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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第二章 ASMR系Vtuberの私、陰キャのはずがMV作るとか無理すぎます!?
49/62

49.朝霧さん、究極の二択を迫られる

「どうしてこうなった……」


 春野セカイに楽曲提供を頼んだまでは良かった。

 けれど、ミュージックビデオ制作となると、音楽だけで構成されるわけではない。

 ミュージックビデオとは読んで字のごとく、映像になのである。


 ありがたいことに皆が、協力してくれることになった。

 MV用のイラストはふみが担当。音楽は春野セカイが担当。

 そして宣伝を担当するのは……なぜかノリノリのエリカ。

 動画編集は春野セカイの家で皆で行うことになった。


 だけど、もう一つ、別の問題があった。

 歌、である。

 今のままだとゆめめ様はあの提供曲を歌いこなすことができないのだ。

 いや、はっきり言おう、思いっきりキーを外して歌う可能性さえある。

 誰かがゆめめ様に歌の指導をしなきゃいけないのは確実だった。


 普通に考えれば、秘密保持ができるボイストレーニングの教室に通ってもらうしかないだろう。


「とーこ、昔、歌を本気でやってたんだし、教えてあげればいいじゃん? ボイトレ、ずっと通ってたんだし―」


「え、それマジ?」


「そーだよー? 昔のとーこ、すごかったんだからー。ほら、これ見てー」


「ちょっと、エリカ!?」


 エリカはスマホを開くと、とある写真を見せつけてくる。

 そこに写っているのは小学校時代の私だ。

 なぜか歌にドハマりして、素人のど自慢大会に出まくっていたころの私。


「うっそぉ、これ透子なの!? かわいいじゃん!」


「か、かわいいですねぇ!」


 ふみと春野セカイはそう言ってくれるものの、私にとっては黒歴史だ。

 歌が嫌いだったわけじゃない。

 だけど、限界を感じてやめてしまったのだ。

 ものすごく上手い年上の子に負けて以降、私は本気で歌うのをやめた。


「私なんか役にたたないし、そもそも歌はもう辞めたって言ったでしょ?」


「えー、でもさー、ゆうなちゃんの初めてのボイトレの先生になりたくないのー?」


「はぁ? なんで初めてって分かるのよ?」


「私の勘なんだけどさー、絶対、経験ないって、あの子」


「言い方がやらしいんだけど!」


「なにごとも最初の先生が大事って言わないー? セクハラしてくる奴だったら、歌自体嫌いになるかもー。私だったらー、抱き着いちゃうかなー」


 エリカの言葉にハッとする私。

 確かに、ゆうなさんは異性のみならず、同性さえも魅了する魔性を持っている。 

 かくいう私もぞっこんになっているほどである。

 もし、エリカみたいに変態で悪辣なボイストレーナーに捕まってしまったら?


『歌の上達のためには、まずは肺を大きく使うことだよ? ここらへんを使うんだ』


『それに鎖骨や脇周りのリンパを流さなきゃいけないよ?』


『せ、先生、これ本当に歌と関係あるんですか?』


 脳内にあられもない姿のゆうなさんが浮かぶ。


「この腐れ外道!」


「ひぃ、自傷行為!?」


「顔赤いぞ?」


「いつものやつでしょー、どーせ」


 ふしだらな妄想をしてしまった私自身にビンタをする。

 叩くのが強すぎたのか、鼻の血管がムズムズする。

 なんてことだ、ゆうなさんに危険が迫っている!


