表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第二章 ASMR系Vtuberの私、陰キャのはずがMV作るとか無理すぎます!?
39/62

39.朝霧さん、推しの配信に悶えたりベッドで飛び跳ねたりします

「ついにってわけね……」


 私の名前は朝霧透子。

 今日は私の推しの記念すべき、初コラボの日だ。

 先日、彼女から告知があった時には正直、驚いた。

 だって、悠木ゆめめ様はコラボなんてしないと思っていたからだ。

 中の人の藤咲さんは奥ゆかしくて引っ込み思案な性格だ。

 海千山千の他の配信者とコラボするなんてかなり意外に思えた。


「しかも……相手はこの二人なのよね……」


 それでも他の個人勢の配信者とのコラボ配信ならまだ分かる。

 しかし、彼女が告知した相手は大手事務所の二人、朝比奈ぴなと音葉うたうだった。

 彼女たちの配信は見ていないが、おおよそのことは知っている。

 朝比奈ぴな、かなりうるさい配信者で、落ちついたゆめめ様とは対照的な立ち位置のVtuberだ。

 音葉うたう、歌い手系のVtuberだけど、クールなのは歌う時だけ。普段はこいつもうるさい。

 そう、全く方向性が違う相手とのコラボなのである。

 どうなることやらとかなり心配。

 固唾を飲んで見守る私である。


『それでは、今日の企画、やっていきましょう! 朝比奈ぴなはASMRが得意になりたい!』


 コラボが始まった。

 朝比奈ぴなのカラ元気な声が響いてくる。

 ええい、ゆめめ様がびっくりするでしょうが、そんな声を出したら。

 でも、オープニングでかちこちに緊張しているゆめめ様を確認できて一安心。

 あぁ、かわいいなぁ。


 そんな風に癒されている時、事件が起きた。



『へぇえ、すごいですねっ! 私、初めてもらっちゃいました』


「はぁ?」


 事件が起きたのだ。

 音葉うたうという女が、事件を起こした。

 そう、彼女は私の殺す(かもしれない)リストに見事、殿堂入りしたのである。


 奴は言ったのだ、ゆめめ様の初めてを、などと。

 もちろん、コラボが初めてというのは分かっている。

 私の頭もそこまで固くない。

 だが、待ってほしい。

 わざわざ、下ネタっぽく、そんなことを言う必要があっただろうか。

 いや、ない。

 断じて、ない……!

 そもそも、初めて、初めてだなんて。


 頭の中に藤咲さんのあられもない姿が一瞬だけフラッシュバックする。

 思わず鼻血が出そうになるが、意地で乗り切る私。

 私にこんなハレンチな妄想をさせるとは、音葉うたう、許すまじ……!


『ゆめめさんに対するそういう言い方、絶対にありえないと思います。そもそも、ゆめめさんは未成年かもしれないわけで、いや、そもそも、これはセクハラですよね。絶対にセクハラです、性加害と言ってもおかしくないですよ、こちらも出るところに出ますよ、あなたを訴えます、絶対にダメ』


 気づいた時にはチャットに長文で書き込もうとしている私がいた。

 よし、これにスパチャをつけて投げてやろう。

 ゆめめ様の親衛隊を舐めちゃいけないって思い知らせなきゃ。

 

 そんな時である、私のスマホが震えた。


『とーこ、厄介オタクみたいなことしてないー? 冗談は受け流さなきゃダメだよー?』


『厄介オタクはBANされるからね』


 私の友人にして、ゆめめ様のファンである、鏑木エリカと加賀見ふみからのメッセージだった。


「く……、誰が、厄介オタクですって!?」


 エリカの言葉づかいには腹が立つ。

 しかし、ここは彼女に免じてコメントを送るのをやめにすることにした。

 そもそも、同時接続数は6000人以上もいるのだ。

 そんな中でスパチャを投げても掻き消えるだけだ。

 書き込んだのは自分の思考を整理するためであって、それ以上の意味はない。

 

 冷静になった頭で、私は再び視聴を続ける。

 ゆめめ様はちょくちょくしか話さないが、それでも存在感を示していた。

 なにより清楚なのだ。

 他の二人の垢ぬけた、いかにもなVtuberぶりとは違う。

 彼女の素朴さ、純粋さが私の魂を浄化してくれる。


『おいおい、マジかよ、かわいすぎるだろ』


『やっべぇなぁ、清楚すぎる』


『個人勢でこれかよ』


 実際にリスナーたちは彼女の破壊力に打ちのめされていた。

 Vtuberは箱推しと言って、所属する事務所ごと応援するファンも多い。

 逆に言うと、箱の外の配信者には疎かったりするのだ。

 新たなる才能の出現に界隈もきっとびっくりだろう。

 

 それにしても、ぶいぱら運営には腹が立つ。

 もう少し、ゆめめ様を中心に据えた企画を考えるべきじゃないだろうか。

 このままじゃ、朝比奈ぴなと音葉うたうのバカ二人がわいわいやって終わりだ。

 完全に企画の作り方が間違っている。


『次は、お兄ちゃん、お姉ちゃん、だぁい好き、です! ……って、誰だ、この企画考えた奴!?』


「は? 神なんだが? ぶいぱら運営、グッジョブ!」


 その数秒後。

 ぶいぱら運営についての評価は180度変わることになる。

 だって、お、お姉ちゃんである。

 ゆめめ様はロールプレイ的なことは一度もしてくれたことがない。

 いや、別にしてくれなくても十分ではあるのだが、それでも、お姉ちゃん呼びをしてくれるなんて、この企画考えた人、天才じゃないかしら!

