↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/47

伯耆国米子湊!大山鳴動、星詠みの末裔と忍び寄る最後の四天王


幾多の海路を乗り越え、桃色助平太一行は、ついに乙姫様が示した地、伯耆国米子の湊へと降り立った。背後には中国地方の最高峰・大山(だいせん)が雄大にそびえ立ち、眼前に広がる日本海からは、力強い潮風が吹き付けてくる。湊は、北前船の往来で賑わい、独特の活気に満ちていた。

「おおおおおっ!この米子の湊!なんと勇ましき漁師たちの掛け声!そして、あの潮風に鍛えられた湊の女衆の、なんと逞しくも艶やかなることか!特に、あの魚を捌(さば)くお姐さんの、真剣な眼差しと、汗に濡れたうなじ!まさに、日本海の荒波が生んだ『海のダイヤモンド』!この助平太、その輝きに、我が魂も浄化されそうでござるぞ!」

助平太は、米子の地に降り立つや否や、新たな「美」の発見に目を爛々と輝かせ、早くも筆を取り出さんばかりの勢いだ。

「このド変態、どこへ行ってもやることは同じなんだな…」プルルンが呆れ果てて呟く。

「それより、乙姫様の言ってた『星を読む一族の末裔』とやらを探すのが先決だろう」カゲリが冷静に一行を促す。

「米子の町は初めてだが、なんだか活気があっていいじゃねえか!美味い魚も食えそうだしな!」辰五郎は、新たな土地の空気に胸を躍らせている。

「お魚!お魚ですって!わたくし、お刺身もお焼きしたのも、お煮付けも大好きですのよ~!」

一行の新たな仲間、ぽっちゃり食いしん坊のお福は、食べ物の話題に目を輝かせ、早くもよだれを垂らしていた。

一行は、湊にほど近い旅籠に宿を取り、早速「星を読む一族の末裔」に関する情報収集を開始した。古くから米子の湊で暮らす船乗りたちや、大山信仰と関わりの深い寺社の神官、あるいは町の古老などを訪ね歩く。

お福は、その天真爛漫な笑顔と人懐っこさで、行く先々で「可愛い娘さんだねえ」と可愛がられ、ちゃっかり米子の名物「吾左衛門鮓(ござえもんずし)」や「大山おこわ」をご馳走になっていた。そして、満腹になった勢いで、「ねえねえ、この町で、お空の星をじーっと見てる変わった人とか、いませんこと~?」などと尋ねて回り、意外な形で情報収集に貢献(?)することもあった。

その頃、江戸城では、玉藻の前が、お蝶と玄蕃からの敗北の報告を受け、扇の奥で静かに、しかし激しく怒りの炎を燃やしていた。

「…あの桃色の変態侍めが、またもや妾の計画を邪魔するとはな。もはや、生かしてはおけぬ。我が『変態四天王』が誇る最後の切り札…あの『二人』を、伯耆国米子へ送り込むとしよう。彼奴らならば、必ずや助平太の息の根を止め、そして全ての『天逆毎の鍵』を妾の元へともたらすであろう…」

玉藻の前の妖しい瞳が、米子の空を睨むように細められた。その「二人」とは、からくり屋敷に住み、幻術と人形で相手を惑わす老人「夢幻斎(むげんさい)」と、一切の言葉を発せず、ただ冷徹に剣を振るう、美しくも恐ろしい女剣士「月影(つきかげ)」であった。彼らは既に米子に潜入し、助平太一行の動きを密かに監視し始めていた。

一方、助平太たちは、情報収集の過程で、大山に古くから伝わる天狗伝説や、山伏たちの修行の厳しさ、そして最近、山中で旅人が姿を消すという不気味な噂を耳にしていた。

「ふむ…大山の天狗、そして神隠し…それはまた、そそられる響き!もしや、その神隠しに遭ったうら若き乙女が、夜な夜な天狗に攫われ、あんなことやこんなことを…むふぅ、この助平太、その『禁断の物語』にも、大いに興味が湧いてまいりましたぞ!」

米子での数日が過ぎた。一行は、それぞれのやり方でこの町に馴染みつつあった。

助平太は、米子城下の湯屋で「日本海の荒波にもまれた、ピチピチとした肌の美女」を探し求め、そのあまりの熱心さ(と変態的な言動)に、番台の屈強な婆さんに塩を撒かれて追い出された。

カゲリは、町の古文書を扱う店や、古い寺社を巡り、伯耆国の歴史や星読みの伝承について丹念に調べていた。

辰五郎は、湊の漁師たちとすっかり意気投合し、酒を酌み交わしながら、漁船の修理を手伝ったり、伝統の網打ちを教わったりしていた。

プルルンは、大山の豊かな自然の中で、見たこともない昆虫や珍しい木の実を発見し、探検気分を味わっていた(時折、お福に「美味しそう…」と狙われ、必死で逃げ回っていたが)。

そしてお福は、その旺盛な食欲と愛嬌で、米子の町中の食べ物屋の「看板娘」と化し、行く先々で美味しいものを手に入れ(時にはツケで)、助平太たちの胃袋をも満たしていた。彼女の「こちょこちょに弱い」という弱点は、まだ一行には知られていなかったが、時折、子供たちと遊んでいる最中に、脇腹をくすぐられて奇声を上げ、周囲を驚かせることがあった。

そしてついに、様々な情報を組み合わせた結果、一行は「星を読む一族の末裔」が隠れ住むとされる、大山の麓、人里離れた寂れた庵の場所を突き止めた!

「おお!ついに!ついにその『星の乙女』の隠れ家が!この助平太、その庵の奥に広がるであろう、星空のように美しく、そして神秘的な『お色気』を、今から楽しみに思うものでござる!」

期待に胸を膨らませ(主に助平太が)、一行はその寂れた庵へと向かった。しかし、庵に近づくにつれ、周囲の空気が不気味に歪み、奇妙な鳥の鳴き声が響き渡るのを感じる。そして、庵の入り口には、まるで客人を拒むかのように、何重にも奇妙な呪符が貼られていた。

「…これは、ただの庵ではないな。強力な結界が張られているようだ」カゲリが警戒する。

「そして、この奥からは…なんとも甘美で、しかしどこか危険な『罠の香り』がいたしますぞ…?」

助平太が、その庵の戸に手をかけようとした瞬間、周囲の木々から、無数のからくり人形が、ギシギシと音を立てながら姿を現し、一行を取り囲んだ!そして、庵の屋根の上には、不気味な翁の面をつけた老人と、氷のように冷たい瞳を持つ美しい女剣士が、静かに立っていた…。

「ククク…ようこそおいでなすった、桃色助平太ご一行。お前さんたちの来るのは、星が教えてくれておったわい…」

夢幻斎の、しわがれた笑い声が、不気味に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。