 推しの危機を前にしたら、私の過去の確執なんてどうでもいい。

 だって、私はゆうなさんに幸せになってほしいから。


 それに、今回のプロジェクトは短期決戦なのだ。

 あと数日以内に信頼のできるボイストレーナーを探すのはかなり難しい。


「……わかった、私がやるわ。だけど、今回だけだからね」


「とーこ、偉いよっ!」


「頼んだよっ!」


 エリカとふみは私の手をギュッと握ってくる。

 まだ成功したわけでもなんでもないのに大げさだ。


「そ、それじゃ、さっそく、キャラ設定しましょう!」


「キャラ設定? なんで?」


「えと、生身でボイストレーニングできないじゃないですか。オンラインでやらないといけないわけで」


「あ、そっか」


 我ながら、バカみたいな声が出てしまった。

 春野セカイの言うとおりだ、いくらゆうなさんがぽやぽやしていると言っても、生身のままで私が出ていくことはできない。

 私が彼女の正体を知っているということになる。

 つまりは身バレからの引退である。

 絶対にできない。


「楽しそうじゃん! せっかくなら、Vtuberデビューしたらいいんじゃね?」


「それ面白そー!」


「え、えっと……ちょっとだけ、いいアイデアがあって……その、アバターなんですけど……!」


 春野セカイは嬉しそうにノートパソコンをいじり始める。

 この人の言う、「いいアイデア」はちっとも期待ができないのだが。


「こっ、これなんですけど……」


 画面に現れたのは、かわいらしい女の子のアバターと、性格の悪い猫のような顔をした獣のアバターだった。


「えー、面白ーい、セカイちゃん、何で、そんなの持ってるの?」


「じ、実は私、Vデビューしようかなと思ったことがありまして、えへへ」


「なるほど! 確かに、巨乳系とケモノ系は需要あるもんなぁ。うわ、でっか、揺れる!」


 春野セカイの示したアバターをよく見ると、私は衝撃の事実に気づく。

 女の子のアバターの胸が異様なまで大きいのだ。


 Hぐらいのサイズで、もはや重そうに見える。

 顔は幼いのに、胸は大きいという、私から見たら男に媚びまくりのデザイン。

 私のそれと違いすぎて、なんか腹が立つ。


「あ、セカイちゃん、実は結構、あるじゃん!」


「ひぃいい、やめてください、ご無体な!?」


 エリカは春野セカイを羽交い締めにして、胸をぐいっと突き出す。

 すると、そこに現れるのは大きな二つの丘。

 なんということでしょう、春野セカイ、この女、持ってる側だったなんて。

 猫背だから全く気付かなかった。


「え、えぇ、ええと、この二つのモデルでしたら、お好きに使ってください! 私、どっちも好きです」

 

「うぅ……、どちらか選べっていうの?」


 しかも、春野セカイはこの二つから私のアバターを選べと言う。

 一方は動くたびに胸がたゆんと動くアバター。

 もう一方は動くたびに長い耳が揺れる獣のアバター。

 嫌だ、どっちも選びたくない。

 そもそも、こんな目つきの悪い獣に歌を教わりたいだろうか?


 しかし、こんなに胸の大きなキャラを選んだら、私のコンプレックスが刺激され過ぎる。

 エリカに絶対にいじられる。そんなの、ありえないっ!


「け、獣で行くわ! ゆうなさんもまさか、私が獣になってるなんて思わないでしょうし!」


 もっともらしい理由をつけて、ケモノのアバターを選ぶ。

 歌を指導するに当たって、どう考えても不適切だと思うけど。

 

「よっしゃー、名前はミスティでよくないー? かわいいでしょー?」


「歌うたいの魔物って設定にしようぜ。年齢は123歳」


「い、いいですねぇ、魔界生まれで、怒ると口からデスボイスを発する設定にしましょう。好物はマンドラゴラで」


「最高だよー、口調も個性があった方が良くないー?」


「ミスティだから、ティとかー?」


 三人がふざけながら私のアバターの設定を盛りに盛っていく。

 まぁ、今回だけだし、勝手にやらせとけばいいか。


 ……なんてことを思っていた私がいました。



「う、歌うたいの……魔物、ミスティですティ!」


 ボイトレ当日の日、私は思いっきり後悔していた。

 私の口上を聞いた途端、画面の向こうで、ゆうなさんが固まる。

 形のいい唇が、ぽかんと開いたままになる。

 私は、その一瞬を永遠のように感じた。


「そ、それじゃ、ボイトレやるっティ!」


 口上は滑っているにも関わらず、語尾に「ティ」をつけて話し続ける。

 なんなの、この拷問!?

 あぁあ、死にたい。


 しかし、ゆうなさんの歌への熱い思いに触発されて、私はやっと自我を取り戻す。

 自分に意識が向いていたらいけないのだ。

 私はボイストレーナー、ゆめめ様の歌唱力を上げるために全力を出さなければならない。

 事実、セッションの後半ではゆめめ様の実力は少しずつ上向きになっていったと思う。



「それじゃ、また次回ティ!」


『ミスティ先生、ありがとうございました!』


 実りのある初回セッションだったと思う。

 だけど、一つだけ気になることがある。


 それは、姿勢だった。

 歌を歌うに当たって、姿勢は命と同じくらい大事なのだ。

 オンラインで教えるにはさすがに限界がある。

 もっとしっかり教えてあげたいのに。


「ゆうなさんに生身で歌を教えるには、どうしたらいいティ?……」


  画面の中の私は険しい顔をするのだった。



 


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