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HandG2  作者: 竹内緋色
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2.土居四葉の事情

2.土居四葉の事情


 今からちょうど一か月前の話だ。

 私は気味の悪さしか感じない家の前で幼なじみが出てくるのを待っていた。そして、少し経ってから出てきた幼なじみと喫茶店に行った。田舎では喫茶店などとても珍しい。特にここの特別なパフェは絶品である。

「明くん。部屋の外に出られるようになったんだよ」

「あら、そう」

 私は美味しいパフェを食べている途中に吐き気を催すようなクソの名前を聞かされて吐き気を催した。でも、幼なじみの乃木ココアは楽しそうに私に話している。

「もうすぐ学校に来れるかな」

「さあ」

 明というのは赤嶺明と言って、とりあえず、いけ好かないクズだ。子どもの頃から行け好かなかったのに、高校に上ってからさらにいけ好かなくなった。何故なら、理由もなくヒキコモリになったからだ。

「そもそもどうしてアイツが私たちと同じ高校に来たんだ」

 私とココアが一緒の学校に行くのは分かる。なにせ、私とココアは運命共同体だからだ。神が突き放そうとしても決して離れることはない存在なのだ。だが、私とココアの間にあのクソッタレは常に割り込んできていた。

「天先輩が頑張って勉強を教えてたみたい」

「天さんか」

 あの男がいけ好かないのは、あの男には姉妹がいて、その姉妹がいることがとてつもなくうらやましいからだ。才色兼備の天さんに、運動神経抜群の愛され系の大地ちゃん。くそっ。ずるいじゃねえか。

「ほんと、何が不満でヒキコモリなんざやってるんだか」

「きっと明くんにしか分からない悩みとかあったんだよ」

「ココアはあのバカに優しすぎだ」

「四葉ちゃんが厳しいだけだよ」

 いや、決してそんなことはない。私は普通だ。あのクソの周りが甘やかしすぎなだけだ。

「天さんがいながら……」

 それに、あの家には少し懸念事項がある。

「ココア。あまりあの家には近づくな」

「どうして?明くんがいるから?」

「それもある」

 確かに、あの男と同じ空間にココアを一緒にしたくはないという理由もあるが、なにより、あの家は危ないのだ。

「私の忠告は聞いておくべきだ」

「そうだね。四葉ちゃんのそういうの、よく当たるし」

 でも、きっとココアは赤嶺家へと再び足を踏み入れるであろう。ココアは優しいのだ。


 私はココアと別れて、坂道を行く。坂道の先に私の家がある。

 険しい坂の先。そこには縦に長い家があって、その家の周りを大層な木の塀が囲っている。ちなみに家の裏手は墓だったりして、とどのつまりは、私の家はお寺だったりもする。ただ、少し普通のお寺とは違うのだ。

「ただいま」

 木の門をくぐり、詰所代わりの家に入って行く。そこそこお寺というのは儲かるので、家は大きい。

「なにやらよくない匂いがするな」

 禿げた坊主が私にそう言う。普通はおかえり、だろうが。

「たばこのにおいではないでしょうか。喫茶店に寄ったもので」

「四葉。なにか隠しているな」

 別に大したことじゃないのだ。でも、このクソ坊主、つまり、私の父にかかれば、小さなことが大事になってしまう。

「何も隠しておりません」

「霊はたとい神霊であろうとも生かしてはならぬ。一匹たりともだ」

 物凄い執念だけれど、格好のいい小説の主人公のような、暗い過去が私の父にあるわけではない。ただ、生真面目すぎるのだ。ただ、それだけ。

 私はそんな父親とか、家のしきたりがすっかり嫌になっていた。霊を成仏させなければならないということは分かる。だが、それほどまでに目くじらを立てる必要はないと思うのだ。父は悪霊でさえない霊でさえも残らず殺そうとしている。

 だから、父の手にかかれば、あの家に住み着いている霊も簡単に倒されてしまうだろう。

「はあ」

 私は自分の部屋に入る。寺だから家は和風建築で、部屋を仕切るのは襖であり、ドアなどついておらず、ガラス張りの引き戸がドア代わりだ。周りの部屋は空き部屋なので、結構気楽ではある。本来ならばお寺で修業するお坊さんが空き部屋にいるはずなのだが、昨今?の神仏離れ?により、お坊さんを目指す人が減っている。うちはただでさえ異端の宗派なのだから、仕方がない。

 そして、一人娘である私はその宗派をつぐことになっていた。

「はあ」

 その事実を思い出すとため息が出る。別に家を継ぎたいわけではなく、また、継ぎたくないわけでもない。ひどくアンバランス。結局私は一人では何も決められないのか……

 そんな時、何故かあいつの顔が浮かぶ。

 どうしてあんなクソ野郎が出てくるのか。

 私はアイツとは違う。アイツの方が私よりクズなのだ。

 私はそうやって否定しながらも心の奥底できちんと理解していた。

 アイツは私よりもしっかりと生きている。自分の意志でヒキコモリになることを決めたのだから、と。

「ああ、くそっ」

 本当にやるせなくなって、私はパソコンを起動させる。

 『ツウィンクルスターオンライン』。私がずっとはまっているゲームだ。私はゲームキャラを駆使して移動させながら、今日も彼がいないことを心配する。

 ずっとサーバー内でトップだったユーザーが最近ログインしていないのだ。私は学校に行っていることもあって、どうもずっとログインしている彼には勝てないでいた。それでも、彼も私の実力を認めてくれているらしく、最近少しずつ話すようになったのだ。

「ああ、くそっ」

 彼はやる気を無くしてしまったのだろう。このゲームを初めてプレイしたときから憧れだった彼。そんな彼が引退気味というのは、本当にやるせない。

 世の中、本当にやるせない事ばかりだ


 HandGのリンクを張ることができればいいのに、と思う。どうやらそういう機能はあるらしい。だが、使い方がわからない。なので、頑張って見つけてください。

 機械音痴で本当にすいません。

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