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稲沢除雪隊〜黒い獣〜  作者: 只野屍
エピローグ
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33/33

あとがき

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。


 この物語の始まりは、雪国では当たり前のように見かける除雪車でした。


 冬の朝、外へ出れば道路の雪はなくなっている。


 けれど、その道は勝手にできたものではありません。


 まだ町の多くが眠っている時間に電話が鳴り、車庫に人が集まり、重機のエンジンがかかる。暗い道路へ出て雪を押し、夜が明けるころには、いつもの道ができている。


 そんな除雪の仕事を物語にしたら面白いのではないか。


 そこから、この話は始まりました。


 そして考えているうちに、まったく別のものが入り込んできました。


 もし、誰もいないはずの雪道に、得体の知れないものが立っていたら。


 除雪車のライトに照らされても、何も見えないほど真っ黒なものが、じっとこちらを見ていたら。


 そこから生まれたのが、この物語の「黒いやつ」です。


 ですから、この作品では怪異を書くのと同じくらい、除雪の仕事そのものを書くことを大切にしました。


 竹を立てる。チェーンを巻く。雪が降りそうな夜には、何時に電話が来るだろうと気にしながら眠る。


 深夜に集まり、それぞれの重機に乗り込み、まだほとんど車の走っていない道へ出ていく。


 雪を押すだけではありません。ロータリーで飛ばし、ダンプで運び、凍った道路には凍結防止剤を撒く。雪が少なくなれば春排雪が始まり、それが終われば、それぞれの仕事と生活へ戻っていく。


 冬の間、除雪車に乗っている人たちにも、それぞれ普段の仕事や暮らしがあります。


 雪が消えれば、また別の毎日が始まります。


 そんな日常の中に突然入り込んできたのが、この物語の「黒いやつ」でした。


 とんでもない異常事態です。


 それでも、雪は降ります。


 黒いやつが出ようが出まいが、朝になれば人が道路を使います。雪が積もれば、誰かが重機に乗って道路を開けなければなりません。


 怪異が現れても、仕事はなくならない。


 恐ろしい目に遭った翌日にも、また雪が降る。


 そんな怪異と日常が同じ場所にある話を書きたいと思いました。


 荒神様と黒いやつについては、最後まで明確な答えを出しませんでした。


 荒神様が壊れた。


 黒いやつが現れた。


 石像を直して、お祓いをした。


 そして最後に、浩志は黒いやつに効いた岩塩を、荒神様へぶちまけました。


 そのあと何が起きたのかは、エピローグに書いた通りです。


 最後に浩志も、一つの可能性に気づきます。


 そして、


「……くだらねぇ」


 と切り捨てました。


 それが本当にくだらない考えだったのかどうか。


 そこから先は、読んでくださった方にお任せしたいと思います。


 雪国の冬には、夜中に重機の音が聞こえることがあります。


 布団の中でその音を聞いていると、少しずつ近づいてきて、やがて家の前を通り過ぎ、また遠ざかっていく。


 朝になれば、そこには道があります。


 普段なら、それだけのことです。


 もし冬の夜中に目を覚まして、遠くから除雪車の音が聞こえてきたら。


 ほんの少しだけ、この物語を思い出してもらえたら嬉しく思います。


 そして、何となく気になってカーテンを開けてみた時。


 雪の降る道路にいるのが、除雪車だけなら。


 きっと、何の問題もありません。


 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

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