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地獄世界のヘルヴェルト  作者: 生獣屋 芽怠
第四章 赤き世界
19/75

幼き存在

 

 驚愕の眼は一つの存在を捕らえて離さない、佐波が信じられないと動揺の色を隠せない。

 ソフィーネオが皆川の精神世界を具現化して出したものが皆川の幼き頃の姿だったのだから無理もないだろう。


「これは一体どういう事なんだ? 何で幼いまこちゃんが出て来るんだよ?」


「まああら、可愛い子ねえ。スミスが子供だったころを思い出すわ」


「ソフィ……お姉ちゃん、これは一体どうなっているんだ? 確か悪魔の分身を抜き出す筈じゃ無かったのか?」


 そんな問い掛けを放つが肝心のソフィーネオは「おかしいねえ?」なんて気の抜けた事を言いやがる。

 呑気な事を言ってないで説明して欲しいと思っていた最中、精神世界から具現化された小さな皆川が口を開く。


『……ここはどこ? おにいちゃんやおねえちゃんたちはだれ?』


「ま、まこちゃん……なのか?」


『あれ? どうしておにいちゃんはわたしのことまこちゃんってよぶの? そうよんでいいのはしゅーだけなんだよ?』


「お、俺がしゅーだよ。佐波峻だ」


『おにいちゃんが……しゅーなの?』


 仮説だがこの皆川は小さな時の記憶そのものではないのか? それをそのまま具現化してしまった為幼い姿なのだろう。

 成長した佐波の姿に気付かないのもその為では?


『ほんとうにしゅーなの、おにいちゃん?』


「ああ、俺は佐波峻だよまこちゃん」


 小さな存在は地に降り立ち佐波へと歩み寄って行く。

 佐波の顔を覗き込みじっと見詰めた。


『う~ん、すこししゅーっぽいかおだな~。おっきくなっちゃったんだ……あれ? なんでわたしはおおきくないの? あれあれ?』


「あの~先輩、リリリはなんだか拍子抜け何ですよう」


「それはオレもだ。……どうするんだお姉ちゃん?」


「まああら、どうしましょうねえ?」


 小さな皆川は佐波を見ながら頭を横にして訳が分からないと混乱を示す。

 その姿が可愛らしくて微笑ましくなった。


「でも、おかしいわねえ」


「何がだソ……お姉ちゃん?」


「あのね、あの女の子から邪悪なオーラがバンバン流れて来るの。スミスは力を探るスキルをもう少し練習なさい」


 邪悪なオーラ? 精神を研ぎ澄まし、皆川を集中して観る事にする。

 可愛らしい笑顔からは想像出来ない程の邪悪さが手を伸ばす如く漂う。


「さ、佐波離れろ!」


「何?」


『あはは、おにいちゃんおそいよ』


 次の瞬間にまるで玩具の様に佐波が宙を舞う、くの字になりながら壁にめり込んだ。あの小さな足が佐波の腹を蹴り飛ばした。


『あははは! おにいちゃんよわい~!』


「がああっ! ごふっ!」


 口から大量の血液が世界に現れ地面を塗りたくる。異常な量だ、もしかしたら内臓が潰れたのかもしれない。


「佐波!」


「うううーーっ! あらびっくりですよう!」


「まああら、わたしの嫌な予感は的中ね?」


「お前ら呑気な事を言ってるんじゃない! 佐波を攻撃したんだ、あれは敵なんだろ? なら……」


 殺す。しかし可愛らしい笑顔をオレは砕けるのか? 見ているだけでエティオやネリスを思い出す、刃を向けるのに抵抗を感じてしまう。


「殺しちゃったら本体は二度と目覚めないわよ?」


「な、なんだと!」


「良い? あの精神体は本体の小さい頃の記憶を媒介にして形作っているわ、つまり本体には今幼い頃の記憶が無く、穴が開いている。簡単に言うと川の真ん中に穴が開いて水が落ちてしまう、穴は記憶と考えてね? その穴を塞がなければ水は通らず川にはならないの……分かるかなスミス?」


「相変わらず回りくどい説明だな、要するにあれが元の場所に戻らないと皆川は目覚めないんだな?」


「はい、良く出来ました」


 ならどうしろと言うんだ、皆川が佐波を攻撃したんだぞ?

