真心は変態を救う!?呪い破りの湯けむりと三つ目の鍵
鈴森の藩の城下町、薬屋「亀齢堂」の奥座敷。桃色助平太一行は、主人である気骨のある老婆・おトキから、藩を覆う呪いについて詳しく話を聞いていた。
「あの妖術師…名を黒蓮と申すそうじゃ。奴の操る呪いは、人の魂をじわじわと蝕む『忘魂の瘴気』。白雪姫様は、その清らかなる魂で瘴気を押し留めておられたが、それももう限界に近い…」
おトキは、苦渋の表情で語る。
「なんと!黒蓮!その名の響き、実に妖しくも蠱惑的!黒き蓮の華は、泥の中に咲き誇り、その花弁で男を誘い…むふぅ、いけませぬ、想像しただけで鼻血が…」
「このド変態!今は姫様のことが先決だろが!」辰五郎の拳が、的確に助平太の鼻っ柱を捉える。
「して、おトキ殿。その『忘魂の瘴気』を打ち破る手立てはござらぬのか?例えば、拙者のこの『熱き魂の叫び』で、姫君の魂を奮い立たせるとか…」
「お前の叫びは騒音だゾ、ド変態!」プルルンが即座に否定する。
おトキは、ため息をつきながら首を振った。
「黒蓮の呪いは強力じゃ。並大抵のことでは解けぬ。じゃが…古文書によれば、この藩の西の山奥に『月詠の泉』と呼ばれる霊泉があり、その『汚れない真心に触れた泉水』だけが、魂を浄化し、邪気を払う力を持つと記されておる。じゃが、その泉は険しい道のりの先にあり、おまけに恐ろしい妖怪が守っておるとも…」
「月詠の泉!なんとロマンティックな響き!そして、汚れない真心に触れた泉水…それは、例えば、うら若き乙女が沐浴し、その肌を清めた後の、あのキラキラと輝く水滴のことでござろうか!?ああ、その一滴を、この舌で…」
「お前は本当にブレないな!」カゲリの冷たい視線が突き刺さる。
白雪姫が持っていたという白木の箱は、おトキの鑑定によれば、強力な「言霊の封印」が施されており、姫自身の「真心の言葉」か、あるいはそれに類する強い想いがなければ開かないという。
「つまり、姫様が元気にならねば、箱も開かぬということか…」辰五郎が腕を組む。
その夜、助平太は、おトキの手引きで、再び鈴森城の白雪姫の寝所へ忍び込んだ。眠る姫の傍らには、例の白木の箱が置かれている。
「姫君…そのお顔、苦しげに歪んでなお、神々しいまでの美しさを湛えておりますぞ…」
助平太は、姫の手をそっと握った。その手は驚くほど冷たい。
「おお、この冷たさ!まるで、冬の夜空に輝く星のよう!しかし、その奥には、燃えるような『生への渇望』が感じられる!姫君よ、貴女様のその『心の叫び』、この助平太が、しかと受け止めましたぞ!貴女様のその潤んだ瞳(閉じてるけど)は、拙者への『もっと…もっと奥まで来て、私の魂を慰めて…』という、無言の誘いなのでございましょう!」
助平太が、姫の顔に自分の顔を近づけ、何やら怪しげな行動に出ようとした瞬間、プルルンが助平太の眉間に強烈な頭突きを食らわせた。
「このド変態が姫様に何しようとしてるんだゾ!さっさと泉の水汲んでこい!」
かくして、白雪姫を救うため、そして三つ目の鍵の破片を手に入れるため、一行は「月詠の泉」を目指すことになった。おトキの話では、泉へ向かう道は険しく、途中の「ため息の森」は、人の心を惑わす幻術を使う妖怪たちの巣窟になっているという。
「幻術…それはまた、そそられる響き!前回出会った夢月殿のような、悩ましき尼僧妖怪が、拙者を『快楽の迷宮』へと誘ってくれるのでござろうか!?」
「お前は少し懲りろだゾ…」
案の定、「ため息の森」に足を踏み入れると、一行はすぐに方向感覚を失い、同じ場所をぐるぐると彷徨い始めた。そして、どこからともなく、甘く囁くような女の声が聞こえてくる。
「うふふ…旅のお方…そんなに急いでどこへ行くの…?もっと、ゆっくりしていらっしゃいな…美味しいお酒も、とろけるようなお肌もあるわよ…?」
「おお!この声!そしてこの誘惑!まさに、極楽浄土への道案内!この助平太、喜んで迷わせていただきますぞ!」
助平太が声のする方へふらふらと歩き出すと、その足元から、美しい女の手がにょっきりと生えてきて、助平太の足首を掴んだ!
