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60 六大貴族会議

来ていただいてありがとうございます!




ええっと、私、物凄く場違いな気がする。ここにいてもいいのかな?


私はまだお城にいるんだ。なんだか今まで以上に高価そうなドレスを着せられてるんだけど、これ何?




広くて豪華な部屋の中の上座には国王ご夫妻が座っていらっしゃる。国王様は顔色が悪いけど自分で座っていられるくらいには回復されたみたい。良かった、良かった。んだけど、何だか凄いことになってるの。六大貴族の筆頭家の当主様達が集まってるんだ。当主の方々は王国の重要な役職に就いていてそれぞれの優秀な部下の人達もその下で働いてる。ここには当主の方々以外にもそういった要職の人達もいて総勢三十名位が集まってる。


緑の一族のアルフレッド・リーフリルバーン様、紫の一族のシオン・ウィステリアワイズ様、黒の一族のクロエ・スミスヴェストル様、金の一族のブライト・ロウルレオニス様、陽の一族のユエ・エイ・サンセレス様。


そして一番驚いたのは神官様がいたことだった。銀の一族のアルジェ・アルジェンアルスター様。神官様の名前はいわゆる通り名で、本当の名前は他にあるんだけど、当主を継いた時からその名前で呼ばれるんだって。私達の故郷ではただ「神官様」って呼んでたんだけど、凄く偉い人だったんだね。てっきりあの時の大神官様が当主様なんだって思ってた。ちなみに大神官様はアルジェ神官様の隣に座ってる。


「銀の一族の筆頭家、アルジェンアルスター家の当主は代々その時々で一番魔力が強い者が就任するんだよ。お飾りというと聞こえが悪いけれど、実務は他の者が行ってるんだ」

「だから神官様はずっとクリアル山の神殿にいたんですね」

フィル様の説明に納得してしまう。

「あそこは田舎、いや王都から離れてるから行きたがる人がいないんだよね」

「確かにかなり田舎ですもんね。でもとても綺麗なところなんですよ」

ウォルク様、言い直してくれたけどそんなに気にしなくてもいいのに。王都と比べると本当に何もない場所だから。私には暮らしやすくて大好きな場所だけどね。


今、ウォルク様とフィル様と私がいるのは広間のようなお部屋の続きの小部屋。重そうなカーテンで仕切られてるんだけと閉め切られてはいないから、隣の重苦しい雰囲気が伝わって来て正直帰りたい気持ちでいっぱいだった。ノアは……いなかった。ここへ来たら会えるかなって思ってたんだけどいなかったんだ。酷い扱いをされてないといいけど。





「さて、王よ。此度の件について何か申し開きはあるか?」

金の一族のブライト様が口を開いた。ブライト様はアルフレッド様と同年代くらいの白髪の男性だ。豊かな髪をオールバックにしていて同じ色の豊かな髭を蓄えている。たてがみみたい。

「何も……。私は自分の為にこのリュミエール王国を二度も危険に晒しました。十五年前も今回も黒の一族の魔法使い達に正確な情報を与えないまま魔法を行使させ、犠牲を出すことになった」

国王レオナルド様は静かな声、静かな表情だった。

「悪魔の呪いではなく、悪魔自体が王妃シルヴィア様の中に在りそれを他の者に移し替え殺した、或いは殺すつもりだったという事でよろしいか?」

黒の一族のクロエ様が国王様に確認した。クロティルドの一番上のお兄様。今四十代の半ばのはずだけど、黒髪に白いものが混ざり苦悩の表情のせいか少しだけ上の年代に見える。


「その通りだ。悪魔が二体いたという事にも気が付かず、今回再び同じように処理しようとした」

「その身代わりに選ばれたのが、エリー・ルヴェール嬢。悪魔憑きの病を押さえる効果のある花光玉を作ることができる少女。そして十五年前には我が愛する妹、クロティルドをその身代わりにしたのだな。そして我が黒の一族の宝ともいえる魔法書も秘匿していたと」

「間違いはない。ノアレーン・スミスヴェストルはそれに気付いて止めようとした」


「お待ちくださいっ。全てはわたくしの為だったのです!罪があるのはわたくしです!わたくしがあの悪魔を世に解き放ってしまったのですから!そして今回の事もわたくしが悪魔の存在を隠していたために起こってしまったことなのです!」

「シルヴィア様、今は貴女様にお話を伺っておりませんわ」

国王様を庇おうとした王妃様を陽の一族のユエ・エイ・サンセレス様が冷たく制した。サンセレス様は六大貴族筆頭家当主の中で唯一の女性だ。年齢はうちの母さんくらいだと思うんだけど、とても若々しくて長い黒髪に深い緑の瞳の妖艶な美女だ。王妃様黙っちゃったよ。王妃様に対してあんなに偉そうにしてていいの?


