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川名 光弘 の物語>出会い 8

誤字脱字あったので、訂正しました。

よろしくお願いします。

 気づけば俺は、あの悪夢に(とら)われていた。


 暗闇の中、周囲を見回すが、母の姿も壊れた車も、いつものように現れることはなかった。

 どこまでも続く闇と静けさに、俺は安堵(あんど)し、肩の力を抜いた。


 だがそれがゆるされたのは、ほんのつかの間のことだったのだ。

 ここにいるはずのない、いてはいけない人の姿を暗闇の中に認め、俺は血が凍るほどの衝撃を受けた。


 どうして!


 闇の中、浮かび上がるように現れたのは、真也(しんや)(しょう)都古(みやこ)の3人だった。

 その事実に・・・・・絶望的な状況に、俺は打ちひしがれる。


 誰にも伝えたことはなかった。

 信じてほしいと誰かに願うには、あまりに空想じみた話だったから。

 だが、重ねられた過去が俺に「ただの夢だと思うな」と、「悲劇は繰り返されるのだ」と、邪悪に微笑んでくる。


 俺にかかわったことで不幸に合った人たちは皆、かならずこの暗闇を訪れていたんだ。


 やめろ!

 こいつらを巻き込むなっ!


 そんな俺の声をあざ笑い、心を(なぶ)って楽しんでいるのか、俺の周りを囲い込むようにして、どす黒い炎が燃え上がった。

 炎の隙間から、真也たちが決死の形相で駆け寄ってくるのが見える。

 黒炎の陰から巨大な3匹の蛇が現れ、メラメラと炎の舌をちらつかせ始めた。


 (よせ!殺すなら俺を殺せ!)


 邪悪な蛇は、こちらをちらりと見やると、俺を助けるために向かってくる3人を襲うため身構えた。


 (だめだ!3人とも、俺に近寄るな。)


 無力さと絶望で、胸がつぶれるような激しい痛みを感じながら、俺は狂いそうなほど強く願った。


 (・・・・・もう誰も・・・失いたくないんだ。)


 その時、どこからか1匹の青い蝶が現れて真也たちの周りを舞い始めた。

 1匹だった蝶は瞬く間に数を増やし、あっという間に数えきれないほどの大群になって視界を覆いつくした。


 渦を巻く蝶の群れは、高く舞い上がり淡い光になって消えてゆく。

 荒れ狂う黒い炎も、蛇も、そして真也たちの姿もそこから消えていた。


 最後に残った一匹の蝶が、ゆっくりと俺の腕に舞い降りてくる。

 いままで見たことのない、透明な青い(はね)をもつ美しい蝶。

 その翅を不思議な思いで見つめていると、いつの間にか目の前に、漆黒の髪に金と銀の二色(ふたいろ)の瞳をもつ、浅黒い肌をした美しい青年が立っていた。


 青年は右手を前に突き出すと、布を(つか)み払いのけるようなしぐさを取った。

 すると、永遠に続いていると思われた暗闇が、溶けるように流れ落ち、辺り一面に静謐(せいひつ)竹林(ちくりん)が広がっていった。


 青年は俺に向かい、無表情に話しかけてきた。


 「人がこのような中にあったとは・・・・・。お前・・・・辛かったろう。」


 そう言って、青年は俺の額に自分の額を寄せた。


 「よく耐えたな。ここは私がみる。安心して、帰れ。」


 表情とは全く違う、柔らかく温かな声と言葉が響き、俺の意識は竹林を吹き抜ける風に溶けるように、おぼろげになっていった。


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