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聖なる花光玉  作者: ゆきあさ


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61 神の声

来ていただいてありがとうございます!



「飼い殺し?」

ウォルク様の言葉が良く分からなかったけどフィル様が説明をしてくれた。


会議の結果、国王夫妻は罪に問われない代わりに、全ての権限を取り上げられてお飾りとして国王としての任期を全うすることになった。任期は約三十年だから後十五年は六大貴族の当主達の決定に従うだけのお飾り国王になってしまう。その代わりノアは、ノアレーン・スミスヴェストル様は大きな罪に問われないことになった。あの場にいたのが黒の一族の人達ばかりだったからできたことでもあるみたい。私はホッと胸を撫でおろしたけど、当主でありノアのお父さんでもあるクロエ・スミスヴェストル様は複雑そうな顔をしてた。


「ごめん。エリーが一番危険な目にあったのに異母兄(あに)を裁くことが出来なくて」

「そんな。ウォルク様が謝られることではないです」

そうだよね。被害にあったのが元平民の私だもん。立場的には私なんて物の数にも入らないのだろう。

「それよりもノアが大丈夫そうで良かったです」

国王様が約束を守ってノアを庇ってくれたから、ノアの罪は大幅に減刑されたんだと思う。無期限の屋敷での謹慎が言い渡されてた。


「ここからは私が議事進行を務めさせていただきます」

そう言って立ち上がったのはお久しぶりのクレス・レイクネイビー様だった。彼は今王都のウィステリアワイズ家でシオン様の部下として働いてるんだったっけ。

「次の議題は未だ衰えをみせない衰弱病の対策ですが、国王ご夫妻と一連の事件の関係者から新たな事実が判明しております。それを踏まえまして……」


「その前に、少しよろしいでしょうか?」

クレス様が話すのを遮り、アルジェ神官様が手を挙げて立ち上がった。

「どうされましたか?アルジェンアルスター様」

「私は神の言葉を預かっております」

その瞬間、会議場はとてもざわついてたけど、アルジェ神官様が歩き始めると次第に声が少なくなっていった。アルジェ神官様が会議場の広間の国王夫妻の上座のさらに奥、リュミエール王国の国旗の飾られている場所に立った。いつもとは雰囲気が全く違っていて、厳かなその様子に私まで緊張した。その場にいた貴族の方々も何かを感じ取っているようでしんと静まり返ってる。


「神の声を伝える」

そう言ったアルジェ神官様の声はやっぱりいつもの柔らかな感じは無かった。アルジェ神官様は大きく息を吸った。


そしてどこか遠くから響くような近くから囁かれてるような、たくさんの声が重なり合ったような、それでいて一つの声のような、温かいような冷たくも感じられるような不思議な声が聞こえてきた。


「脅威未だ去らず 扉は開かれる 我らが護りを与えし乙女達と共に王国を脅かすものを退けよ」


ほんの数言だった。でも伝わって来たと思う。神様はとても心配してた。脅威未だ去らずって、やっぱりあの時の悪魔の顔が笑ってたのってそういうこと?それから扉って?思いつくのはあの闇の扉の事だけど、そんなことってあるかな?神官様の、神様の言葉について考え込んでたら、フィル様に呼ばれた。

「エリー」

フィル様が険しい顔をしてる?

「私達が、エリーがこの場へ呼ばれた理由がやっと分かったよ」

「え?どういうことですか?フィル様」


「エリー・ルヴェール様こちらへおいで下さい」

短い銀の髪の神官服姿の若い男の人が入ってきて私に声をかけた。

「え?私ですか?」

どうして今このタイミングで私が呼ばれるの?混乱していると、フィル様が私の手を取って立ち上がらせた。

「行こう、エリー。大丈夫だ。私が必ず君を守るから」

「あ、ずるいな。そういうことなら俺にも権利はあると思うよ」

そう言ってウォルク様が空いた方の手を取った。えっと、何が起こってるのか分かってないのは私だけ?


神官服の男の人に先導されて訳も分からず広い会議場へ入っていくと、アルジェ神官様の元へ導かれた。フィル様とウォルク様が手を放して一歩下がるとアルジェ神官様が少し困った顔で微笑んだ。

「ちょっとだけ、大変なことになりましたが、貴女ならきっと大丈夫ですよ」

「?」

やっぱり訳が分からないでいるとアルジェ神官様が私の手を取った。白くて細い貴族の女の人みたいな綺麗な手だなぁ。え?あれ?向こうの部屋から私と同じように神官様に導かれて来る女の子がいる。さっきのドレスのって……。

「カレン?」

思わず呟いてしまった。カレンはごく薄いほぼ白に見える清楚な薄紅色のドレスを着てる。あれ?私の着てるドレスとお揃いだ。私のはごく薄い緑色だけど。

「ええ、そうです。貴女とカレンさんですね」

アルジェ神官様は私の時と同じようにカレンの手を取った。カレンの手を取っていたシュ・ロート家の当主の人(国王様との謁見の時にいた人)はカレンの後ろに下がった。


「神々がそのご加護を与え給うた乙女達はここに。一人はエリー・ルヴェール。そして今一人はカレン・サンセレス」


会議場にいた人達が一斉にどよめいて、私達に注目が集まる。びくりと体が震えてしまう。え?なにこれ?カレン・サンセレス?カレンはいつの間に陽の一族の当主様の所へ?まずそこに驚いてカレンを見ると、何故かカレンは勝ち誇ったように笑って私を見ていた。え?待って。カレンもこの状況を分かってるの?私には未だに訳が分からないんだけど。どういうこと?誰か説明してよ……。私は大混乱に陥っていた。


肩に温かい感触。振り返ったらフィル様が微笑んでた。いつの間にか震えていた体から力が抜けた。

「フィル様……」

私も安心して笑い返したのを覚えてる。でもそれからどうやって王都にあるリーフリルバーン家のお屋敷へ帰ったのか良く覚えてないんだ。




ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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