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最終話 僕はこれでハッピーエンドになると思っていたんだけど。

最終話となります。

ご感想などお待ちしております。

騎士団の動きは早かった。


すぐに港の倉庫を囲むと、斥候が中の様子を確認していた。


そこにはアントワーヌの姿があった、とハーヴェイ兄さんが教えてくれた。


もっと驚いたのは、ヴェルダの父がいたんだ。


「奴は今回、強引に事を進めたので不安に駆られたのだろう。そういうのはよくあることだ」


ハーヴェイ兄さんは騎士たちの配置を考えながら、僕に教えてくれた。


「お前はフェルディアと共に、アントワーヌを救え。ただそれだけしか考えるな」


僕はハーヴェイ兄さんの指示に従った。


側には師匠であるフェルディアさんがいる。


不安などない。


ハーヴェイ兄さんが手を振り下ろすと、騎士団は静かに倉庫の中に侵入していく。


僕とフェルディアさんは、アントワーヌがいる場所へ向かう。


しばらくして、周囲が騒がしくなった。


騎士団が戦い始めたようだった。


こうなると、ぐずぐずしていられない。


僕たちは、倉庫の裏口から中に入ると、急いでアントワーヌの側に向かう。


アントワーヌはすぐに見つかった。


アントワーヌは一人、地面に寝かされていた。


騎士団の急襲に、トリアー家の連中は焦りのあまり、アントワーヌを置いていったようだ。


僕はアントワーヌの容態を確認する。


胸の鼓動は聞こえているし、呼吸もしている。


良かった。


「行きましょう」


フェルディアさんの指示に従い、僕はアントワーヌを抱えて、外に出る。


外では、騎士団が次々とトリアー家の連中を拘束していた。


そこで僕はハーヴェイ兄さんの戦う姿を目撃する。


僕たちの姿を見たトリアー家の連中の一人が、僕たちに襲い掛かった。


だが、何かが飛んできてトリアー家の配下が吹き飛んだ。


ハーヴェイ兄さんが投げた、投擲用の槍だった。


「すごい・・・」


僕は感嘆する。


ハーヴェイ兄さんの強さは伊達じゃない。


他の連中も、瞬く間に倒した。


「フェリックス、よく頑張った!」


兄は、僕たちの前に来ると、また、僕の頭を撫でる。


ちょっと、恥ずかしい。


さすがに、外ではやめてほしい。


すると、今度は僕とハーヴェイ兄さんの前に、大柄な男が現れた。


「貴様か・・・フェリックスと言う小僧は?」


その言葉に僕は、この男がヴェルダの父と知る。


「・・・殺してやる」


「そう思うなら、俺の弟と一騎打ちだな」


ハーヴェイ兄さんがアントワーヌを僕から受け取る。


「いいだろう、受けてやる!」


ヴェルダの父は、僕に剣を構える。


「フェリックス、フェルディアの教えを守っているお前なら勝てるはずだ」


ハーヴェイ兄さんが、僕に剣を渡す。


僕も決意する。


アントワーヌを傷つけた奴は許せない。


僕の手でケリをつける。


僕は剣を抜くと、ヴェルダの父の前に立つ。


初めて真剣で戦うけど、緊張はない。


僕にはハーヴェイ兄さんやフェルディアさん、騎士団のみんながいるし、なにより、アントワーヌがいる。


「おい、騎士崩れ」


ハーヴェイ兄さんがヴェルダの父に向かい叫んだ。


「俺の弟は、お前より強いぞ」


ヴェルダの父の顔が、苦虫を食い潰したような顔をする。


「いいだろう、お前だけでも、道連れにしてやる」


ヴェルダの父が、僕に襲い掛かった。


僕は、奴の刃を受け止め続ける。


ヴェルダの父の攻撃が強い。


騎士崩れと言うだけあって、戦いに慣れているようだ。


素人の僕は、そんな相手と戦っている。


力で押されているので、手がしびれそうだ。


でも、僕はチャンスを待っている。


フェルディアさんの教えだ。


相手が力で攻めてきた時、必ず、力の方向がズレる時がある。


その時こそ、反撃のチャンスだと。


その機会は、すぐに訪れた。


再度受け止めたヴェルダの父の剣が、勢いが強かったのか、反動で僕の剣の横にはじき返された。


僕は、その瞬間を見逃さなかった。


僕の剣がヴェルダの父の剣を上に押さえ込む。


つまり、僕はヴェルダの父の剣を地面に刺さるようにした。


こうすることで、地面に刺さった剣を外すのに時間がかかる。


僕はその機会を狙っていた。


僕は背中から、ダガーを鞘ごと取り出すと、そのまま、ヴェルダの父の首筋に叩き込んだ。


鞘とはいえ、首筋の急所に打撃を叩き込んだんだ。


その痛みに耐えきれず、ヴェルダの父は体をふらつかせながら、その場に倒れた。


「よくやった!!」


「お見事です!!」


ハーヴェイ兄さんやフェルディアさんだけでない。


騎士団のみんなも、僕を褒めてくれた。


僕の初の実戦は、ハーヴェイ兄さんやフェルディアさんを十分に満足させることができた。


なにより、僕はアントワーヌを救うことができたんだ。




この後は、ハーヴェイ兄さんが事件の処理に当たった。


まず、アントワーヌを誘拐したトリアー家は、爵位没収の上、ヴェルダの父含め関係者は全員、死罪となった。