 大切な恋人を攻撃したんだ、つまりあれは皆川ではない、と言うのか?


『あはは、しゅーからいっぱいちがでてきたね! きれいなあかいろ~』


「がはっ! ぐっ……お、お前は誰だ?」


『わたしはみながわまことだよおにいちゃん、おにいちゃんがいうまこちゃんなんだよ? そんなこともわからないの? あはは、おにいちゃんはおばかさんなんだね~!』


 一歩前へ進み、もう片方も前へ。無邪気な笑いを響かせながら佐波に近付く皆川。


『おにいちゃんはよわいね、すこしこづいただけでとんじゃうんだもん。あはは、そうだおにいちゃんをいじめてあげるーー!』


「させるか!」


 じっとなんかしていられなかった、あのままでは佐波が死んでしまう。皆川を消滅させない様に戦うしかない。

 鎌を反対に持ち替え、刃の無いところで殴り掛かる。皆川はそれに気付き、まるで風船の様に空中へと逃れた。


『あはは! つぎはおねえちゃんがあいてなの? あそぼあそぼ! わたしをたのしませて!』


「く……子供相手はやりにくい。可愛い顔なのにな……リリリ! 今の内に佐波の治療を!」


「あいあいさーーですよう!」


 あれからは悍ましい気配を感じる、ソフィーネオが自分の術に失敗するとは考えにくい。

 しかし出て来たのは小さな皆川だ。どうする?


「スミス、手伝いましょうか?」


「お姉ちゃんは何もするな! お前は力を軽く使っただけでもこの部屋を吹き飛ばせるだろうが!」


「まああら、お姉ちゃんにお前なんて言っちゃダメだよ?」


 のほほんとした口調でそう言われたら気が抜けてしまう、緊張感漂う場所で良くもあんな緩い様な言葉を言えるものだ。


「とにかくどうすれば良いんだお姉ちゃん!」


「困ったスミスって可愛らしい。そうね、とにかく消滅させない様に捕まえて? そうしたらわたしの力で何とかしてみるから……もしわたしの予想が正しいなら、何とかなるわ」


 良く分からないが、とにかく皆川を捕まえれば良いんだな?

 良し、それなら何とか出来そうだ。


「今の言葉、信じて良いんだな?」


「お姉ちゃんが嘘言った事ある?」


「いっぱいある」


「……それはこっちに置いといて、今は真実しか語らないの!」


 なんだか頼りないが仕方ないか、方法はそれしか無さそうだから。

 背中から翼を生えさせ、空へと飛翔する。


『あははは! おねえちゃんすごいね、はねがあるんだ! いいな~……わたしそのはねほしい! とっちゃうから!』


 真っ直ぐにこちらに進撃してきた皆川をヒラリと回避し、簡単に後ろを取る。捕まえようと手を伸ばした時に皆川の背中から何やら黒い物体が砲弾の様にオレへと向かってきた。

 咄嗟に鎌で切り裂いてやると体液を撒き散らしながら二つに分かれ、崩れる様に世界から消えた。跡形も無く。

 元々は精神世界のものだ、現実で消えれば消滅し、跡形も無くなる。しかし今出て来たのは見間違いか?

 黒い蟲。

 それが皆川の背中から飛び出しやがった。


「なんだこれ……」


『あははは、わたしのともだちなんだよ! さあ、そのはねをくわせて、むしらせてあげる!』


 まるで噴水が空に放たれるかの如く黒い蟲が背中からわらわらと這い出て少女の肩に。肩だけでは無い、腕、腹、太股、服の下全てに蟲が動き回り異質な風景を描く。

 皆川の頬にも蟲が粘液を付けながら這いずり回る悍ましい光景がそこに。


『あはは、みてみて、これみんなわたしのおともだちなんだよ? かわいいでしょ? このこたちがね、おねえちゃんのないぞうがたべたいっていってるの。だから……おとなしくしてね?』


 一斉に黒い物体が襲いかかって来た、体を折り曲げ、戻す勢いでオレに飛び付く。

 それを黙って受け入れる気は毛頭無い!