「ひゃっほう!なんと!地面から生える『お手手』とは!この斬新なるアプローチ!そして、その指先の冷たさ!実に、実に…マニアックでござる!」
「助平太殿!しっかりしろ!」カゲリがクナイで女の手を切り払うが、手はすぐに再生してしまう。
辰五郎は、持ち前の気合で幻術を振り払おうとするが、目の前に大好きな甘味処の幻影が現れ、よだれを垂らして釘付けになっている。
「だ、団子が…団子が俺を呼んでる…!」
「この森の妖怪、人の欲望を増幅させて幻を見せるタイプだゾ!厄介だ…!」
プルルンが叫んだその時、森の奥から、あの忌まわしい二人組が姿を現した!幻惑の尼僧・夢月と、鋼鉄の巨漢・金剛鬼である。
「うふふ…またお会いしましたわね、変態侍さん。今度こそ、あなたを骨の髄まで『慰めて』さしあげますわ」
夢月は、前回よりもさらに妖艶さを増し、その法衣はもはや下着と見紛うほどに面積が小さくなっている。金剛鬼は、前回へそを攻撃されたのがよほど屈辱だったのか、腹部に分厚い鉄板を当てていた。
「おお!夢月殿!そのお姿、さらに磨きがかかっておりますな!その露出度の高さ、まさに『歩く春画』!そして金剛鬼殿!その鉄壁の腹巻!実に、実に…そそる防御でござる!」
「黙れ変態!今日こそお前を再起不能にしてやる!」金剛鬼が吠える。
戦闘開始!夢月は、より強力になった幻術で一行を惑わそうとする。今度は、助平太の前に、これまでの人生で出会った(そして彼が一方的に『美しい』と認定した)全ての女性たちが、下着姿で艶めかしく踊り狂うという、まさに地獄絵図のような光景が広がった!
「おおおおおおっ!こ、これは…拙者の脳内ハーレムの完全再現!しかも、全員下着姿とは!夢月殿、貴女様は天才でござるか!?」
助平太は、鼻血を滝のように流しながら、幻影に向かって突進しようとする。
「このド変態、また同じ手に引っかかりやがって!」プルルンが叫ぶ。
しかし、辰五郎が、夢月の幻術に対し、意外な耐性を見せた!
「うるせえ!俺の頭ン中は、火事と祭りと団子のことでいっぱいなんだよ!んなフニャフニャした幻なんぞ、効くか!」
辰五郎は、気合の一喝と共に、金剛鬼に殴りかかる!
カゲリも、夢月の幻術のパターンを読み切り、的確にその術の起点を攻撃する。
「お主の幻術、見切ったぞ!」
そしてプルルンは、夢月が意外にも蜘蛛が苦手であること(前回お蘭の糸にドン引きしていたのを覚えていた)を思い出し、近くの木の枝から大きな蜘蛛(もちろんプルルンの擬態)を夢月の顔面に落とした!
「ひいいいいいいいいっ!く、蜘蛛おおおおお!?」
絶世の美女妖怪らしからぬ悲鳴を上げ、夢月は幻術を解いて逃げ惑う。
金剛鬼も、腹巻でへそは守ったものの、助平太が「おお!その鉄板の冷たさ!まるで、真冬の夜這いで触れた、おなごの肌のよう!」などと叫びながら鉄板に頬ずりし始めたため、戦意を喪失。
「も、もう勘弁してくれ…」
夢月と金剛鬼は、今回もまた、助平太一行の変態的かつ奇想天外な戦法に敗れ去り、すごすごと退散していった。
「ふぅ…実に、実に心温まる幻術でござった…。あの光景、永久保存版で脳裏に焼き付けておきましょうぞ…」
助平太は、まだ鼻血を出しながらも満足げだ。
幾多の困難(主に助平太の変態行動が原因)を乗り越え、一行はついに「月詠の泉」にたどり着いた。泉は、月光を浴びて神秘的に輝き、その水は水晶のように透き通っている。
「ここが…月詠の泉…」
助平太は、おもむろに泉の水を両手ですくうと、天を仰ぎ、高らかに宣言した。
「おお、聖なる泉よ!この桃色助平太の、白雪姫様を救いたいという『汚れない真心』(と、ちょっぴりの下心)に触れ、その清き力を我に与えたまえ!」
すると、不思議なことに、助平太の手の中の泉水が、淡い光を放ち始めた!
「やった!本当に真心が通じたのかゾ!?」
「…ド変態の真心とは一体…」
一行は、光り輝く泉水を竹筒に詰め、急いで鈴森城へと戻った。そして、おトキの助けを借り、眠る白雪姫の唇に、その泉水をそっと含ませる。
すると、姫の青白い顔に、みるみるうちに血の気が戻り、苦しげだった呼吸も穏やかになっていく。そして、姫の傍らにあった白木の箱が、カタリと音を立ててひとりでに開いた!
箱の中には、三日月形をした、美しい金属片が納められていた。三つ目の「天逆毎の鍵」の破片である。
そして、白雪姫の瞼が、ゆっくりと開かれた。その潤んだ瞳は、助平太たちをしっかりと捉え、そして…か細くも、凛とした声が、初めて部屋に響いた。
「…ありがとう…ございます…見知らぬ…旅の…お方…」
声を取り戻した白雪姫!その美しい声に、助平太は感動のあまり…またもや鼻血を噴き出すのであった。