これは、アントワーヌの誘拐だけでなく、これまでの罪が暴かれたためだった。


王家としても、今回は僕とアントワーヌの婚約を認めていることもあり、僕たちの婚約に反対する者たちへの抑制のために極刑にしたそうだ。


王家の指示を蔑ろにする貴族連中へ、今後同じ事をすればどうなるか、彼らに冷や水を浴びせたことになる。


心配なのは、ヴェルダだった。


でも、ヴェルダはすでに覚悟はしていたようで、悲しんでいなかった。


転生したこともあり、肉親としての立場は薄いものだったそうだ。


それよりも凄いのは、彼女が王家や貴族院と交渉して、トリアー家の財産を引き継ぐことに成功していたことだ。


これは、僕の父だけでなくジュリアのアルビロ公爵家の協力があってのことだが、僕は知らなかったが、ヴェルダは密かに戸籍をトリアー家から離脱していたのだ。


彼女としては、<悪役令嬢>になれば死ぬかもしれない。


まずは、その運命を変えるために起こした行動だったのが功を奏した。


その上で、トリアー家の悪事を暴き、その功績を元に男爵家を引き継ぐことになったそうだ。


これは、ヴェルダの「ウルトラC」と言えた。


「おかげで、<悪役令嬢>にならなくて済んだわ」


ヴェルダと再会した時、彼女から本音を聞けた。


確かに、誰も<悪役令嬢>になりたくないし。


でも、ヴェルダは凄い。


自分の手で、男爵家の爵位を手に入れたんだ。


尊敬する。


「それで、この国の法律を調べたの」


「法律?」


「そう。そしたら、重婚が認められているって知った?」


僕は嫌な予感がした。


「私、あなたと婚約したいの」


やっぱし!!


「お互い、転生したもの同士、うまくやれると思うんだけど?」


「い、いや、それは無理だって」


僕は焦る。


僕にはアントワーヌがいる。


本音だと、確かに・・・少しだけどヴェルダが気にいっている。


でも・・・それだと浮気になってしまう。


「アントワーヌには相談済みよ」


「えっ?」


アントワーヌからは何も聞いていないぞ!!


「まあ、私も男爵家の主として忙しいし、しばらくは時間はあるんで、これからも宜しくね。転生者さん」


まさかのまさか。


僕は新しい<悪役令嬢>に気に入られてしまったんだ。



ヴェルダと会った後、僕はアントワーヌと合流した。


「ヴェルダ様から、お聞きになりましたか?」


アントワーヌが、意地悪そうに笑う。


「聞いたけど・・・僕は君がいるし・・・」


「フェリックス様は、本当に義理堅いのですね」


アントワーヌが僕と腕を組む。


少しだけど、ドキリとする。


僕たちは歩き出す。


しばらくして、アントワーヌの歌声が聞こえる。


それは聞き覚えのある懐かしい曲だった。


そう、僕が前の世界にいた時に、母から聞かされたあの歌だ。


アントワーヌの美しい旋律が、僕の心を捕らえて離さない。


そう言えば、日本にいた時は、僕は彼女とこんな風に歩いていたんだっけ。


その彼女とは、もう別れたけど、高校時代の甘い想い出だ。


今はこの世界で生きている。


側には、アントワーヌがいる。


結婚を前提に彼女と付き合っている。


なんか・・・僕はうまくこの世界に合っているんだと思うと、僕は幸せなんだと思う。


歌を終えたアントワーヌが、僕に話しかける。


「フェリックス様」


アントワーヌが微笑む。


「フェリックス様がいつも口ずさんでいたので、覚えてしまいました」


「恥ずかしいな」


「フェリックス様は、気付いてませんね。フェリックス様は、私と買い物をする時、いつもこの歌を歌っているんですよ」


「聞かれていたんだ。気付かなかった」


「フェリックス様はもう少し自分のことを考えた方が良いと思います。いつも、周りに気を遣い過ぎです」


アントワーヌが、僕の腕を強く抱き締める。


「だから・・・」


「だから?」


僕はアントワーヌに聞き返す。


「私はフェリックス様の第一夫人の座は譲りませんからね」


そう言うと、アントワーヌが僕に口づけした。


その瞬間、僕はまたやってしまった。


僕はどうしてか、また恥ずかしさのあまり、倒れてしまった。


この時のことを、アントワーヌはこう話してくれた。


「フェリックス様は、まだまだ臆病なんですね」と。


こうして、僕の異世界での転生生活は続いていく。


今後はどうなるのか、それだけでも面白そうだ。

追記

フェリックスやアントワーヌが歌っていたのは


・テレサ・テン「時の流れに身をまかせ」

・川島康子「私は送り風」


をイメージして頂ければと思います。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい文章構成。 [気になる点] ノクタ案件になりますが、初夜とか大丈夫か?主人公(^^; [一言] 前作含め、ちょっとした息抜きにちょうど良い感じでした。 その後の3人とか、ジュリア…
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