「ふざけるな!」


 迫る黒を自慢の鎌で次々と切り裂いて消失させてオレに挑んだ愚かさを教えてやる。

 出て来た蟲を全て倒すと皆川が何故か笑っていた。


『あははは! おもしろいおもしろい! もういっかい、もういっかい!』


 更なる蟲が背中より現れ全身へと回るが、一体あの蟲はなんだ? 地獄の住人でランクDに同じ様にものがいるが、あんな蟲は初めて見るぞ。


「スミス! あれはまこちゃんを操っていた悪魔が持っていた蟲だ!」


 リリリのおかげで傷を修復した佐波が蟲の情報を渡す。

 悪魔が使っていた蟲だと?


「まああら、そうなの? ならわたしの予想が正しい事になるわね」


「お姉ちゃん何か分かったのか!?」


「良く聞きなさいなスミス、精神世界に分身を送り込める程の力を持った悪魔なら、同化する事も出来る筈よ? きっと精神体のあの子は本物だけど、中に別の意思が入り込んでいるのよきっと!」


 と言うことはつまり……。


「皆川の中に悪魔がいて、皆川を操っているんだな!」


「うん、そうよ。スミス、良く出来ましたパチパチパチ……何とか動きを止めてくれたらあの娘から悪魔を分離させられるから頑張ってスミス」


 勝機は見えたかに思えたがしかし、皆川の体にはあの薄気味悪い蟲が這っている。

 羽交締めにしたら蟲共に襲われてしまう。何か捕獲する良い手はないのか?


「スミス時間を稼げ! 俺が何とかする!」


「何か良い手があるのか佐波!」


「ああ、でも時間が掛かる。だから時間を稼いでくれ!」


 佐波の策とはなんだ? 分からないがとにかく時間を稼げば良いんだな? ならば一人よりも二人だ。


「リリリ手伝え!」


「了解ですよう先輩!」


『ちっさいおねえちゃんもあそんでくれるの? あはは、あそぼあそぼ!』


「うううっ! 小さくないですよう! カッチーンと来たですよう!」


 三本の牙を持ったリリリの鎌から青白い光が放たれ、三つの牙の中央に集束を開始。頭部程の球体が完成し、それを皆川に投げ付けた。

 高速で皆川を捕らえ牙を向く、しかし皆川はそれをスルリと回避し嘲笑う。


「うううーーっ! 避けるなですよう!」


「リリリ! お前消滅させるつもりで攻撃したな! 皆川を傷付けるな! 分かったか!」


「うううっ、ご、ごめんなさいですよう先輩。もう当て様とはしないですよう……」


 まったく仕方が無い奴だ。さて、オレ達は時間稼ぎを任されたんだ、やるしかない。

 リリリも四枚の翼を生やし空中へ。


「良し行くぞリリリ、お前は後方支援だ。間違ってもオレに当てるなよ?」


「分かってますよう先輩! リリリは命に代えて先輩には当てませんですよう!」


『あはは、あてっこするの? じゃあつぎはわたしのばんだね!』


 まるで雨を模したかの攻撃が降り懸かって来た、次々と落ちて牙を向きだす蟲が騒ぐ。臆す事なく翼を羽ばたかせて一直線に蟲に突っ込む。

 迫る蟲を鎌で切り裂きながら皆川を目指す。


『わあ、すごいすごい! おねえちゃんかっこいい!』


「下手な芝居はもう止めたらどうだ? お前が皆川に取り付いている悪魔だと知っているぞ!」


『……キヒ、キヒヒヒヒ、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ! なんだバレてたんだ~、ワタシもね、喋ってて段々馬鹿らしくなって来たんだよ。キヒヒヒヒ、どうだよこいつの精神体に融合したワタシを殺せる? キヒヒヒヒ、もし殺したら精神体も消えて二度と皆川真は目覚めない! キヒヒヒヒヒヒヒヒ!』


