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3話ー⑥ 白兵戦と好敵手

ジセンニティとラスゴーグは、互いに距離を詰めた。

『行くぞッ!!』

『来い!!』

甲高い金属音が戦場へ響く。

――ギィンッ!!

剣とハルバートが激しくぶつかり合い、火花が四方へ散った。

ラスゴーグは間髪入れず横薙ぎに薙ぎ払う。

『はぁぁぁっ!!』

ジセンニティは身体を沈めてかわし、その懐へ飛び込む。

『甘い!』

鋭い斬撃がラスゴーグの胸元を狙う。

しかし――。

『遅いッ!』

ハルバートの柄で受け流し、そのまま膝蹴りを放つ。

『ぐっ……!』

ジセンニティは数歩後退するが、すぐに体勢を立て直す。

『やるな。』

『お前もな。』

二人は笑みを浮かべる。

次の瞬間、再び激突。

剣が閃き、槍斧が唸る。

一合。

二合。

三合。

互いに一歩も譲らない。

周囲では魔族兵と聖族兵が思わず戦いの手を止め、二人の一騎討ちへ視線を向けていた。

『その剣……速い。』

『お前こそ、その武器でそこまで振れるとは思わなかった。』

『まだまだだ。』

『それはこちらの台詞だ!』

再び激突。

――ギィン!!

火花が散る。

ラスゴーグは力任せではない。

大振りに見せかけて細かな間合いの変化で誘い、ジセンニティの反撃を封じてくる。

対するジセンニティも無駄がない。

最小限の動きで攻撃を受け流し、隙あらば鋭い剣閃を叩き込む。

『面白い……!』

『初めてだ。これほど斬り応えのある相手は!』

『俺もだ!』

互いの口元に笑みが浮かぶ。

敵でありながら、武人として認め合っていた。

その頃――。

後方で戦況を見つめるヴェゼルの元へ、一人の斥候が駆け込んでくる。

『ご報告!!』

『敵後方より新たな軍勢を確認!』

『三方向より援軍接近!』

『総数、およそ二万四千!!』

レヴァンテが眉をひそめる。

『援軍か……。』

しかし、ヴェゼルは驚く様子もなく静かに目を閉じた。

『やはり来ましたか。』

『ヴァンキッシュ様の読みどおりですね。』

コアードが短く問う。

『戦うか。』

『いいえ。』

ヴェゼルは即座に首を横へ振った。

『精強な兵と屈強な将が揃っていても、策なく戦えば勝てません。』

『ここは一度、戦線を整えます。』

そう言うと、ヴェゼルは空へ一本の信号弾を放った。

藍色の光が高く打ち上がり、北方の空で鮮やかに弾ける。

ジセンニティはそれを見上げ、小さく笑った。

『退く合図か。』

ラスゴーグも武器を下ろす。

『追わんのか?』

『深追いは愚策だ。』

『次に会う時まで、お前の首は預けておく。』

ジセンニティは剣を肩へ担ぐ。

『首を洗って待っているといい。』

『次こそ決着をつける。』

『望むところだ。』

二人は互いへ笑みを向けると、それぞれの陣へ戻っていった。

ジセンニティが本陣へ戻ると、レヴァンテが迎える。

『見事だった。』

『ありがとうございます。』

ヴェゼルも柔らかく微笑む。

『敵を知るには十分な戦いでした。』

コアードは短く一言。

『強かったな。』

『ええ。ですが、次は勝ちます。』

一方、聖族国家連合軍。

ラスゴーグが本陣へ戻ると、ロンダンは静かに頷いた。

『どうだった。』

『強い。魔族にも本物がいた。』

ロンダンは口元を緩める。

『だからこそ勝ち甲斐がある。』

その時、後方から援軍二万四千が戦場へ到着した。

兵たちの歓声が響く。

『援軍だ!!』

『これで押し返せる!』

ロンダンは剣を高く掲げた。

『全軍、態勢を立て直せ!』

『ここからが本当の戦いだ!!』

一方の魔族軍も陣形を整え直す。

魔族一人に対し、聖族は数人でようやく互角。

だが、その数の差は確実に魔族を圧迫し始めていた。

聖族は数で押し切れず。

魔族は質で押し返し切れない。

両軍は互いに決め手を欠いたまま、北方戦線は再び静かな睨み合いへと戻る。

戦場を包む重苦しい空気の中、新たな激突の時だけが、静かに近づいていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。もし「続きが気になる」「おもしろい」と思ってくださったら、ページ下部の【ブックマークに追加】や、評価の値【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、毎日の執筆と更新の大きな励みになります!次回は、明日【21:00】に更新します。

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