 私はベッドの上で飛び跳ねて、喜びを全身で表現した。

 

『透子、あんた、飛び跳ねてないよね?』


『まじできもーい』


 ふみとエリカから辛辣なメッセージが届いていた。

 何がキモイだ、あんただって嬉しいでしょうが!

 なんなのよ、私のことを監視してるんじゃないでしょうね。


 私はイヤホンからヘッドフォンに切り替える。

 PCが録画されているかも、合わせて確認。

 高鳴る心臓を抑えながら、その時を待つ。

 

『えっと、それじゃ……お兄ちゃん、お姉ちゃん、……大好き』


 そして、その時はやってきた。

 ゆめめ様が私のことを、朝霧透子のことを「お姉ちゃん呼び」してくれたのだ。


 頭の中に藤咲さんが笑いながらこちらに駆け寄ってくる光景が浮かぶ。

 彼女は私に抱き着いてきて、そう言うのだ。

 一面の花畑の中、私はぎゅっと藤咲さんを抱きしめる。

 折れてしまいそうなほど細い藤咲さんの体。

 だけど、案外、肉付きが良かったりして……。


「はぁああううわぁあああああっ! 妹に、妹に、なんてことをっ!」


 自分の内側から生まれてきた妄想を打ち消すように、私はベッドにダイブする。

 自己嫌悪がひどい。

 私はそんな目で藤咲さんを見てはいない、それなのに。


 いや、違う、これは私がいやらしいとかではない。

 どんな人間であっても、悶えてしまうはずだ。

 事実、音葉うたうは鼻血を出していた。気持ちはよくわかる。


『生きてるー? 破壊力やばかったねー。てか、どうせ悶えてんでしょ?』


『むっつりとうこ、悶え死ぬの巻』


 エリカとふみからのメッセージはまるで私を監視してるかのような精度だった。

 なんて決めつけをしてくるんだろう、腹が立つ。


 お姉ちゃん呼びの破壊力はすさまじく、チャット欄は感動の声で埋まる。

 そりゃそうだ、本邦初公開なのである。

 ゆめめファンならビッグウェーブを起こす勢いだ。


 その後、配信はつつがなく進行し、コラボ回は無事に終了する。

 ファンとしてみても濃密な1時間だったと思う。


『ゆめめちゃん、最後は結構、落ち着いててよかったね』


『そうそう、成長したなーって思ったー』


 ふみとエリカからメッセージが入る。

 確かにコラボ開始直後のゆめめ様はかなり緊張していた。

 でも、最後の方はまるで水を得た魚のように自由にASMRをしていた。

 リアルの藤咲さんは今でさえオドオドしているから、かなり意外だった。


 ゆめめ様はすごい、秒速で成長し続ける。

 推しへの尊敬が改めて深まる私なのであった。

 

 しかも、である。

 ゆめめ様は雑談配信をしてくれたのだ。

 私も馳せ参じて、今日のコラボ回がいかに素晴らしかったか、いかに歴史に残る偉大な配信だったかを伝える。

 ゆめめ様も初めてのコラボを無事に終えることができて、ホッとしたと言っていた。

 推しの幸せは私の幸せ。

 心の底から元気になる。


 しかし、ゆめめ様の話題がぶいぱら運営がやっている音楽イベントに移ると、少し空気が変わるのを感じた。

 私は直感した。

 ゆめめ様は歌を歌いたいんだろうなって。

 できれば、個人勢も参加できる、あのイベントに出たいと思っているのかもしれない。

 

 私はゆめめ様の歌の実力を知っている。

 なんせ中の人である藤咲さんとカラオケに行った仲なのである。

 敢えて辛口に言わせてもらうと、彼女の歌唱力は高くはなかった。

 確かに、前回の伝説の放送事故のときのように、ウィスパーボイスで歌うのなら世の中を虜にできると思う。

 だけど、普通の歌い方だとどうだろう。

 声が高いのはいいんだけど……。


『オリジナルソングにMVですかぁ、いやぁ、たはは、私には無理ですね。いや、うん、わかってましたけど……うはぁ、別世界ですね』


 ゆめめ様の寂しそうな声が聞こえる。

 彼女はあんまりネガティブな言葉を口にしない。

 だからこそ、わかる。

 本気で残念がっているって。

 できることなら、力になってあげたい。

 

 だけど。


「……でも、私はもう歌はやめたの」


 私は少しだけ過去のことを思いだす。

 歌が大好きだった小学校時代のことを。

 なぜか天才演歌歌手だなんて持ち上げられていた自分のことを。


 でも、それはもう昔の話。

 今の私はただの……普通の女子高生にしかすぎないのだから。

 歌はもう、本気では歌わないし、歌えない。

 小さなため息がひとつ、壁に当たって、かすかに跳ね返った。





【☆★読者の皆様へ お願いがあります★☆】


引き続き読んで頂きありがとうございます!

ぜひともページ下部の評価欄☆☆☆☆☆から、お好きな★を頂ければ非常に励みになります!

ブックマークもお願いします。

ご感想などもすごく楽しみにしています。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
そーいや三人娘お姉さんと会ってるのにぴなとは気付かなかったな。まぁそれが普通なんだけど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