表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/20

義兄義妹

いつも歩く廊下が、異常に静かだと感じた。

それは何か悪い予感のを感じさせる、そんな静けさ。

「ただいま…って、あれ?」

部屋には誰も居ない。

それどころか、

もぬけの殻

としか言いようがないくらい何もなかった。

「…まさか…‼︎」

隣の部屋を開けるが、そこも同様何も無い。

人がいた痕跡すら。

「まじかよ…早すぎるだろ…」

思い当たることはただ一つ。

「裏切られた…‼︎」

二重スパイ、とでも言うのだろうか。

彼らは向こうに雇われたまま、きっとここへの潜入でも命じられたんだろう。

"シグレ達の敵のボス。俺たちの雇い主。"

少し前にクロが言っていた言葉を思い出した。

気付けば良かった。

後悔しても遅い気はするが、とにかくこの事を伝えなければ。

そう思い、司令官室へと走る。

すれ違う人みんなが、俺を不思議そうな目で見る。

それに構わず廊下を走り抜け、階段を駆け上がる。


「っ…マコ‼︎」

司令官室の前、血を流しうずくまるマコの姿があった。

「…シ、グレ…か」

「ごめん‼︎あいつら、思ってたより早く…‼︎」

「あや、ま…るな…」

その姿を見て、自分のしたことがどれだけ愚かだったかを思い知る。

マコを抱き起こし、傷を見る。

「すぐ救護班呼ぶから…っ」

応急手当で何とかなるような傷じゃないのは明白だ。

大急ぎで救護班を呼びつける。

「ごめん、本当に…俺が…連れてこなかったら…っ」

「バカ…泣くな、よ…」

彼の手が頬に当てられ、こぼれ落ちる涙を拭う。

「でも…‼︎」

「たいしたこと、ないから…」

「大したことあるっつーの…」

優しい言葉が涙を溢れさせる。

でも、いつまでも泣いては居られない。

「…救護班くるまで、動いちゃダメだから…」

マコを壁にもたれさせ、目元を拭いながら立ち上がる。

「俺、行ってくる。あいつら、始末しないと…」

「シグレ…?」

「心配いらないって。

いつも通り、しっかり仕留めて帰ってくるから。」

「い、くな…」

止めないで欲しい、決心が揺らぐから。

「じゃ、行ってくる…マコ兄」

見抜いているのは分かってる。

本当は全部お見通しなんだろうって。

それでも、もう後には引けない。

今すぐあいつを…あいつらを殺さないと…

そんな使命感が俺を突き動かした。

俺を救ってくれたマコ兄に、恩を返さないと。



止めないと…

あいつは行ってしまう。

何故か分からないが、もう戻って来ないような、そんな気がした。

「じゃ、行ってくる…マコ兄。」

霞む視界で、シグレが離れていくのがわかる。

止めたいのに、体は痛みで動かない。

今一人で向かう事は、きっと自殺に行くようなものだ。

何があいつを動かすのか、確実に事を成すのがシグレのスタイル。

でも、今は万全じゃないはずだ。

相手の事が分かれば、逐一報告にくるのにそれが無かった。

もしあいつが、感情だけで動いているのなら…

そう思うと尚更止めなければと思う。

「マコさん‼︎」

救護班と共に見知った奴が駆け寄って来た。

「…ムノ…あいつ、を…シグレを…止めて、く、れ…っ」

同期のこいつなら、そう思い立ち声を絞り出す。

「シグレ…?」

「俺、の…義妹…」

「‼︎…分かった、任せて!」

走るムノの姿を見送り、意識が離れていくのを感じる。

もうあいつに…あんな思いをさせたくない…

途切れる意識の中、過去の事を思い返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