19 学園祭準備 2
5分ほど練習していると、ちょうどひかりとコウが音楽室に入ってきた。13時30分から30分間だけ練習時間が与えられている。入れ替わり準備を挟んで、14時15分から吹奏楽部の練習が入っている。できるだけ時間を有効に使わなきゃいけない。
「始まりの街」はそこまで音域が広くならないように作曲したので、アイドル時代に歌った経験を活かせればなんとかなるだろうと考えている。
また、もう1曲、このバンドオリジナルでないコピー曲として、ε-カプロラクタムの「荒野の朝」を披露することになっている。これは、仮入部に行ったときに先輩たちがやっていた歌でもあった。
私はアイドル時代の経験をもとに自分の調子で歌った。
「今日はお疲れ!」
私は終わりのあいさつをした。2曲を練習していると、気づいたら14時になっていた。私はショウと一緒に教室まで戻っていった。
「本番もうまくいくといいね」
残念ながらこの高校では、軽音学部の人気はあまりない。この学年でも1個上の学年でも、1つバンドがあるだけだ。後輩たちに「軽音部入りたい!」って思ってもらえるようなパフォーマンスをしたいと私たちは思っていた。
教室に戻ると、太田が段ボールに絵の具を塗っていた。段ボールを黒くしているようだ。
「あのさ、ごめん長谷川、絵の具なくなりそうなんだけど、買い出し行ってくれる?」
「わかった、行くよ」
私は暑いのは苦手だが、段ボール位置をつなぎ合わせるとかめんどくさい作業をするのは嫌なので、仕方なく行くことにした。
「ショウ、私もついてくよ。きみ1人だけじゃ不安だし」
ショウはどうも頼りないので一緒についていくよという意思を示したら、ショウは受け入れてくれた。正直、ショウと一緒にいたかったという思いもあったが。私たちはC北駅のビル5階にある100円ショップまで向っていった。
「水性絵の具ってどの辺にあったっけ」
「知らないなら無理についてこなくてもよかったのに」
「いや、ショウは油性買ってきそうだから」
決まりで、絵の具は水性の物を使うことになっている。本気で心配していたが、ショウもさすがにそのルールは把握していたようだ。
「これくらいでいいかな?」
ショウはLINEで太田に、どのくらい買ってくればいいかを聞いて、だいたい500円分くらいでじゅうぶんと返事が返ってきた。一緒に確認して、私たちは間違えないように水性の絵の具を買った。