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小野寺都古の物語>出会い 6

 黒蛇(こくじゃ)の消えた跡に目をやり、私は再び神経を尖らせた。

 1匹の(ちょう)が行き場を失い彷徨(さまよ)っているのだ。


 そんなはずはない。

 (へだ)てた空間の中に対象の正体を(あば)き、完全に消滅させたはずなのだ。

 だが、術により役を命じられた蝶は、任を遂行するまで消えることはできない。

 その蝶が残っているという事は・・・・・。


 まさか・・・・・逃れたのか?


 蝶は、ひらひらと辺りを舞っていたが何かに気づいたように、真っ直ぐ光弘(みつひろ)の内へと入っていった。


 (静寂(しじま)。)


 私は心の中で再び名を呼んだ。

 影の中から、手のひらサイズの人の形をした者が現れ、宙を舞いながら(うやうや)しく礼の形をとった。

 背には(あお)く透き通った蝶の(はね)を持っている。

 礼をしたことで、薄水色の長い髪が漢服ににた服の上をサラリと流れ落ちた。


 「(あげは)。彼の中に蝶が入った。一体何が起こっている。」


 私の問いかけに、鳳は可憐な少女の顔に厳しい表情を浮かべた。  


 「恐れながら、索敵(さくてき)においては我ら一族、右に出るものなしと自負しております。黒蛇の一部、もしくはあれを操る何者かが()のお方の(うち)(のが)れ、潜んでいるものかと・・・・・・。」


 やはり、間違いではないようだ。

 蝶の攻撃を受け流して逃れ、更には彼らの索敵をも(まど)わせることができるほどの何者かが、光弘の内にいるのか。


 「申し訳ありません。」


 肩を落とす鳳を手に止まらせ、私は指で優しく(あご)をあげさせた。

 術を組んだのは私だ。

 私の望み通りに力を貸してくれた鳳たちが責任を感じるのは筋違いだろう。

 責任があるとすれば、それは私の方だ。

 光弘の中に潜む者を打ち倒せる力が私にはなかった。

 私の力が及ばなかったということなのだから。


 「鳳。気に病むな。お前たちの力がなければ、潜む者に気づかず取り逃がしてしまっていたのだ。ありがとう。このまま私に力を貸してくれるか。」


 そう言って(ほお)を寄せると鳳が嬉しそうに舞った。


 「我が(きみ)。彼のお方の内に入った蝶は、目標を見失いその場に(とど)まっております。・・・・・秋津(あきづ)、ここへ。」


 鳳の呼びかけに応え、和装の精悍(せいかん)な青年が音もなく現れた。

 鳳と違い、人間と変わらないサイズをとっている。

 隙の無い動作で片膝をつき(こうべ)()れた。


 「蝶と共に秋津を彼のお方に憑かせましょう。」


 「ありがとう。秋津、悪いが頼まれてくれ。」


 秋津は短く返事をすると、一瞬で姿を消した。

 鳳の右腕である秋津が見守る中であれば、何者であろうとうかつに動いたりはできないはずだ。

 鳳を影に帰すと、私はなにごともなかった風を装い勝の元へと歩きだした。



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