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ASMR系VTuberの私、ぼっちのはずがなぜかクラスの美少女に溺愛されてます!  作者: 海野アロイ
第一章 ASMR系Vtuberの私、ぼっちのはずがクラスの美少女に囲まれています!
24/62

24.昔は一人ぼっちに耐えられていたのに、弱くなったのかな?


「熱が出てしまいました。学校はしばらくお休みします」


 朦朧とした意識の中、メッセージを送る。

 お姉ちゃんのおかげで病院に行けたのはラッキーだった。

 薬のおかげでだいぶ楽になった。

 

「お姉ちゃん、ごめんなさい」


 Vtuberの仕事、それに大学。

 お姉ちゃんは私よりもずっと忙しいはずなのに。


「なに言ってんのよ? ただ一人の妹なんだから。……まだ、熱は高いし、今日はゆっくり寝てなよー?」


 姉は私のおでこに手を置いた。

 さっき体温を測った時には38度台後半だった。

 喉が痛い。

 頭もまだぼんやりする。


「うぅ、たまってたASMR動画でも見てるよぉ」


「ほどほどにしなよ。ちゃんと寝ないと治らないからね?」


「はぁい」


 姉はちょっとだけ困った顔をしたけど私の意志を尊重してくれた。

 誰かのASMRを観ることは私の魂の栄養なのだ。

 自分が配信者になると、どうしても忘れてしまうことだけど。


 イヤホンから聞こえてくる優しい声。

 呼吸が楽になっていく。

 熱がある人向けにも、安眠ASMRはありがたい。

 今は寝よう。


 2日後。

 私の熱はゆっくり下がっていった。

 透子さんにも、微熱になったとメッセージを送ることができた。

 学校に登校できるめどもついてきたと思う。


 だけど、問題はまだ残っていた。


 微熱があって、思考はぼんやりしたままだ。

 それに喉がまだまだ痛い。

 配信者としては致命的だ。


 一周年記念配信まであと数日。

 このままじゃ満足のいく配信ができるはずがない。

 なんせ私は一日中、配信をしようと思ってたんだから。

 考えれば考えるほど、心は暗くなっていく。


 とりあえず、寝よう。

 あぁ、もう悲しい。


「みんなに会いたいなぁ」


 思ってもみなかった言葉が独り言となって口をついてくる。

 本音なんだろうか、それとも、熱で心まで弱ったんだろうか。

 みんな、忙しいのに邪魔しちゃ悪い、風邪がうつるかもしれないし。


 それに私はいつだって一人で耐えてきたじゃないか。

 熱が出ることなんて慣れっこになっていたはずなのに。

 高校に入って、お友達ができた。

 その結果、私は孤独に弱くなったのかもしれない。 


「……あぁ、そうなの! 喜ぶと思う!」


 遠くの方で、お姉ちゃんが何かを話しているのが聞こえる。

 少しだけ熱が上がっていくのを感じながら、私は眠りの中に落ちていくのだった。



◇ 朝霧さん、三人でお見舞いに行く



「お見舞い、行こうよー!」


「行こう!」


 エリカとふみは鼻息荒くそう言った。

 何を求めてるのかって、それはゆうなさんのお見舞いだ。

 彼女は今、熱を出して寝込んでしまっているのだ。


 学校はもう3日も休んでいる。

 そして、当然ながら、悠木ゆめめ様の配信も先週の日曜日で終わっていた。

 一周年記念配信の告知をして以降、ずっと配信をお休みしているのだ。


 まさか、熱を出しているなんて知っている人は私たちぐらいだろう。


「でも、ご迷惑がかかるかもしれないし……」


 それでも私は躊躇していた。

 病気になると人は二つのタイプに分かれる。

 人と関わりたくない人と、逆に人に会うことでパワーをもらえる人の二種類だ。

 ゆうなさんはどっちのタイプかもわからないし、そもそも寝ているかもしれない。


「何言ってるのー? そんな問題じゃなくない? 会いたいから会いに行くんじゃん」


「考えすぎなんだよ、朝霧透子は!」


「ぐむむ」


 私がもっともらしい理由を伝えると、エリカたちは断固として反論してくる。

 相変わらず、直情的でまっすぐだ。怖いぐらいに。

 でも、少しだけうらやましさを感じる。

 そうだよね、会いたい。

 私だって、会いたいよ、ゆうなさんに。


「……じゃ、冷たいものとか、ゼリーとか買っていきましょう。呼び出しに出なかったり、寝てたりしたら帰るからね」


「おっけー! とーこ、大好き! 素直になれてエライ!」


「おぬし、強がりをやっと抜けたのぉ!」


 エリカとふみにやたらとからかわれる。

 いや、これは強がりじゃないはず。



 放課後、私たちはゆうなさんの教えてくれたマンションを訪問した。

 きちんとしたセキュリティのある大きめのマンションだ。

 ゆうなさんの身に何かあったらと心配していたので、ちょっと嬉しい。

 そして、オートロックのインターホンでゆうなさんの家の番号を入れる。


「はい、もしもーし」


 女の人が出た。

 ひょっとしたら、ゆうなさんの言っていた、お姉さんなのかもしれない。


「あ、あのぉ、私たち、ゆうなさんの学校の友達で、風邪の調子、どうなのかなって思いまして、お見舞いに来たのですが」


「あぁ、そうなの!? 喜ぶと思うよ!」


 お姉さんは高い声を出して喜ぶと、マンションの入り口を開けてくれた。


「やったじゃん!」


「ほらね!」


「あんたたち、騒がないでよ?」


 エリカとふみには念を押しておく。

 今日はパーティじゃない、お見舞いなのだ。


「ようこそー! 姉の藤咲ひなたですー」


「お、お邪魔します」


 ゆうなさんのお姉さんは妹そっくりだった。

 ゆうなさんをもっと明るくしたような感じ。

 声の質も少し似ていると思う。

 だけど、表情が違う。

 どっちかというと、エリカっぽい花のあるタイプ。

 根っから明るい性格なんだろうなってわかる。

 

「こんな美人でかわいいお姉さんなんですね! あ、お土産でーす」


「もー、やだー、美人なんてリアルで言われるのひさびさだよー。とりあえず、入ってください!」


 けらけら笑いながら、お姉さんはリビングルームに案内してくれた。

 こぎれいで整理されていて、VTuberの家とはとても思えない。

 ゆうなさんの姿はない。

 話を聞くと、今はお部屋にいるとのこと。


「ゆうな、お友達が来てくれたよー? いやー、イマジナリーじゃなくて安心した!」


「は? え? トモダチ!?」


「そう、めちゃくちゃかわいい三人組」


「さ、三人組!? うっそぉ!?」


 奥の方からゆうなさんの焦る声が聞こえてくる。

 起きてはいたようだ。


「それじゃ、お姉ちゃん、スタジオじゃなくて、お仕事行くから。ゆっくりしてな」


「ちょっと、ちょっと待って、お姉ちゃん、心の準備が」


「いいから、いいから!」


 お姉さんは、ゆうなさんの言葉の途中でこちらを向いた。

 私たちを置いて、どこかに行こうとしてません!?


「そういうわけで三人ともよろしくお願いね! ちょっと風邪で弱ってるけど、いい子だから」


「は、はぁ。頑張ります」


 お姉さんからゆうなさんを任されてしまった。

 あまりに唐突だったので、おかしな受け答えになってしまった。

 私たちは意を決して、ゆうなさんの部屋のドアをひらくのだった。

 


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