「黙れ!」


 不快な笑いをかき消す怒涛の叫びが木霊し鼓膜を激しく震わせる。

 これは佐波が放ったものだ、怒りを全て顔に集めたかの様に形相は一瞬オレをもビクリとさせた。


「お前は一体いつまでまこちゃんを苦しめれば済むんだ! お前になんの権利がある!」


『キヒヒヒヒ、だって人が苦しむ姿ってとってもとっても良い表情で、ワタシを癒してくれる、キヒヒヒヒ、その他には分からないよね? この感情は! この歓喜は!』


「分かるかよそんなの! ただ分かる事は一つだ、貴様がいたらまこちゃんが不幸になる、それだけは確実だ! だから貴様だけは許さない! 絶対にだ! ……条件が揃った、絶氷空間を発動させる!」


 絶氷空間? ああ、佐波のあの技の事か。なるほどあれならあいつを捕まえられる。気が付けば寒くなっている事に気が付く。壁、天井、全てが凍っている。


「ああ! わたしの部屋が……」


 掲げた佐波の手から青い冷気が噴き出し部屋全体を覆い尽くして行く。

 とその最中、悪魔が佐波を睨み移動を開始。


『またそれか! させるもんか!』


 絶氷空間を発動する前に殺すつもりか、させるかそんな事。アイコンタクトをリリリに送ると青白い光の弾を悪魔に向け放つ。

 それに気付き緊急回避し上へ逃れた。その透きを見逃す訳が無い。翼を羽ばたかせ一瞬で奴の間合いに急接近し、蹴りをくれてやる。


「おりゃあ!」


『がっ! くそ、この女め!』


 蟲が成分の黒が一斉にオレを飲み込もうと広がり唾液を垂らす。

 しまった、これは避けられない。


『キヒヒヒヒ! 馬鹿な女め! 死ね!』


「先輩!」


 まるで一つの生命体の如く蠢きながらオレを捕捉せんと牙を剥く。


「まああら、大変ねえ?」


 どす黒く蠢く不快な物は一瞬で光に飲まれて行く。

 瞬きを一回した次には跡形が無く、光が目の前に。


『な……なんだこれ』


 光が悪魔とオレの間に浮かぶ。その光には形が存在していたのだ。それは反れた刃、棒の先端に生えた刃は反対側にも同じ刃を持ち、まるで三日月の様な切っ先。

 そう、これは死神の鎌だ。

 死神の鎌の中で唯一“光”で構成された刃、オレの鎌が切れ味を追及したものならこれは究極に“消滅力”を孕む最強の鎌。

 これを使う事を許されたのはただ一人……。


「ダメよ悪魔さん、わたしの可愛いスミスを苛めたりしたら」


 死神王ソフィーネオだけが使う事を許された消滅の象徴とされる死神の鎌。

 あの光に触れた物は何であれ消滅し、この世から消える。


「ソフィーネオ……」


「お姉ちゃん、でしょスミス?」


 片手で光の鎌を握り締めたソフィーネオがニコリと笑う。笑みを贈られた後、ゆっくりと悪魔を見つめ瞼を開けた。見開いた顔は鋭い目付きになり、睨んだ者を縮こませる程怖い。

