59.いざ、ライブ本番! 私は本当に相応しいんだろうか?
『それじゃ、リハーサル終わりです! よろしくお願いしまーす!』
ヘッドフォンごしに聞こえてくるのは、ぶいぱらのスタッフさんの声だ。
そう、私は今、ライブイベントに参加しているのである。
どうやって、2Dのアバターで参加したのか?
我ながら無茶な提案をしたのだ。
それは話題にもなっていた、この曲の#whisperslavechallengeを生で披露することだ。
鼓動、スライム、そして、高速ささやき。
これらをライブで行う提案をさせていただいたのである。
収録の時には、一か所のパートごと全部録音していた。
連続でやるなんて自分でも想像できなかった。
正直言って無茶なのだが、実際にチャレンジしている人もいるわけで、私もやれるはずっ!
そう思って、練習に明け暮れたのである。
一応、リハーサルの時にはうまくいった。
これならやれると運営さんにも太鼓判をもらったし、私も自信になった。
ドキドキしながら、自分の出番を待つのであった。
ぶいぱらの運営さんからは、「いい機会ですし、事務所に来てみませんか?」と言われたのだが、初めて触る機械でうまくできる自信がなかった。
人見知りで緊張してしまうっていうのも大いにある。
それに、お姉ちゃんもこのライブに出るのである。
こんな私が赤の他人のふりをずっと続けられるかわからない。
「……あれ?」
出番が近づいてきたのに、光回線の状況が不安定になっていることに気づく。
嘘でしょ!?
どうしよう、PCを再起動すればなんとかなる!?
うぅう、やっぱり先方にお邪魔すればよかった!
そう思いながらも、とりあえずは連絡だ。
私はスマホからぶいぱらの運営さんにメッセージを送る。
『了解ですっ! 取り急ぎ、ゆめめさんの順番を後にずらします! まずは復旧できるか試してください!』
「あ、ありがとうございます」
ハラハラしながらPCを再起動する。
もしこれで、つながらなかったら一巻の終わりだ。
うぅう、神様、お願いします!
祈るような気持ちでPCを眺めると、無事に回線が復活していることに気づく。
アプリを立ち上げてマイクの設定を確認。
よしっ、大丈夫!
私は胸をなでおろしながら、運営さんにメッセージを送る。
本来は私が出るはずだった場面には前倒しになったとのこと。
『ゆめめさんはあと15分後です!』
いよいよ、緊張してくる私である。
スマホを通じて、他のVtuberのパフォーマンスを見る。
一般参加もOKとのことだったけど、今回、個人Vtuberで参加したのは私だけだった。
他の方はみんな、名だたる企業所属の有名Vtuberばかり。
私の推しである、美影ミレイさんも参加している。
ひぃいい、緊張度MAXである。
『次はぶいぱらの熱唱番長! 音葉うたう!』
スマホの画面が暗転し、その中にうたうさんがスポットライトで浮かび上がる。
その隣にはグランドピアノ。
まさか、弾きながら歌うとか?
曲が始まり、私は衝撃を受ける。
うたうさんはピアノを弾きながら、歌い始めたのだ。
ピアノの演奏を再現する技術力もすごいけど、これを本番でやってのける胆力がすごい。
『引き込まれる!』
『やべぇやつ、選んだな』
『ベストパフォーマンス賞じゃね!?』
チャットも大いに盛り上がっている。
歌って踊るのもすごいけど、これはこれで新しいVの側面のように感じる。
うたうさんの力強い歌声は、ほとんどエフェクトがかかっていない。
生の歌の迫力をまざまざと見せつけられた思いだ。
私、この人と同じ並びで歌っていいんだろうか?
自分を疑い始めて、ネガティブな思考があとからあとから湧いてくる。
『あと何曲?』
『3曲ぐらいじゃね?』
『悠木ゆめめが後に出るらしい』
『誰それ?』
『ASMR』
『知らね』
『歌えるの?』
しかも、である。
チャット欄にはちらほら私に関する言葉も。
それも、ポジティブな言葉とはいいがたくて、うわぁあ、見なきゃよかったとなってしまう。
いや、気持ちはわかるよ。
私は個人Vtuberだし、場違いかもしれないのは私が一番よくわかってる。
胸が苦しい。
リハーサルを終えたときの、自信がしぼんでしまったのを感じる。
大丈夫かな、私、うまくできるかな。
この場所に相応しいのかな?
心が折れかけた、そんな時だ。
スマホにメッセージが届いた。
「Spring Worldさん? ミスティ先生も?」
『ゆめめさんなら絶対できます! ASMRオタクの代表として、力を見せてつけてください!』
『競っちゃダメティ!! 文字味を活かして、楽しんティ!』
「文字味……持ち味? 二人とも……ありがとう」
今回のMVでお世話になった恩人二人からの熱いメッセージ。
思わず涙が出てしまう。
そうだよね、私は私にしかできないことをやるべきだよね。
うたうさんになろうとしたり、お姉ちゃんになろうとしたりするのはやめよう。
相応しいのかなんて自問するのもやめよう。
私は私の音楽をやるしかないんだから!
『ゆめめさん、スタンバイにはいってくださーい!』
ヘッドフォンから指示が入る。
いよいよ、私の出番だ。
マイクを前にすぅと息を吐く。
スライムよし、マイクよし。
カウントダウンが始まろうとしていた。
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