「全く……。これだから十年前私は反対したのだ。いくら国民からの人気が高かろうと、一国の国王はそれだけでは務まらぬと」

ブライト・アウルレオニス様が腕を組んで吐き捨てた。国王様は同じ金の一族なのに厳しいんだね。

「仕方が無いでしょう。当時は皆疲弊していました。隣国の後ろにはあの帝国が控えていましたから。戦に勝ったとて、国内が荒れ果て人心がバラバラであったなら、付け込まれ次は帝国が攻めて来たことでしょう。国をまとめるためには必要な事であったと思いますよ。シルヴィア王女殿下が悪魔を解放なさったことも、戦の先頭に立たれたお二人が結ばれ、国王と王妃になられたことも。お二人は民の希望であったのですから」

オーガスト・リーフリルバーン様は辛い記憶を思い出すように目を伏せた。私は少しだけ胸の痛みを感じた。クロティルドの時にお父様に同じようなことを言われたっけ。


ノルエスト帝国。突然リュミエール王国に攻めてきた隣国ノール王国を焚き付けたと噂されている国。リュミエール王国の北側に位置していた隣国の更に北東に広がる大きな国。過去に色々な国々を侵略してその国土を広げてきた。ノール王国とリュミエール王国を狙ってたけどノール王国の大部分が悪魔の力で不毛の地となってしまったので、今は侵略を諦めているみたい。


「そうですね。今はとにかくこれからの事を話し合いましょう。十五年前のこと、そして今回の事を罪に問うか否か。国王夫妻の処遇。そして今後の衰弱病、いや悪魔憑きの病についての対策。さらに悪魔の討伐について。最後に神代(かみしろ)について」

シオン様が今回の会議の議題を一つずつ読み上げていった。




私は今回の事でお城の人達に話を訊かれた時は、前世の事は言わなかった。信じてもらえるなんて思えなかったしシオン様からそうした方がいいってアドバイスもあったから。正直、フィル様やシオン様、ウォルク様が信じてくれるとも思ってなかった。そしてクロエ・スミスヴェストル様も。あの時全てを話した後、クロエ様は帰り際に「君はもう違うのかもしれないけれど、いつかスミスヴェストル家を訪問して欲しい」って言ってくれたんだ。少しだけ悲しそうだった。私は勝手に死を選んでしまったことを後悔した。残された家族がどんな思いだったかを考えてなかった。


考え事をしながら会議の様子を見ていると、ウォルク様がお菓子を私の口元へ差し出してきた。

「エリーこのお菓子美味しいよ。食べてごらんよ」

何故か私達のいる小部屋のテーブルにはお茶とお菓子が用意されていた。

「え?でもウォルク様、さすがに今は……」

「大丈夫だよ。用意されてるってことは食べていいってことなんだからさ。あとエリーは何も悪いことしてないんだからそんなに緊張しなくていいんだよ。ほら」

「いえ、あの……」

さすがにそれは恥ずかしい。小さい子じゃないのに。


でも、私はどうしてこの場に呼ばれてるんだろう?事情の説明ならもう何度もしたし、調書も詳しく取ってあるはずなのに。リュミエール王国の今後のことを決める会議だって言ってたのに私って関係ある?

「そんなに不安そうにしなくても大丈夫だ。私達がついてる。おじい様もシオンもいるし、おかしなことにはならないよ。はい」

フィル様が笑いかけてくれて少し安心できた。ただ、フィル様もウォルク様の真似をして口元に別の焼き菓子を運んできたのでちょっと困った。

「あ、あのっ、自分で食べられますから」

二人にはそう言って断ったんだけど、結局食べさせられてしまった。もう何度か食べたけど王宮のお菓子ってとっても美味しい。美味しいんだけど、やっぱりこれは恥ずかしいよ。


ちなみにここでの会話は外には漏れてない。そういう魔法が掛かってるんだって。便利だよね、魔法。会議中だから誰かに見られてたりもしないよね?私は隣の部屋をそっと窺った。あれ?私達の他にも誰かがいるみたい。ちょうど会議の部屋を挟んだ向こう側にこちらの部屋と同じようにカーテンがかかってる部屋がある。カーテンの影に隠れて顔が見えないけど、ドレスの裾が見える。そっか。私だけじゃなくて他の議題の関係者も呼ばれたりするのかもしれない。私はそう思ってまたちょっと安心した。





「ああ、異母兄(あに)上達は飼い殺しが決まったみたいだね」

言葉の内容もだけどウォルク様のどこか乾いた声に私はとても驚いてしまった。








ここまでお読みいただいてありがとうございます!


構いたがりな二人

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