあげることもできる。」


 光弘の問いかけに、少年はホッとした表情をし、自信ありげに答えた。

 やはり、先ほどの景色は少年にとって触れられたくないものなのだ。


 「もう、嘘はつかない」

 そう少年が言った時。

 彼が、決して違えることのない誓いを立てたのだということを光弘は強く感じていた。


 それは、信じているだとか、そんな温かい感覚ではなかった。

 鋭い刃物を首筋に当てた彼が、その柄を俺に握らせてきたたような・・・甘えのない張り詰めた誓いだった。


 だからこそ、光弘は彼に何も聞かなかった。

 聞いてしまえば、それが例え何だろうと、必ず彼は真実を話すだろう。

 彼自身が、どんなに傷ついたとしても・・・・・。


 なぜ、彼はこんなにも強い誓いを、自分に立ててくるのだろう。

 なぜ、彼は出会ったばかりの自分を、何度も助けてくれるのだろうか。

 

 そんな、いくつもの疑問が頭の中をよぎっていく中。

 光弘は、自分を何よりも混乱させている最大の疑問への答えを見いだせずにいた。


 なぜ、彼が自分の傍らにいてくれることを、こんなにも嬉しく感じるのだろう。


 真也(しんや)たちと出会ったあの日。

 同じように、理由の分からない強い喜びが、自分を包みこんできた。

 その喜びは、今も変わらず光弘の心を優しく照らしてくれている。


 だが、この少年に感じる喜びは、光弘が今までに感じたことのないものだった。


 「なにか、僕にして欲しいことはある?」


 考えに耽っていた光弘は、少年の気遣わし気な声に、我に返った。


 光弘は、少し考えてから、少年に自分の思いついたことを話して聞かせた。

 光弘の話を聞いた少年は、哀しそうに目を伏せた。


 「本当に、それを望むのなら・・・手伝うよ。」


 光弘は、決意を込めた強い瞳で彼にうなずいた。

 

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