 消滅の女神、冷徹の微笑み、極寒の太陽、そんな渾名(あだな)を持つ。

 目を開けた顔は恐ろしい、オレが怖いと思うくらいだ。しかしあの顔で微笑むとあらゆる男を魅了してしまう程美しい。

 そんなソフィーネオの睨みは強烈だろう。


「悪魔さん、そろそろおとなしくしてもらいましょう」


『うっ……なんて怖い顔だよ、だがワタシはその程度で……』


 何かを言いかけた時だった、悪魔の両足が一瞬で凍り付いた。

 次は両腕、そして胴体。


『何!』


「捕まえたぞロゼリア! ……ごめんまこちゃん、しばらく我慢してくれ」


 ようやく捕らえたか。まったく人騒がせな、あ、嫌、地獄の住人騒がせな悪魔だ。

 全く身動きが出来なくなってしまった悪魔は最初は抵抗を見せたが、無駄だと分かったのかおとなしくなった。


『くそ、その他のくせに良くも!』


「人間の少年、ご苦労様でした。……おかげでわたしの部屋はカッチンコッチンだけどねえ。さてと、さっさと分離させましょうか」


 ソフィーネオの手が悪魔に乗っとられた皆川の頭に乗せられる。

 すると手に光が生まれ悪魔が苦しみ出す。


『ぎゃあああ! ううっ、ワタシが消えても本体がいるんだ、キヒヒヒヒ、絶対にお前らを殺すからな! 本体がお前らを……』


「うるさいですね、えい!」


 一瞬光が強くなったが元に戻る。その直後皆川の精神体から黒い霧が立ち上ぼり、風景に溶けて行く。

 多分あれが悪魔だったのだろう。

 力無く、悪魔からの呪縛から開放された皆川がソフィーネオの腕に抱かれた。眠っている如く瞳を瞼が遮っている姿は見ているだけで安堵を感じる。


「はいこれで悪魔の駆除完了ね。ではこの娘を本体に帰しますね?」


 眠る皆川の本体へと精神体を届け、精神世界へと帰した。

 光りとなり変わり、本体へと流れゆく。

 気のせいか、皆川の顔色が良くなった様に見えた。


「まこちゃん!」


 一目散に佐波が駆け出し皆川の側へ。眠る最愛者の手を取り握り締め歓喜を味わう。良かったと緊張の糸が切れた。


「これで皆川は助かるんだな? はぁ、良かった。これで心配事は悪魔だけだな」


「うううっ、リリリはなんだか疲れちゃいましたですよう、でもこれで一旦は終わりですよね先輩!」


「まああら、終わりじゃないのよ二人とも……?」


 ニコニコとソフィーネオがこちらに歩いて来るのだが、長年の付き合いからあの笑顔は腹が立っていると読み取る。

 つまり何か怒っている訳で、嫌な予感が牙を食い込ませて主張を開始。


「スミスにはまだお仕置をしていませんでしたからね。人間を匿った罪、箱庭に招入れた罪、そして……わたしの部屋を凍らせた罪」


「ち、ちょっと待て! 最後のはオレじゃないぞ!」


「あの人間でしょ? でもわたしのお仕置は女の子限定なのは承知しているでしょスミス? そんな訳でお仕置よ!」


「そんな訳ってどんな訳だ! って、待て、来るな!」


 だが容赦してくれる訳も無く、ソフィーネオは一瞬の隙に背後に回り込む。

 ああもうダメだ。


「お仕置ですよスミス? 今日は今までで一番凄くしますからね!」


「や、止めろーー!」


 等々ソフィーネオのお仕置が実行されてしまう。奴は両の手をスルリととある場所に伸ばし掴む。まるで意思を帯びた生き物みたいに指が動く。


「まああら、前よりも大きくなってますねスミス! やりがいがありますよ? それそれ~!」


「ぐっ、ううっ……あっ、止めろ、止め……ひゃん! や、止め、ろぉ~、や、やだ! ああっ、んん! や、止めて……きゃふ!」


「うううっ、ソフィーネオ様羨ましいですよう、先輩を好き勝手出来て……良いな~」


 ソフィーネオは何をやっているのか、別に惨たらしい事では無い。ただ単に……オレの胸を揉んでいるだけなのだ。

 こいつは何故か女性の胸を揉むのが大好きで生きがいらしい。どれ程好きかと言うと、元々死神の箱庭には男性の死神がいたのだが、そいつらみんな他の部署に追いやり今ではここには女性死神しかいないのだ。

 全ての女性死神の胸を揉んだらしく、リリリもその被害者だ。

 長年揉み続け、奴はとうとう胸を揉む事に関しては神、嫌、神をも越えるスキルを身につけてしまったのだ。

 ソフィーネオいわく、『わたし胸だけで相手をイカせ……もとい、天国に連れていけます! ここ地獄だけど』だそうだ。


「まあまああらあら! 我が妹ながら小さいけど何て弾力! うふふ、これはイカせ……もとい、天国に連れていく腕にも力が入ります! それそれ~!」


「あ、ああ……やだ、もうダメだ! このままじゃ……ああん!」


「まああら! この恥ずかしげな顔最高ねえ! ほら、次はここよスミス?」


「ま、待て! そこは……ひゃああああああ!」


 唖然として言葉が出ない佐波と、何故か羨ましいげなリリリ。

 そんな二人に見られながらオレはソフィーネオの攻撃(?)に地獄で天国に連れていかれてしまった。


 




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